百年ぶりの禁酒法時代

アルコールをボトルで持ち歩いて
食事のたびにちびちび開けている。

……こんな風に書くとものすごい
酒豪みたいだけど、もちろん違う。

消毒用のウエットティッシュのことだ。

本当は携帯用の小さいやつがいいけど
売ってないから仕方ない。

マスクに続いて街から消えたのだ。

見事にノンアルコールタイプだけ
売れ残ってるから笑ってしまう。

民衆の声が聞こえてきそうだ。

ノンアルじゃ効かねえよ……
もっと強いやつをくれよ……

まるで禁酒法時代だ。

アメリカで禁酒法が制定されてから
今年でちょうど百年だ。

まさかこんなことになるとは
昔の人も思わなかっただろう。

歴史は繰り返すのだ。思いもよらない形で。

……待てよ？そうなるとあれだ！
そのうちに密造が始まるかもしれない！

アルコールティッシュの密造だ。

人をダメにするストロングゼロを
さらに蒸留して作ったテッシュ。そう！

ウィルスをダメにするストロングテッシュが！
非合法で流通する日も近い！近いぞー！

ゴールドラッシュがすぐそこまできてるぞー！

……あれ？どうしました？えっ？来てない？
ゴールドラッシュ？ぜんぜん来てないですか？

そうですよね…… すいません。
さっきから何言ってるんだろう。

ウェットテッシュで酔っちゃったみたいです。