忘備録(110)『アリラン物語』第5話
忘備録(109)『アリラン物語』第4話 からの続きです。
◆この記事の内容:韓国系エステの従業員が突然、店からいなくなった話を書いています。
(注意)内容は18歳以上向けです。
ママさんからのアカスリのオッファー
韓国アカスリ店「アリラン」のママさんの長い話を聞かされているうちに、昼になってしまった。午前中には家に帰るつもりだったのに。。
ママは、
「あたし、シャワー浴びる。それからご飯つくるから。それ、食べてから帰ったらいいよ。」
アカスリ店なので、当然ながらシャワーあり、さらに、なぜかユニットバスが設置されたルーム(いわゆるお風呂)もある。昔、ヤ〇〇の事務所だったので、若い衆が使っていたのだろう。
泊まらせてもらうには自分にとっては都合の良いアカスリ店だ。
ママさんのシャワーが終わったら僕もアカスリルームのシャワーを使わせてもらおう。その間に、ママさんがご飯を作ってくれるから、ちょうどいい時間になるはずだ。
なんかやばいなあ。。ママゴトになってきたよ。
そのアカスリ店の従業員の待機部屋で、持参した自分のノートパソコンを使って仕事をしながら待っていた。すると、ママが半分裸の状態(パンツだけで上は裸)で突然入って来た。
「げっ!何?どうしたん?」
「あんた、アカスリ、やってあげる。」
「今日は要らないよ。もう、この前、やってもらったし。」
「なんで?、ご飯食べる前に、普通、身体綺麗にするでしょ。」
「ごめん、ほんとにいいよ。お腹減ったし、すぐご飯たべたい。今度やってちょーだい。」
ママは気分を害したのか、「フン!」と言って、ご飯をつくるためにキッチンへ行った。
キッチンと言っても、このアカスリ店は何年か前に以前の経営者がスナックにもやっていたので、その当時に2畳ほどの台所を即席で作ったらしい。コンロが3つ、排気ダクトもちゃんと設備されていて、それなりの料理ができる。
たった一人の従業員、リリーちゃん
ママさんは料理の手際がよく15分くらいで作って、従業員の待機室に入ってきた。
「あんた、リリー、呼んできて。あの子もまだご飯食べてないから。」
僕はリリーちゃんの部屋に行った。ママさんは唯一の従業員のリリーちゃんに特別に1つの部屋を与えている。リリーちゃんに辞められると、この店はつぶれるから。
ママさん、リリーちゃん、そして僕と部屋で遅い朝食をしながらいろいろ話した。僕はこの雰囲気が好き。なんか落ち着く。狭い部屋、小さいテープル、皆、正座しながら食べている。もし家族だったらこんな感じなのかなあ。
ママさんは、リリーちゃんに、
「この人、あたしがアカスリ、やってあげるって言ったのに、『いらん』って言うねん。」
「ママさんに丸裸でアカスリをやってもらうなんて今更ながら恥ずかしいよ。」(お客さんは紙パンツ必着です。これしないと店として違法です。)
実際、恥ずかしいというのは言い訳で、硬いタワシが自分の大事なところに当たるのを恐れているだけだ。
以前、日本橋のアカスリ店のKちゃんにアカスリをやってもらったときも、「紙パンツ要らんやろ。」って同じことをことを言われたことがある。
ママさんは、
「あんたねぇ、紙パンツもコストよ。タダじゃないのよ。」
「確かにもったいないけどな。一回使ったら捨てるからね。」
「うちの店の紙パンツはトランクスのタイプや。あれ、一番値段高い。紐パンツのタイプにしようか?」
「安いやろうけど、アカスリのとき、危ない。」
「危ないってどういうこと?」
「履いてるかわからんような小さい紙パンツ、アカスリのとき〇〇〇に当たったら痛いやんか。」
「へえ~」
「男性客は嫌がると思うで。」
お腹が痛いリリーちゃん
どうでもいい話をしていると、性格的におとなしく口数の少ないリリーちゃんが、「ちょっとお願いがあるの。。あたし、、前からちょっとお腹が痛くて。。。入院したい。」
「へぇ?」
ママさんも僕も驚いた。リリーちゃんから何かを話したり、打ち明けることは珍しい。ママさんはリリーが店を辞めるかもしれないと思って、すごく心配顔になった。
大阪府共済組合
「あの~。保険、、、府民共済に入りたいんだけど、申込するのに一緒に来てほしいの。」
「いいよ。お腹のどの辺が痛いの?それ、いつから?」
ママさんと僕は心配になって、リリーちゃんに色々深く聞いた。要するに、入院するとお金がかかるので、予め保険に入っておきたい。リリーちゃんの友達が府民共済に入っていて、毎月2000円払えば、入院した場合、一日当たり10000円が補償されることを知った。リリーちゃんもそれに加入したい。書類を読んだけど、詳しく知りたいので、日本語の問題もあり、申込を手伝ってほしいとのこと。
リリーちゃんは、日本語を読むのはだいたい読めるが、日本語を聴くのが苦手。話すのはなんとか大丈夫。日本人の英語学習の状況と似ているような気がする。
「いいよ。手伝ってあげる。今、知ってる通り、大阪では特にコロナが蔓延してるでしょ。今、ネットで確認したら府民共済も対面式の加入相談や窓口を避けて、ネットでの申込を薦めてるよ。」
「インターネットで申込できるの?あたしのスマホでできる?」
「スマホ、持ってるんやったら、僕が変わりにやってあげるよ。でも、健康保険書とか免許書、銀行通帳、現住所を証明できるもの、持ってる?」
リリーおそらく何も持ってないのではないか。。それをなんとして申込をしてあげるのは、ちょっと面倒だなぁと感じていた。
すると、リリーちゃんは自分の部屋に行って、すぐ戻ってきた。手には書類や健康保険証、免許書、銀行の通帳をもっている。
おお!すべて揃っている!リリーに聞くと、日本人の男性と日本で結婚して20年ほど暮らした後、離婚したようだ。
日本名(苗字名前)は、〇〇〇子ということが分かった。もしかして、日本語ができないふりをしていっるのではないかと思うようになった。
というのは、リリーちゃんは、保険申込書の条項を隅から隅まで読んでいて、僕に詳細な質問をしてきた。
この保険申込には直近の銀行通帳の残高の確認が必要。その証明のためにリリーちゃんは店を出て銀行に行った。
リリーちゃんの日本語能力
その間に、僕はママさんに、
「なぁ、リリーちゃんって日本語、もしかして完璧に分かるんとちがうか?」
「そうよ。あの子、日本語できないふりをしてるだけ。日本にずっと住んでるんねんで、わたしより上手よ。」
「やっぱり。。。前にリリーちゃんとラインで日本語の文章でやり取りしたとき、助詞とか表現が完璧だったし、違和感なかったよ。ママとは大違いや。」
「わたしは日本語の勉強嫌い。それに日本に来てまだ7年や。」
7年でこのレベルかいな。。。(心の声)
実際、自分が中国に住むようになった場合、中国語をママさんのレベルでさえ話せるようにはならないだろう。
日本に住む中国人と話をして通じなくてイラっときたとき、自分の場合なら何年で外国語を習得することができるだろうかと考えるようにしている。
とにかく、リリーちゃんのスマホを使って府民共済の保険申込をやってあげた。健康保険書も含め書類がそろっているので、インターネットを通して10分で済んだ。
蒸発したリリーちゃん
数日してから、僕は仕事で東大阪にいったとき、ママさんの韓国式アカスリ店に立ち寄った。
「どう?お客さん、入ってる?」
「あれから、全然よ。昨日はゼロ。コロナ、いつ終わるの?もうダメや。」
「リリーちゃんに頑張ってもらうしかないな」
「リリー、店辞めた。もう店にいないよ。」
「どこ行ったん?他の店?」
「知らん。」
「どうするの?リリーちゃんがいなかったら、店できないやん。」
「ええの。一人、雇ったから。おばさんやけど、今日から来る」
「韓国人?中国人?」
「中国人や。韓国人は来ない。」
「ふ~ん。リリーちゃんの部屋はどうなってる?」
「もう何もない。わたしが片付けた。今日から来る中国人のおばさんが使う。」
部屋を見ると、ママさんが片付けたと言った通り、リリーちゃんが使っていた物は何もなかった。
「リリーちゃんは急に店に来なくなったの?」
「そうや。『病院に行くから休みたい』って電話あって、その日からもう来なくなった。」
「前から辞めるつもりやったんかなぁ。」
「わたしの財布なくなった。あんまりお金入ってなかったけど。」
「財布って、あの売り上げ金を入れる財布?」
「うん。でもいいねん。あの子が持っていったていう証拠ないし。。」
「げっ!それヤバイな。一応、警察に届けるか?」
忘備録(111)『アリラン物語』第6話 へつづく。。。