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ベルギーのKU Leuven (ルーヴェン・カトリック)大学院に入りました。

少々今更ながら、2022年9月からベルギーのKU Leuven大学院・修士課程に移籍しました。

もともと、後一年近くをイタリアで過ごす予定でしたが、ヨーロッパの中でも宗教的な風土や文化観での細かな差異を意識し、「より学業に励める環境に行きたい」と思うように。

結果的にベルギーに落ち着いたわけですが、振り返りも踏まえて、思いを整理してみます。

KU Leuven (ルーヴェン・カトリック)大学院にした理由

いろんな要因があるのですが、軽く列挙してみると、

・学術的に洗練された環境で学びたい。 (興味ある分野への見識や研究手法を、体系立ててしっかり身につけられる)
・学費は控えめなところがいい。(英語圏のアメリカやイギリスは厳しい、、)
・英語のカリキュラムがあり充実している。
・留学生が多く、来る学生のバックグラウンドも多様。

ざっくり言えば、「経済的な負担をほどほどに、学力的にも高い水準で修士課程を修了したい」というモチベーションですね。

■ 優れた学術機関としての側面

まずは、アカデミックな水準として国際的にも通用するレベルで高いか?を重視しました。単純なところでいうと、高等教育誌が行っている世界大学ランキングの順位が指標になります。

例えば、先日公表されたTimes Higher Educationの世界大学ランキング(2023)では、42位に。近辺ではハイデルベルク大学や東大が並び、ベルギー国内では首位を誇ります。

またロイター通信が調査する「ヨーロッパで最も革新的な大学(Europe’s Most Innovative Universities)」では、100位の中で1位に(2019)。ケンブリッジ(4位)やオックスフォード(12位)と比較しても、特許の引用数などを主な指標とした目安ではアドバンテージがあるように見受けられました。

なぜ外部的な指標にこだわるか?というと、イタリアでの経験からでした。「自分の興味ある分野を開拓できれば、それなりにどこでも大丈夫だ」というマインドで以前の大学院を選んでおり。世界大学ランキング内で200位-250位と、決して悪くはない…と思いつつも、実際に入ってみるとそれなりのギャップを意識し、少なからず落胆してしまう部分があったからです。

講義を担当する教授員不足でカリキュラムが半ば成り立たなくなったり、試験内容が「ちょっと簡単すぎないか?」というレベルで、大して注力せずともあっさり満点が得られたり。果てには、「あなたの成績は満点にしてあげるから、代わりに私へのcourse evaluation(講義に対しての学生によるフィードバック)は良くしておいてね」と、学生にこっそりお願いする教授までいたり。

院ともなれば、究極は自分次第です。ただ、周囲の環境に徐々に違和感を感じていく中、モチベーションが落ちてきてしまったのも事実でした。

客観的な第三者が定めた厳密な評価基準からして、本当に質が保たれているのか?はやはり重視する必要があるなと強く感じた経緯です。(もちろん大学ランキングの順位だけで一律には言えず、分野ごとによって大きく違ったりもするので、慎重になる必要はあると思います…!)

■ 学費の効率性・バランス

質の高い教育環境を追い求める分、それ相応の費用がかかる。もちろん奨学金が手に入れば選択肢は柔軟に広がっていきますが、社会科学の分野で(かつ一年のみの)修士課程をする私にとっては、可能性が限られてくるように思いました。

ルーヴェン大学のメインの図書館。
ドイツ軍による侵攻の第一次大戦後、当時皇太子の昭和天皇が行啓。
日本から義援金が集められて、大量の図書も寄贈された、縁が深い街。

その点、KU Leuvenの修士課程(私の属するMaster of Communication Sciences: Digital Media and Society)だと、年間で€ 3,900 (欧州圏外の学生対象)です。現在の換算で、56万円/年あたりでしょうか。また一年間で終えるプログラムなので、それ以上かかることも基本的になく。

正直、現在の円安とウクライナ情勢もあり、年々学費が高まっている(先年は€3,500だった) のが手痛いところですが、、それでも授業料だけで数百万円は平常でかかってくる英米圏の大学院と比べれば、だいぶ負担を抑えられる選択肢になるのではと感じます。

■ 刺激に満ちた国際的な環境

その上でかつ、学内の充実した環境に惹かれた点もあります。まず、一外国人として過ごしやすそうな点。140カ国から12,000人以上もの留学生が来ているため、同じような立場を共有しながら、知己を得やすいように思えます。

KU Leuven 公式HP・Pangaeaのページ('Volunteering') より。

キャンパス内に'Pangaea'というラウンジスペースがあり、日々いろんな国の留学生がコーヒーや紅茶を片手にたむろしてるのを見かけます。多言語でのコミュニケーションを促すイベントもよくやっていたりしますね(自身も日本語の会のボランティアにサインアップしてみました)!

オリエンテーション・ウィークの一環でもらったグッズ一式。とても充実した気持ちになる。

同じプログラム内に約50人いるのですが、国籍が本当にバラバラです。これまで会って話した人だけでも、ホンジュラス人やモルドヴァ人、エクアドル人やアイスランド人、ギリシャ人やシンガポール人など、毎回異なるタイプの人と話せる環境が何とも刺激的です。(初めて会う国の人が圧倒的に多い、、!)

キエフに家族とともに在住していたウクライナ人から、授業終わりの通学路となる電車内で「国家が危機的状況にある中でのメディア戦略とその倫理」について議論し合って、お互いの研究への熱意を語り合ったり。日本にいるだけだとなかなかできない話が、やろうと思えば毎日のように可能な環境は、ルーヴェンならではだな…と思います。

週末の見学で訪れたブリュッセルの欧州議会。
ニュースでしか見ない光景を目の当たりにすると、理解の解像度が深まるよう。

また、首都ブリュッセルから電車で20~30分程度という環境も程よいですね。EU本部の諸機関が立ち並び、欧州議会なんかも見学しに行ける環境です。私自身はまだ未定ですが、インターンや実戦経験を得る場を探すにも、利点があるロケーションかなと感じます。

これからの一年

といいながら、実質あと10ヶ月もあるかないかくらいで、気がつけばあっという間に過ぎてしまう時間だと思いますが…。それでも、これほど学術的に恵まれて、百を超える多言語・多国籍から成り立つ集団の学生街で。

今まで本の世界でしか知らなかった国にも、生きた人が目の前にいることを実感しつつ。好奇心の塊を御者台に載せるような思いで、駆け巡れる分だけいろんな光景を見たいな、と思っています。

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