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『五月の蝿』 最後の歌詞の「君」は誰?

 RADWIMPSのシングル『五月の蝿』を知っているだろうか。

 この曲は、思いが通じ合っていた誰かとの恋に破れ、憎悪に溢れた歌詞をこれでもかと並べた痛烈な失恋ソングだ。

 噂によると、ボーカルの野田洋次郎が、吉高由里子との恋愛破局によって作られたものなんじゃないかとも言われている。

 この曲、パッと聴くと、「よっぽど相手のことが憎いんだろうな」と思うが、洋次郎の狙いはおそらくそこじゃない。「こんなに相手のことを憎むほど好きだった」ことを伝えたいのだ。それがわかる部分がここの歌詞。

生まれてはじめての宗教が君です

 主人公は相手を崇拝対象としてみるほど、思いをつのらせている。もはや「好き」では表現しきれない感情だろう。

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 『五月の蝿』の最後の歌詞がとても気になる。

そこへ僕が颯爽と現れて 両の腕で彼女をそっと抱きしめるんだ 君は何も悪くないよ 悪くないよ 悪くないから

 この歌詞に出てくる「彼女」「君」は一体誰なんだろうか? 僕はなんだか、元恋人のことを指してるんじゃないかと思ってしまう。

 手前の歌詞では、

君の愛する我が子が
いつか物心つくとこう言って喚き出すんだ
「お母さんねぇなんで アタシを産んだのよ」
「お母さんの子になんて産まれなきゃよかった」
「お母さんの子になんて産まれなきゃよかった」
「お母さんの子になんて産まれなきゃよかった」

と、「主人公」は元恋人が産んだ子供が反抗するシーンを妄想している。ここから単純に意味を繋げると、

「彼女」、「君」 = 「愛する我が子」

 この可能性が高い。「愛する我が子」を「主人公」は抱きしめて、「君は何も悪くないよ」と語りかけているようにきこえる。

 でも、別のパターンも考えられるんじゃないかとも思う。それが、

①「彼女」、「君」 = 「元恋人」

と、

    ② 「彼女」    = 「愛する我が子」

   「君」    = 「元恋人」

この2パターンである。

 どういうことかというと、

 ①は、「愛する我が子」に母を否定される「元恋人」を「主人公」が抱きしめ、「主人公」が最後になぐさめるイメージである。

 ②は、「元恋人」に向かって、母を否定する「愛する我が子」「主人公」が抱きしめる。そして「主人公」は、「元恋人」をなぐさめている

 違いは、抱きしめている対象が「元恋人」なのか、「愛する我が子」なのかである。

 「元恋人」のことをあえて「彼女」とは言わないんじゃないのかなあ・・・ということを考えると、②のパターンが予想できそう。

 なぜなら、「君は何も悪くないから」という歌詞の前に、「愛する我が子」と書いてあり、はっきりと「元恋人」のことを「君」と言っているから、言い方的に、リンクしてもおかしくないんじゃないかということだ。あと、PV見ると、がっつり娘らしき人を抱きしめてるし・・

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 じゃあ、「君」が「元恋人」だったら、歌詞の意味がどう変わるのか。 

 まず、「君」が「愛する我が子」だった時、「君は何も悪くないよ」の歌詞は、「産まれた子供は悪くない、悪いのは産んだ元恋人だよ」という意味になる。最後の最後まで元恋人のことを憎んでいるし、母を否定された元恋人のことを「ざまあみろ」と言いたげな感じ。

 では「君」が「元恋人」だったら。「君は何も悪くないよ」の歌詞は、「産んだ君は悪くない、悪いのは・・・・」という意味になる。

 つまり最後の歌詞は

「君は何も悪くないよ、(悪いのは僕だから)」 

 と読めないだろうか。

 最初に戻るが、『五月の蝿』は、「憎むくらい好きだった人」に向けて歌っている。実はこの曲、このテーマを頭におきながら歌詞を読んでいくと、段々、裏にテーマが潜んでいるような言葉の使い回しをしているように読めてくるのである。

例えば、

君にあげた僕の言葉達よ成仏せよ
君が主演の映画の中で 僕はそう最強最悪の悪役
僕にもできた絶対的な存在

 君が好きだったからこそ、成仏してほしいくらい大切な言葉をあげていたし、僕がこんなに君を憎んでしまったら、君の人生で僕は悪役だし、君は絶対的な存在だし・・・と、「憎むくらい好きだった人」のテーマがちらちら見える。

 最後の歌詞「君は何も悪くないよ」は、憎んでも憎んでも、それでも押さえつけられない元恋人へ思いが溢れ出てしまったことを表現したかったんじゃないだろうか。

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 もっと深読みすると、「君は何も悪くないよ、(悪いのは僕だから)」とすることで、君にも僕のことを憎んでもらって、君の心の中に僕を残そうとしたんじゃないのか?でも「悪いのは僕だから」とはっきり言えるほど、僕は図々しくもなれない小心者なのではないか?というところまで想像を膨らませたい・・・

 だって君の愛する我が子の反抗だって、僕の妄想だから。それくらい情けない歌に聴こえてしまう。

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