士業のサービス3分類を転々としてきたよという話
noteで記念すべき一発目の投稿として #自己紹介 を書きたいと思います。
計画的なようで、そうでもない経歴
当初自分ではそれはそれは理論的に、計画的にキャリアを積んでいくつもりだったのですが…
振り返ってみると「士業のサービス3分類」を転々とした行き当たりばったりの経歴になっていました。
デキる会計士になりたかったBIG4時代
大学4年生のときに会計士試験に合格して旧中央青山監査法人の福岡事務所に入所しました。
もともと小学校6年生のとき「大学の間に会計士になって5年間どこかで修行したら独立しつつ親の税理士事務所を引き継いでラクするぞ」と決めた経緯がありまして。
なのでもともと「5年間で独立できるだけの能力を身につけよう」と考えていたのに加え、自分の師匠が「経済的な価値をいかに最大化するか」という話をしていたので、とにかくデキる会計士になろうと思っていた時代です。
(デキる=会計士としての専門能力が高い)
その点で、福岡事務所は東京に比べて人数が少なく、1人が色々な業務を担当しないといけないのが逆に好都合でした。
(たぶん東京事務所で色々やりたかったら部門を異動しないとダメ)
ドレイ労働の日々
メイン業務の1つとして銀行の監査チームに配属されていました。
(東京だったら金融部の仕事)
うろ覚えなのですが、ちょうどその頃くらいからお国が策定した金融検査マニュアルに沿って銀行の検査がなされており、我々の会計監査もその方向での監査をやっていました。
実際の監査手続としては銀行の融資先の財務内容などを分析し、債務者区分が妥当かどうか、貸倒引当金の金額がそれでいいのかをチェックするのが中心でした。
1日10社分×2週間を半期ごと、を4年間やったので累計1000社分くらいは見たと思います。
この仕事のおかげで
・初見の会社について良い、悪いをパッと判断する能力が身についた
・金融機関がどういう考え方で融資をしているかの大枠を理解できた
わけですが、なにせ銀行って防犯上の理由もあって窓が無いんですよ。
窓の無い締め切った会議室に缶詰めになって、来る日も来る日も朝から晩まで延々と融資先の財務内容を分析し続ける様子はさながらドレイ労働のよう…
毎日夕方になると先輩とタフマン飲みに会議室を抜け出す日々でした。
内部統制こそ至高、会計基準なぞ下の下
そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
銀行の監査と並行してもうひとつメインで関わっていたのがNYSE上場会社の子会社の監査でした。
(東京だったら国際業務部の仕事)
ちょうどその頃、アメリカで会計不正事件が頻発した流れを受けてSOX法が成立し、アメリカで上場する企業には内部統制の監査が義務付けられることになりました。
(東京だったらシステム監査部も絡む仕事)
ということで図らずも「内部統制そのものを監査する」という初物の業務にかなり初期の段階から携わることに。
(といってもチームの下っ端としてですけどね)
実はその前年くらいにその会社がERPシステムへの移行に大失敗して、業務的にも財務的にも悲惨な状態になった経緯がありまして。
会社がうまくいくかどうかに会計基準はほぼ関係なく、業務がいかに効果的・効率的にまわるかが重要なんだ、ちょうどそんなふうに考えていた時期でした。
なので業務フローやコントロールのデザイン評価、運用評価を行う内部統制監査はうってつけでした。
このときのUS-SOX法 内部統制監査のおかげで
・目的に合わせてどのように業務をデザインするか
・漏れなく正確に業務が流れることをどうやって担保するか
・人間系とシステム系をどう組み合わせるか
・人間は信用ならん
・粉飾はシステムが起こすんじゃない 人間が起こしてるんだ
といったようなことの基礎が身についた気がします。
その数年後に日本でもJ-SOXでの内部統制監査が始まることが決まっていましたので、その導入コンサルティング業務ではUS-SOXでのノウハウを活かしてイキリ散らしておりました。
より一層、デキる会計士を目指して
監査法人に入所するときに「5年したら辞めるんで」と言っていたこともあり5年で監査法人を退職しました。
本来はそこで独立するはずだったのですが
・BIG4からいきなり個人事務所になると想定されるクライアントの規模感があまりに違い過ぎる
・会計監査は個人事務所ではできないので個人事務所でも提供可能なサービスの経験を積んでおきたい
ということでお誘いのあった地方銀行のM&A・事業再生の部門へ転職しました。
監査法人時代にはほぼ未経験だったのですが「いやもう全然できるし、プロだし」という体で銀行に入社しました。
監査法人の最終出勤日から銀行の初日までの1週間でM&Aや事業再生の本を読み漁った記憶があります。
内部統制も至高じゃなかった
銀行で事業再生の仕事に携わる中で「日常業務が効果的・効率的にまわっているかどうかと、儲かっているかどうかは無関係」という考えに変わっていきました。
銀行の事業再生部隊が乗り込んでくる時点でその会社は財務的にもビジネス的にもボロボロなわけですが、意外と従業員レベルの日常業務は普通にまわっていたりします。
逆に、例えば日常の業務処理はボロボロだったとしてもビジネスとしては儲かっている会社もあります。
結局は誰に何をどうやっていくらで売るか、といったビジネスの本筋部分が最も重要であって、その日常業務がどうまわっているかは2番目以降の話なんじゃないかと。
(日常業務も重要ではあるけど、"最"重要ではないという話)
こうなってくると会計監査・内部統制監査を専門業務とする会計士って何なんだろう、単なる「デキる=会計士としての専門能力が高い」会計士ってビジネス的にあまり役に立たないんじゃないかという疑問を持ったりしていました。
「デキる会計士」を投げ捨てた日
銀行との2年間の契約を終え、2009年8月に晴れて独立開業しました。
独立当初はそれまでの流れで主に銀行からの紹介でM&Aや事業再生をやっていました。
そして1年で行き詰りました。
なにせ伸びしろがないんですよ、自分がやらないといけないんで。
独立した以上は肩書は所長、つまり経営者ということになります。
でも実態は自分が専門家としてできる仕事をただただやっているだけでした。
それって単なるフリーランスの専門家であって経営者ではないよね、と。
これは早い段階で軌道修正しないとマズイぞと考え「デキる=会計士としての専門能力が高い」会計士を投げ捨てることにしました。
(*M&Aや事業再生といったデキるっぽい仕事をやめたという意味であって、決して自分が能力高いと言ってるわけじゃないですよ)
薄く広く大量に
そこでやり始めたのが今やっている「美容室・飲食店に特化したパッケージ型税務サービス」です。
会計事務所の経営者として、ビジネスモデルとしてまわせるものを追求した結果、この形に落ち着きました。
結果的に提供する作業は記帳代行、給与計算、確定申告といった「ザ・会計事務所」と言うべき基本的な業務です。
しかもそれを相場よりも低い価格で提供するという。
それまでのキャリアとは正反対の内容です。
このビジネスモデルを考えたとき師匠に話をしたら『何だよ、遊んでるんだったらうちの事務所に来いよ』と言われたくらい、それまでのキャリアをぶん投げたビジネスです。
でも結果的に事務所の経営を安定させ、自分の知名度を高めてくれたのは会計監査でもなく、内部統制でもなく、そしてM&Aや事業再生でもなくこのとても単純なビジネスモデルでした。
それだったらBIG4での5年間+銀行での2年間は要らんかったんやー、ということで冒頭の”行き当たりばったり”という言葉になりました。
そして「士業のサービス3分類」の話
実は士業が取り扱うサービスというのは
・頭脳型
・経験型
・効率型
の3つに分類されると言われています。
自分がこれまでに経験してきた仕事もこの3つに分類されます。
・頭脳型・・・US-SOX法の内部統制監査(当時は頭脳型、今だと経験型)
・経験型・・・銀行の会計監査、M&Aや事業再生
・効率型・・・記帳代行メインの税務サービス
この3つの分類のどれに該当するかによって必要な人員構成や組織の運営方法が異なってきます。
自分の事務所が「・効率型・・・記帳代行メインの税務サービス」を中心にすることで平和な安定した事務所になったということ。
そして独立当初に「・経験型・・・M&Aや事業再生」を中心にすることで短期に行き詰まったというのは、そうなる理由があってのことなのですがそれはまた別の記事で。
以上、長くなりましたが自己紹介でした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?