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8050問題(1)

 80代の親と50代の子が同居。そして50代の子は引きこもり。子は親の年金が経済的な命綱。

「親が甘やかしているからだ。」
「子がわがままだ。」
「50にもなって情けない。」

なんて声も聞いたことがあるが、いずれも問題解決には、的外れな言葉だと思う。

この問題の厄介なところは、80代の親がいまだに子を養っていることと、50代の子がひきこもっていることなのだが、30代の子のひきこもりと違って、50代で就労支援とか社会復帰とか、もちろんアプローチしなければいけないのだけど、一筋縄ではいかないから厄介だ。

この問題を考えるにあたって、私は2つの視点から考えるべきだと思う。1つは心理的な視点、もう1つは社会構造的な視点である。

ではまず先に社会構造的な視点から見ていくことにする。

Aさんは大学を卒業後、学んだことを生かしてある企業に就職した。ただAさんは気が弱く、なかなか営業成績が上がらなかったことから、上司のパワハラ、同僚からのいじめを受け、退職せざるを得なくなった。その後、自分の好きなことで仕事を探したAさんは、とあるサーカス一座に就職。仕事は楽しく、これなら続けられると、充実した日々を送っていたが、5年後、サーカス団が経営不振となりリストラ。求職活動をするも、すでに30代となっていたAさんにはなかなか希望の職が見つからず、結局配送ドライバーとしてある運送会社に採用された。大型免許も取り、長距離トラックの運転手として勤務するも、長時間勤務と変則勤務で体調をこわし、退職。その後、家具屋に就職するも、すでに40代となっていたため、重い家具を運ぶことが体力的にきつく、腰を痛めたことをきっかけとして退職。すでに50代も近づいていたことから、なかなか次の仕事が見つからず、結果ひきこもることになり、50代を迎えてしまった。。。

さて、これを読まれた皆さん、やはりこれはAさんのわがままなのだろうか?1つの会社に辛抱強く残ることができず、職を転々としてしまったAさんに問題があるのだろうか?Aさんの自己責任なのだろうか?

私は、もちろん本人にも責任はあるけど、やはり、日本社会があまりにも選択肢の少ない社会であることに問題があると思う。

「せっかく大学まで出たのに、もったいないわね。」
・・・なんとなく、大学へ行っただけだったから。。。

「パワハラやいじめに遭って、大変だったわね。」
・・・もし上司に恵まれていたら、今頃は部長になっていたかも。。。

「せっかく好きな仕事が見つかったのに、リストラだなんて。」
・・・動物が好きだったから選んだんだけど、ついてないな。。。

「最初の会社を辞めてから、サーカスなんかに行くから、仕事が見つからないんだよ。」
・・・パワハラやいじめのことが悔しくて、怖くて。。。

「どうして大学まで出たのに、運送会社にしたの?」
・・・履歴書送っても不採用ばかりで、それであまり人と関わらないで済む仕事をと思って。。。

Aさんは、Aさんなりに、日本社会で生き残ろうと、一生懸命しがみついて頑張ってきたつもりなのだが、さすがに40半ばで腰を痛めて働けなくなったとき、言いようもない不安に襲われ、不眠症になってしまったそうだ。

「どうして結婚しなかったの?」
・・・相手はいて、チャンスはあったんだけど、給料が安かったから踏み切れなくて。。。もたもたしているうちに別れちゃった。。。

ゆとりのない、生きづらい社会だなって思う。もっとみんなにゆとりがあれば結構社会問題って解決しそうな気がする。。。

と彼はぽつりとつぶやいた。

(つづく)

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