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ヨーロッパの大学(院)に行く時に、やっておきたいこと

こんにちは。ここ一年、ベルギーの院で過ごした者です。

以前、海外の大学院を目指す人を対象に書いてみたのですが、今回は実際に進学が決まった人におすすめしたいことをまとめてみます。

私自身のバックグラウンド(イタリアとベルギーの大学院で一年ずつ。学部時代はオランダ&イギリスへのプチ留学経験あり)から、特に欧州圏にフォーカスした内容となっていますが、他の国々に行かれる方にも当てはまるかもしれません。ご参考になれば幸いです!

◼️現地のメディアをフォローしておく

まずは情報収集の側面から。特にローカルな情報を得る際、地方紙的なアカウントをフォローしておくと、けっこう便利です。

例えば私の場合、ブリュッセルにしばらく住んでおり、The Brussels Timesというメディアが役立ちました。

あるストリートで蚤の市やってる!(毎週日曜・安い)とか、最近オープンしたデジタルアート展とか、作業におすすめなカフェとか。「今度行ってみよう」と思っては、最近知り合った留学生やフラットメイトを誘ってみたり。些細な情報源から、新しい体験を得つつ、他の人と交流を深めるきっかけにもなりました。

そんなポジティヴなものから、ある区域で警官が刺されたり、聞いたことのある地下鉄駅で人が死んでたりとか…。シリアスな報道にも目を配らせておくことで、注意したほうがいいエリアも分かってきます。

特に非英語圏では、現地のニュースを(その国の言語だけでなく)英語で発信してるメディアが大きく役立つと感じます。日本にいては普段知る由もない内容にアクセスできる貴重な機会だし、その国の人らと話す際にも話題にしやすいです。

「最近ギャングの大物が捕まって獄死したそうだね」なんて話から、イタリアのマフィア社会の実情を聞いてみたり。単なる偏見的なイメージしかない事象に対し、現地人の生の意見も込みで、より深くて解像度が高いインプットができます。

ローカル紙に限らず、全国紙も把握しておくといいですね。特にその国の言語を磨きたい場合は、読んでるだけでも良い練習になります。現地の友達や知り合いに「普段何のメディアで情報得てる?」と聞き、ちょっとずつかいつまんでいく(例えばイタリアだと、Corriere della Sera、La Repubblica、La Stampa等々…)。

日本でいう「朝日、毎日、産経、読売、日経…」のように、あの報道紙はリベラル寄り、これは保守姿勢な記事が多い、あれは中立/ビジネスに特化してる…等、その国のメディアの特徴・種類を一通り把握しておくことで、現地社会の実情を捉えやすくなります。

また欧州各国のニュースを英語で発信してるThe Localという媒体もあり、おすすめです。オーストリア、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイスという国別に合わせたアカウントがあるので、これらの国々に行かれる方はフォローをおすすめします。

◼️各種SNSのアカウントを創設・運用しておく

同様の理由で、欧州圏での生活用にSNSアカウントを準備しておくと、いろいろとアドバンテージがあります。

・LinkedIn

メジャーだと思いますが、大学・大学院を通して出会う人たちのほとんどが使っているイメージです。現地での仕事探しにももちろんですが、日頃の行い(成果・プロジェクト)をこまめに投稿することで、過去に繋がった人同士でのキャッチアップがしやすいです。

特に同じプログラムにやってきた人たちの経歴を参考にすることで、自身の職の「相場感」が醸成される感覚があります。どんなポジションに就き、どういうキャリアを今後の人生で歩んでいけそうか、何のスキルがあると良さそうか…。照らし合わせて、現実的な方向性を見出したり。

「弱いつながり」理論 (weak ties theory)が主軸のSNSで、親しい人同士だけでなく、知り合いの知り合いでも連関していく形となり、ふとしたときに機会が訪れることもよくあるので、作るにこしたことはないと思います。

・Reddit

日本ではほぼ使われてない印象ですが、欧米圏ではそれなりに普及してます。掲示板の「板(テーマ)」ごとに、市井の声を集めた感じのプラットフォームで、住んでる街とか大学とかのチャンネルに入っておくと、いろんな体験談にカジュアルに触れることができます。

「街でこういう犯罪・ヘイトクライムに遭った」とか、外国人にありがちな生活に関する悩みとか、Yahoo知恵袋的なQ&Aも込み込み、少し雑談めいたトピックをランダムに流し読む感じです。

明確な目的はないので優先度は低いですが、個人的にはビザに関することとか、公的機関の煩雑なホームページ見るだけだといまいち実感が掴みにくい、、て的に在留者のリアルな声を聞くことで、少し役立ったりしました。ダウンロードだけしておいて、興味のある内容があったら見てみる、て感じがいいかなと思います。

・Facebook

Marketplaceというフリマサービス(日本でいうメルカリ的なもの)をよく使いました。特に入居仕立ての頃、寝具セットやキッチン用具が必要なときは、(売っていたら)中古のものを安く仕入れられます。

私がこれまで売買したのは、カーペット、ケトル、まな板、フライパン、炊飯器、WiFiルーターといった品々で、いずれも10~20€もするかしないかくらい。退去時にはいらなくなるため、販売にかけると元が返ってくることも。

ただ詐欺も多そうなので、要注意! 物理的な品々は直接の受け渡しであれば(自分の体験談では)ほぼ問題がなかったのですが、家探しや職の斡旋なんかではしょっちゅう怪しいアカウントが蔓延っています。相手のプロフィールを見て、明らかに最近作られていて、人間味がなさそうなアカウントだったら無視するとか、対策も必要です。

・X(旧Twitter)

日本ほどには普及してませんが、各種の収集には良いかなと思います。大学(院)で講義を受けていると、何かしらの「情報」に遭遇します。そのもとには何かしらの機関・組織・メディア・個人がいるわけですが、それらを一括してX上で検索しフォローしておくと、有用な「My情報リスト」が作れます。

将来自分の職務につながることとか、ヒントになりそうな情報主体は積極的にマークしておくと良さそうです。以下の記事でも触れましたが、大学院に行く場合は「定期的に引用し続ける能力」が重要なのでは、と思い。卒業後になっても知見をアップデートし続けるべく、「情報を追い続ける力」を養う機会になるのではと考えたりします。

◼️欧州圏での諸活動をチェック (メルマガ等)

SNSの話と被りますが、必要な情報のキャッチアップですね。メルマガ(newsletter)登録できるものは積極的にやっておくと、ふとしたときに良い機会が訪れることも。

・Jobs in Europe

インターン、トレイニー、アシスタント等から、マネージャー職まで。自分にはやる機会がなかったため応募するには至りませんでしたが、EU関連の職だと下記のEuro Brussels、EU Careersなどが参考になりそうでした。またEuractiv Jobsiteもいろいろ求人がありますね。

Cross Boarder Recruitment (CBR)は、欧州で日本語を使える人材の仕事を探す際に。ビザサポートありなのもあれば、なしなのも。業務経験必要なのが多く、専門職中心ですが、職務を十分に積んだ方には良さそうです。

・Other Activities

European Youth Portalは若者向けのボランティア、トレイニーシップ、職探し等のプラットフォームになっており、定期的にチェックしておくと色々な機会に触れられます。

その中のEuropean Solidarity Corpsでは、18~30歳を対象としたEU圏在住者のプロジェクトが多数掲載されており、長期休暇等で興味のある分野・国で経験を積むのに向いてそうです(※登録必要)。

他には、長期休暇にしばしば開講されるサマースクール(&ウィンターコース)の情報なんかは、Summer Schools in Europeでチェックしたり。名門校のプログラムは短期間の割にやたら高くない?とブランドビジネス感がしますが…。ユニークなコンテンツもいろいろあり、オンラインで開講されてたりもして、費用と鑑みた上で特に興味を引く内容があれば、チェックしておくこともできそうです。

また、個人的に長期休暇でよく使っていたのはWorkawayです。職務に直接繋がるような経験ではないですが、現地の人の生活に密着した時間を数週間~数ヶ月間と過ごせたのは貴重でした。ボランティアベースの住み込みで、欧州圏の各地で様々なプロジェクトがあります。

例えば私はチェコ・プルゼニ州の古駅舎を改修し、インバウンドの拠点に据えるという、元ミュージシャンのオーストラリア人のもとで夏を過ごしました。なかなかに得難い体験だったと思います…。

◼️住居は大学寮に申し込むのが無難

話はやや一転しますが、住居関連でやっておいたほうがいいことも。基本的に欧州の主要な都市で部屋探しをするのは難易度が高いな、という印象を抱いています。

「住む家」の需要に対して供給が追いついてないことがしばしばです。首都圏クラスの大規模な都市でもアムステルダム、バルセロナ、リスボン、ダブリン、ミラノ…。学生街でもライデン、ボローニャ、パドヴァなど。

「student housing crisis」で調べれば出てきますが、この手の話題は枚挙にいとまがありません。私自身、住めるところが見つからず、オランダでホームレスになりかけたことがあります。

ここ2年間で、4回ほど住居を変える羽目になったのですが、いずれも家探しに難儀したからでした。プライベートで探したところ、基本的に高い。好条件のところはすぐに取られるし、詐欺まがいな目にも遭いました。床材がバリバリに隙間だらけで、アリの行列が毎日部屋中に這い出たり。弁護士を名乗る人間に訴えるぞと脅されもしました。

なので、大学を通した寮に住むのが一番コスパ良く、無難(時間的・金銭的・精神的に)…という結論に至ってます。高いお金を払うのに問題がなく、プライバシーを充実した環境を重視したい、といった場合には良いかもしれませんが、そうでない場合は寮に申し込んでおくのがいい気がします。

抽選で落ちる場合も全然あるので、第三希望や第五希望まで書けるのであれば、全て記載するのがベターかと思います。部屋タイプの希望を選べるケースもありますが、あまりこだわりすぎると漏れることもあり(実際に自分は落とされました…)、「ここまでなら妥協できる」くらいに落とし込むと良さそうです。

私は寮に落ちてしまったがために、別の街(大学まで片道で1~2時間)に住む羽目になりました。中途半端に離れているせいで、交通費も余分にかかってくるし、新しく学内で知り合った人らとも気軽にmeet upしづらかったり、いろいろ不便です。せっかく限られた期間を過ごすのだから、大学(院)があるその街に住むのがベストで、安心感があると感じます。

住居問題は根強く、交換留学で行く学生ですら難儀することも珍しくなく。「大学は何もしてくれない!」と怒る方もおり、私自身も最初はその気持ちだったのですが、次第にこればかりは仕方がない…と思うに至ります。

大学だけの問題というよりは、「都市」全体の課題かなと。ヨーロッパの主要な都市ではどこでも同じような問題(housing issue)が起きているし、立派な社会課題として捉えられています。

先進国一般としての人口は減りつつも、「都市」への集積は今後も進んでいくことが予想されている以上、一朝一夕に解決できることでもなさそうです。

◼️「全ては自己責任」を心がける

最後にマインド的な話になってしまい恐縮ですが、「全ては自己責任」だと認識して生きていくことです。

ヨーロッパといえど、必ずしも日本のようにインフラが整ってるわけではなく。住宅、交通、教育。騙されたり、期待していたことが起こらないことも(国によって度合いはありつつ)ある種の日常茶飯事です。

市場で買ったケトルの規格が合ってなかったり、購入したセーターの染料が洗濯機に入れた途端にガン落ちしたり、ランドリーにコインを突っ込んだのに1ミリも微動だにしなかったり、図書館のプリンターがスタッフが1時間近くかけても全く動かなかったり、盗まれたスマホを盗難届けに出しても全く音沙汰がなかったり。

「大学が何もしてくれない」「警察に言っても解決しない」と、誰かのせいにしたくても、どうにもならない。日本では基本的なサービス・インフラが「当たり前」に機能している分、対価さえ払えば大抵のことがパーフェクトに動く環境下で、それが「常識」と化しており。

しかし、そんな「当たり前」「常識」が通じない世界があり、当初は違和感を感じると思います。むしろ、だからこそ来たと言えるかもしれません。誰もが積極的に助けてくれるわけではないので、その分、優しくしてくれる人がいたら一層強く感謝できるのではないかなと。

最終的には、その環境を選択した自分に全ての責任がある。そのくらいの思いで動けてこそ、欧州(に限らずですが)社会での生活を全うできると感じます。

なので、現地に関するあらゆる必要・役に立つ情報を、自身で把握し、引き寄せる仕組みも整備していく。そんな事前準備をフルでやっておくと、より後悔のない大学(院)生活を送れるのではないかな、と思ったりします。

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