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駆け出しデザイナーが、初案件から学んだこと

最近、編集デザイン(冊子)の初仕事をこなしました。デザイナー初心者として考えさせられることがめっちゃあったので、まとめてみます。

経歴 & 経緯

都内のデザイン学校に9ヶ月ほどいて、Adobe Illustrator, Photoshop, InDesignのベーシックを一通り習ったレベルです。以降、仕事のちょっとしたお手伝いに飲食メニューやパンフレットを軽く作ったり。

今年に入ってふとスイッチが入り、InDesignを使った書籍編集にハマってました。その経過をインスタのストーリーで載せたら、同年齢の友達から「本のデザインを頼める人探してた!」と連絡が。ポートフォリオに活かしたい経緯もあって、「ぜひ!」と初案件として請け負いました。

学んだこと

総じた期間は約2ヶ月。友達がやっている修論プロジェクトの冊子を、クラファンのリターンと合わせて制作するのが目的でした。予定は40~50ページでしたが、結果86ページとだいぶボリューミーに仕上がりました。初仕事がてら、とにかく多くの学びがあったので列挙してみます!

■ ヒアリング力を鍛えるべし

一、二回程度の会話だけでは、クライアントの要望を正確に捉えきれない。例えば「レイアウトに使ってほしい」と提示された素材で、大きく分けて「昼」と「夜」の写真がありました。

credit: Philippe Leone from Unsplash

「写真を全面に活かしたレイアウトにしたい」という当方の要望があり。私個人の所感では「夜」ベースが良く感じていたため、写真以外の配色も暗めのトーンを全体に心がけました。その後、割と作り込んだタイミングで途中経過を共有すると、「昼ベースで明るくしたい」との声が。

ヒアリングをもっと事前に効果的に行なっていれば、より効率よく仕上げられたな、と感じた瞬間でした。制作するデザイナー側がよりアクティブに、かつ戦略的に「聞く」技術を鍛えるべきだと。

例えば「どんなデザインにしたいですか」だとふやっとしていて相手も答えにくいと思うので、判断しやすい二つの選択肢を与えて、相手がどちらを選ぶかで詰めていく。今回の件でいえば、「明るい」か「暗い」かでいうと、どっちですか?を事前に聞いてみる。他にも「高級さ」か「ポップさ」か、「ホット」か「クール」かなど、二分化でどんどん狭めていけば、構想に大きなズレが生じづらくなるかと感じました。

■ 相手を安心させる透明感を意識

クライアントさんとの関係で。特に今回は全てリモート(国外)で、物理的に顔合わせする機会もなかったので、意識して進捗状況を共有する姿勢がいいなと感じ。

創作系の仕事柄、一人で没頭する時間が多く。最低限の締め切り日だけ意識した後は、こまめな連絡をついついサボりがちだったかもしれません。相手からしたら、どうなっているのか知れないままに、納期が刻々と迫ってくるのは不安になるでしょう。

credit: Andreas Lischka from Pixbay

自分の今やっているプロセス。現時点で込めているデザイン計画。今からどう完成に近づけようとしているか。どれくらい日数がかかりそうか…。自ら段取りを把握して相手に共有し、納得と安心感を与える。相手の負担や懸念点を、こちら側が先回りして埋めることで、より信頼感の構築につながると感じました。

■ × 創作して終わり ◎全体のフローを意識

デザインのお仕事って、「何か具体的な成果物を作る」イメージがあります。手を動かすことが一番のメインで、ツール(Adobeソフトウェアとか)を使いこなせるようになればいい、と。そのため「デザイン=作るのが仕事」ていう意識になりがちでしたが、見方が狭かったなと感じました。もちろん、良いクオリティの成果物を作ることは大事で、そのためツールに精通しているのも必要なのですが。

実際仕事に携わってみると、より「作るだけで終わりでない、全体のフロー」を意識しました。作った「後」に人の手元にどう届いて、どんな意識・行動変化をもたらすかを見込む。管轄できて初めてデザイナーを名乗れるのではと。

credit: Henri Van Ham from Pixabay

今回デザインされるものには、どれだけのコストがかけられて、どのくらいの規模感の人にリーチできるのか?何の効果を、どのような人たちにもたらすことを期待してるのか? すべて計測して整理し、説得力ある形でプレゼンし、関係者(チームやクライアント)を明確に納得させた上、実際に価値を生み出せるまでが重要だなと。マーケとか流通に精通し、ミクロ的なスケジュールを組んだり、費用効果の高いプランをスムーズに立てて、ちゃんとその通りに実行できるか、といったノウハウや知見をもっと磨く必要があると感じました。

なので、「ツールを扱える」ことは、それによって自身の生産性がどれほど高められるか、を軸に意識するべきかと(🔺単純に多くの機能を知っている)。作業時間を短縮し、自身の労働にかかるトータル時間給も減らした上で、より効果の高い成果を生めるか、ということがゴールになってくる。

■ いろんな「メディア形式/環境」に敏感であれ

細かいけれど、作ったコンテンツが「どのように届くか」もめっちゃ重要になってきます。

credit: StockSnap from Pixabay

例えば「どんな形式の製本がおすすめ?」という質問に、迅速かつ意義ある回答をできるかどうかが、エディトリアルを手がけるデザイナーにとって鍵だなと感じ(初案件ではあまりできなかった…)。A5かB5か、サイズによって読み方・価格帯にどんな差異が生まれるか。紙を触ったときの手触り感でも、長文を落ち着いて読めるマット紙か、写真が映える光沢紙か、書き込みできるタイプの普通紙か。紙ベース(成果物)のCMYKと、スクリーンベース(作業画面)のRGBとで、色合いがどこまで変化するかを予期できるか。

同じく「デザインのデータを作ったら終わり」ではなく。読む人が本を手に取り(取りたいと思うサイズ感か)、皮膚に触れたときどう感じるか… あらゆる種類の感覚を把握した上で訴求できる、「形式への敏感さ」が重要そうです(デザインの「内容」に意識が向きがちなのに対して)。

credit: RaniRalli from Pixabay

また、エディトリアルに限らず。ひとつのコンテンツが千差万別の媒体で流通する現代においては、メディア「環境」への精通も加味してきます。レストランや美術館がインスタの枠にどう表現されるかを意識して、お皿の盛り方や展示品を調整したり。Tiktokというプラットフォームがあることで、若者が15秒の動画を縦尺でつくるという行動様式が生まれたり。

「世の中でどんなメディア形式が使われており、それに適したどんなコンテンツがウケるか」を戦略的に実践し効果を生んでいくことが、デザイナーの一面でもある、戦略家としての仕事でありプロフェッションだと感じました。

総括

デザイナーって「手を動かして作る」だけではないな、というのが一番の気づきだったかもしれません。他者を理解すること(ヒアリング力)、そもそも人間を深く理解できてること(心理学的要素・アフォーダンス理論)、デザインされた体験がどう届くかを戦略的に分析・実践できること(印刷や製本知識、マーケ分析、新しいメディアへの好奇心等)…。

もっと学ばなくてはいけないことが無尽蔵にあることを実感した、最初の一歩でした。地道にですが、これからも経験を積み上げていきたいと思います。

#仕事の心がけ

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