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僕をエヴァに乗せてください

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||が
公開延期になった。

今年こそ観れると思ってたのになぁ。

僕は、というか他の多くのファンも
みんなそうだろうけど。

エヴァンゲリオンは自分の物語だと、
本気で思っている。

エヴァを初めて観たのは、14歳のときだ。

ちょうど、エヴァに乗るパイロットの
少年少女たちと同じ歳だった。

僕の地元では、TVシリーズは
再放送すらされなくて。

旧劇場版が公開された頃にやっと
近所のツタヤでVHSを借りて観た。

そうだよVHSだ!DVDじゃない。

1巻に2話しか入ってなくて
子供心に慄いたのを覚えている。

とんでもないものを見つけてしまった。

周りは知らなかったので、誰にも話せなかった。

というか僕は当時、不登校気味だったので
そもそも話す相手がいなかった。

ひたすら家にいて、ビデオばかり観ていた。

……僕はオタクなのかもしれない。
きっとそうだ。ずっと家にいるもんな……

「オタク」と「ひきこもり」の
言葉の違いすらわかってなくて。

そんな風に思っていた。

レンタルしている1週間の間に、
何度も何度も、巻き戻して観た。

巻き戻しだ!早戻しじゃない。
実際にテープを!巻き戻してたんだよ!

……懐かしさに、頭がくらくらする。

もう20年以上前のことなのに
昨日のことのように思い出せる。

14歳で、父親がいなくて、
学校で上手くやれてなかった僕は。

シンジ君のことが、嫌いだった。

いま思えば、同族嫌悪だったんだろう。
主人公なんだから、もっと頑張れよ。

お前は俺と違って、エヴァに乗れるんだから。

街を、人を、あの女の子たちを
早く助けに行ってくれよ。

そんな風にいつも文句を言いながら
何度も何度も、繰り返し観ていた。

綾波にも、アスカにも、
ミサトさんにも恋をした。

TVシリーズのラストは
評判がよくなかったらしいけど
僕は大好きだった。

今でも何かあるたびに、あのシーンが頭を巡る。

あのシーンで心理学に興味を持って。
また学校に行くようになった。

そして新劇場版の1作目、
序が公開された2007年9月。

僕は23歳で、心理学科の大学生だった。

序は、旧劇場版をなぞるように作られていた。

学校に行かずに悶々としていた
あの頃のことを思い出して
少し胸が苦しくなった。

そして、2作目の破が公開された2009年6月。
僕は25歳で、会社員になっていた。

うだつの上がらない新卒1年目。

……1年目なのに、早くも
うだつが上がらないってのも変だけど。

とにかく僕のうだつは、
まったく上がっていなかった。

そんな中、仕事帰りに
渋谷の映画館でひとり、破を観た。

破からは、旧劇場版を土台にしつつも
新しい展開になっていた。

10年ぶりに観た、新しいシンジ君は、
めちゃめちゃ頑張っていた。

そうだ。あの頃もっと頑張れよって思ってた
シンジ君は、めちゃめちゃ頑張っていたんだ。

僕は何をやっているんだろう。もっと頑張ろう。

あんなにうだつの上がらない僕がそう思うほど、
破のラストのカタルシスは本当にやばかった。

それ以来、僕はことあるごとに
破のラストを観返した。

VHSじゃなくて、DVDで。
巻き戻さずに、チャプターで飛んで。
破のラストのシンジ君に、何度も励まされた。

……あの、地獄のQを観るまでは。

3作目のQは、2012年11月17日。
公開初日に観に行った。

14歳の時に観始めて、ちょうど14年後だ。

僕は28歳になっていて、
ちょうど会社員を辞めた頃だった。

残ってる写真だと、映画を観た後
今はなき渋谷のゴントランシェリエで
パンを食べたらしいけど。

まったく覚えていない。
それくらいショックだった。

Qは、破の世界の14年後を描いていた。
現実の僕と同じ、ちょうど14年後だ。

でもシンジ君は、14歳のままで。
14年間の眠りから覚めるところから
物語は始まる。

起きると世界はひどい惨状になっていて。
その責任はシンジ君にあると周りは言う。

あの破のラストが原因だったのだ。

現実の僕がQ公開までの3年間、
何度もDVDで観返した
あのラストが間違っていたんだと、
3年越しに突きつけられた。

もうエヴァには乗らんといてください!

あの頃は、エヴァに乗れ乗れと
あんなに言われてたのに。

あなたはもう、何もしないで。

ミサトさんにまで、冷たく突き放された。

……地獄だった。

「控えめに言って地獄」という表現は、
こういう時に使うんだろう。

予想を裏切り期待に応えた庵野監督は、
本当に天才だと思うし。

僕は序も破もQも、大好きだけど。

映画を観た後、しばらく席から
立ち上がれないほど、打ちのめされた。

エヴァは「セカイ系」と評される
中二病的とも言える世界観の作品で。

まさに14歳で中二だった僕が
好きになったそのセカイ系の世界は、
14年後、その世界の生みの親である
庵野監督に粉々に壊された。

「もういい加減、大人になってください」
そう言われているようだった。

今日は、2020年4月17日。
あれから8年が過ぎた。

……8年!?もうそんなに経ったんだ……

8年前のあの日、Qを観た帰りの
ゴントランシェリエの店内で、
僕の時間は止まっているかのようだ。

次の公開日は、いつになるんだろう。
そして僕は、何歳になってるんだろう。

早く続きを、完結を観たい。

そうじゃないと僕は、シンジ君は、
そして全てのチルドレンたちは。

いつまでも、大人になれないままだから。


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