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なぜこのタイミングでブルーレイなんぞ出したのか?

このたび、1stブルーレイ”Beyond Purgatory -Live at Pit Inn 2020"をリリースしたサックス奏者・作曲家の山中一毅です。

本作品は2020年9月にKazuki Yamanaka Quartet (山中一毅sax、渡辺翔太piano、落合康介bass、大村亘drums)で新宿ピットインにて演奏したライブ映像を50分にわたって収録したアルバムです。今日は、世間的にはまだまだ謎多きこの作品について、私自身が紐解いてみたいと思います。 

ジャズの世界でブルーレイ?

ジャズの世界でブルーレイを出した人、他にいるのでしょうか?私は知りません。ただでさえネットストリーミング最優勢の昨今。なぜブルーレイ?と思われる方も多いでしょう。

私自身、これまでYouTubeにライブ映像をいくつもアップし、無料で公開してきました。でもそれに少しづつ違和感を感じていたのも事実です。何となくリスナーの方と繋がりきれないというか、お互いの顔が見えないというか。もちろん今はそういう時代なのでしょうが。

で、本作の映像は、ありきたりなライブ映像ではなく、新進気鋭の映像作家・星野泰晴さんに撮影と編集を依頼し、臨場感あふれるスタイリッシュな「作品」と呼ぶにふさわしいもの。これはちゃんとした形で世に出したいと強く思いました。おまけに、自分のカルテットの演奏自体も非常に良いものだったので。妥協せずに、良い作品に仕上げようと決意しました。

とはいえ、最初はDVDのつもりでした。けれどもDVDは画質・音質において満足いかない点が多く、そのうちこの世から姿を消すオワコンなのだと気づきました。(もちろんブルーレイがこの先どうなるかはわかりませんが。)

画質・音質に妥協せず、ライブの迫力と臨場感を伝えたい。一か八かの覚悟を決めて、ブルーレイを作ることに決めました。

人々がライブの現場から遠ざかる今、できること
ライブの醍醐味を伝え続ける

昨今の特殊なご時世によって、ライブから足が遠のいてしまった方が多いのは、痛感せざるを得ない事実です。外出をしなくなった方もいれば、ライブの時間が早まったせいで行きたくても行けない方など、事情は人それぞれ。こればかりは仕方ないことだと思っています。

そんな中でも、可能な限りライブの醍醐味を伝え続けたいという気持ちが、この作品のリリースにつながったことは言うまでもありません。

パンデミックの世界となり早1年。音楽家として、可能な限り発信を続けていきたいです。この新たな世界で、これまでの考え方に縛られることなく、新しいことにどんどんチャレンジしていきたいという思いがあります。本作品のリリースも、まさにそのような試みの一つです。

単なるブルーレイではない!!誰でも見れる!
そして”ブルーレイ&ブック”なのだ!

とはいえ、いくら気持ちばかり伝えたところで、そう簡単に人々の目が向いてくれるわけもありません。そもそも「ブルーレイ」っていうだけで多くの人にはちょっとハードルが高いでしょう。というか、家で見られない方も多いと思います。

そこで、本アルバムには、魅力増幅のための様々な仕掛けをほどこしました。

魅力的仕掛け その1
ブルーレイ見られなくてもPC&スマホで見られる!

ブルーレイが見られない方にも、同じ映像をPCとスマホで見られるサイトのリンクをブックレットに記載しています。ストリーミングとダウンロード、どちらにも対応しています。もちろん、このアルバムを買った人だけが見られるサイトです。

魅力的仕掛け その2
20ページにおよぶブックレットの充実!

「ブルーレイ&ブック」と謳っているくらい、ブックレットを充実させました。なんと20ページ。ジャズのアルバムでこんな作品あるでしょうか。。マイルス・ディビスとかジョン・コルトレーンとかの復刻スペシャル盤くらいなもんでしょう。

さて、その中身はというと??

商品外観02

ブックレットの中身①
中川ヨウさんによるライナーノーツ!

まず、新宿ピットインでのライブ当日に現場で鑑賞してくださった音楽評論家・中川ヨウさんのライナーノーツ。タイトルは「音と向き合う姿勢に共感して」。当日のライブの印象、メンバーや楽曲の紹介、私の遍歴など、入念なインタビューから音楽愛あふれる文章となっています。その冒頭の一部を公開しましょう👇

2020年9月5日、この映像が撮影された日、筆者は新宿ピットインの客席にいた。山中一毅がニューヨークから帰国して、リーダーライヴを行なっていたからだ。ピットインは1965年に開店した老舗ジャズクラブだが、出演者の選出に定評があり、そこに出られるということは、それだけで日本で高い評価を得ているという証になる。
山中は、当時ニューヨークに拠点を置いていたから、彼を聴くには帰国を待つしかなかった。2020年3月から4月にかけて行われる予定だったセカンド・アルバム”Dancer In Nirvana”発売記念ツアーがコロナ禍によってことごとくキャンセルになっていたから、こちらも「今度こそ」という気持ちをもって聴きに行った。
山中一毅はグラウンディングし、自身の根を大地深くに下ろすようにしてから目をつむり、サックスを吹き始めた。その音色は無垢で気負いがなく、聴き手であるこちらの肩に入っていた余分な力をすっと抜いてくれた。
彼はジャズに対してまっすぐに向き合っていた。その作曲はマーク・ターナー以降のサックスに内在する知的な印象をもち、自身のアイデンティティと共に歩もうとする強い意志を感じた。音楽は難解ではないが、独自な感性が活かされていた。曲名と佇まいから“禅僧”のようなイメージを受けた。彼が音そのものと向き合おうとしていたから、その印象はあながち間違いではなかったかもしれない。温かみのある音色は、中学生の頃に両親から買ってもらったアルト・サックスから生み出されていると、後で聞いて知った。
(つづく)
2021年春に記す
中川ヨウ/Yo Nakagawa

ブックレットの中身②
山中一毅自身による初エッセイ!

そして、後半は私自身が8000字を越す長さのエッセイを、本作ブックレットのために書き下ろしました。

内容は、NYでの7年間の経験と、そこから「オリジナル」と「即興」になぜこだわっているのか。35歳の今の私なりの「音楽人生論」といった感じです。頑張って書いたので(笑)、ぜひ多くの人に読んで頂きたいです。こちらも冒頭の一部を公開👇

本作“Beyond Purgatory ~Live at Pit Inn 2020~”で初の映像作品をリリースする。初めてのライヴ録音の作品でもある。そしてまた、日本のメンバーとの録音物を作品にするのも初だ。世界がまたたく間に変わってしまったきわめて特殊な年、2020年に行われたライヴだ。
僕自身は3月にニューヨークから緊急帰国を余儀なくされた。音楽家としてかつてないほどいろいろなことを考えた年でもある。苦悩も多かった反面、新しい扉が次々に開いていく感覚もあった。思うような活動ができなくなるなかで、これまで考えもしなかった新しいアイデアがいくつも出てきた2020年。2021年はそれを少しずつ実現していく年になるだろう。
そういった一連の「新しい」何かの第一弾がこの作品のリリースだ。ライヴから遠ざかるリスナーが増えるなかで、少しでもナマに近いかたちで「ライヴ」を味わってもらいたい。だからこそブルーレイという最高の映像にこだわった。ピットインという日本のジャズの殿堂が醸しだす最高の空気感と臨場感を少しでもこの映像で体感してほしい。
本作品に込めるもう1つの新たなチャレンジは、いち音楽家・山中一毅の思索を「文章」で表現することだ。勝手ながら「物書きデビュー」をしてしまおうという魂胆だ。物を書くのは好きで、いつか何らかのかたちで書き物を出したいと考えていた。で、いつやるの?今でしょ!ということになったわけだ。僕は音楽家だが、この歳になって自分を表現するのに音楽だけにこだわる必要はないと思えるようになった。自分という人間がこの大きくも小さい、そして小さくも大きな世界に対して何ができるのか。あらゆる方法で自分をフル稼働していきたいと思っている。
とはいえ、何を書くのか?2021年というタイミングに35才の自分が書き残すべきことは何なのか。選んだテーマは「なぜオリジナルにこだわるのか」、そして「なぜ即興表現にこだわるのか」という2つ。どちらも重厚なテーマだが、この数年自分がもっとも大切に取り組んできたことであり、音楽家としての自分のアイデンティティだと感じていることでもある。今現在の自分が避けては通れないテーマだと思って決めた。
(つづく)
2021年4月 山中一毅

魅力的仕掛け その3
脱プラスチック、ユニークで現代的なデザイン

商品外観01

包装は脱プラスチックのコンセプトで、スタイリッシュで温かみのある紙の袋をケースにしました。すべてのデザインは私の実姉で、グラフィックデザイナーの山中結夏子さんによるものです。

販売はライブ会場とオンラインストアにて

ここまでお読みいただいて、少しでも本作1stブルーレイ”Beyond Purgatory -Live at Pit Inn 2020"に興味を持ってもらえたら嬉しいです。

今のところ私の出演するライブに来ていただくか、私の公式オンラインストア限定で販売してます!ぜひともゲットしてみてください🙏🙏🙏
よろしくお願いいたします!

お読みいただきありがとうございました🙇‍♂️

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