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展示レポ:多摩美術大学 『I am』

多摩美術大学統合デザイン学科の学生による卒業・修了制作展。『I am』のテーマの通り、さまざまな領域のデザインを横断しながら学んだ学生たち自身から生まれた「ものづくりの価値」が集約された作品が多かったです。特に、それぞれの学生の「モノのみかた」がキラリと光っていました!感動!

北原優杜『YOIKO』

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社会に対するアンチテーゼといった文脈が一般的なストリートのカウンターカルチャー。そのひとつ、グラフィティアートで子どもを対象とした道徳的なメッセージを伝える作品。表現形態と文脈のすり替えを見事に行なっている作品で、街中にこれがあったら子どもは面白がるだろうな。願わくば、ストリートで見たい!

Diego Villamizar Arboleda『身近なモノの操作の再意識』

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ボールペンやリモコンなど、身の回りにあるモノのサイズや形状を部分的に操作することで、モノのデザインに違和感を感じさせる作品。これによって、従来のデザインがいかに違和感(=認知的負荷)を下げるかを目指して作られているかが逆説的に分かる。

林昭榮『ならびアニメ』

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3つのディスプレイがそれぞれ異なるアニメーションを映し出している。上記では、バドミントンのプレーヤー2人と真ん中にネット。ディスプレイは重ね合わされていて、その物理的位置によって全体のアニメーションが成立する。フィジカルとデジタルとをコラボさせたアニメ表現はホットだと感じる。

飯田沙織『慣用読み漢字辞展』

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雰囲気(ふんいき)を「ふいんき」と誤った発音で定着してしまう慣用読みを扱った作品。正しい漢字のなかに、慣用読みの発音がカタカナとして埋め込まれている。貪欲って本来「たんよく」と読むのかと猛省。

Ma Wenjin『Future Food Samples』

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未来の食事はどんなものになるか、という問いを深めた作品。ジャンクフードがドリンクになっていたり、いろんな料理をカプセルにまとめたり、昆虫を寿司のネタにしたり、アイデアが幅広い。そして、実利的な「食糧危機」に対するソリューションというだけでなく、食の効率化などの側面も捉えたデザインである。

大澤みずき『レイヤーアニメーション』

アニメーションを重ねられた紙コップやビスケットなどを利用して多層化させた作品。俯瞰や側面など、アニメーションを鑑賞する視点を変えることで発見された新たなアニメーション表現。

藤後麻理絵『存在する光』

人間は光を「光が当たっているもの」から知覚する点に着目。単純な平面図形のパターンを、複雑に折り曲げられたレースに投影することで、光の模様の変化を強調している。単純と複雑の対比が明確に描かれていて見ていて心地いい。

大岡夏穂『現代メディアの夏目漱石』

LINE, Instagram, Twitter, Youtubeといった現代のSNSに夏目漱石の『吾輩は猫である』の物語を落とし込んだ作品。古典や歴史的事物を時を超えて現代のメディアに当てはめるのは本当に面白い。バカリズムさん、伊集院光さんらが得意とする部分のようにも感じる(レビューという文脈を彼らは扱っていました)。

Damian Hu『社会ダークサイドの再現』

まるで、映画『メン・イン・ブラック』シリーズに出てくるようなロッカーを開けると、なかに異世界が広がっている作品。「扉を開ける」という能動的な行動を鑑賞者にさせる点がロマンチック。加えて、閉まったロッカーから漏れ出る光や音が未知の存在の「気配」を感じさせる。

最後に

今回もたっぷりご紹介させていただきましたが、書ききれませんでした。ぜひ、ほかの生徒さんの作品は下記のリンクから覗いてみてください!


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