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中高年者に起きる半月板損傷【エクササイズVS手術、どちらが本当に効果的なのか?】

トレーナーやセラピストの方で、クライアントもしくは患者さんが半月板損傷の怪我をした場合どのように対応しますか?

また、もし半月板損傷の診断を受けた方がトレーナー、セラピストさんからのアドバイスを聞くため貴方のところへ相談にきました。どのようなアドバイスをしますか?

患者さんからの質問は『手術した方が良いのでしょうか?手術した方が早く治るのでしょうか?』

先日リサーチペーパーを読んでいた時に中年者に起きる半月板部分断裂について興味深い研究がされていたのを見つけたので紹介したいと思います。

(原文)"Exercise therapy versus arthroscopic partial meniscectomy for degenerative meniscal tear in middle aged patients: randomised controlled trial with two year follow-up" - British Medical Journal (BMJ), Published 20 July 2016, https://doi.org/10.1136/bmj.i3740 

その研究では平均年齢49.5歳(35.7ー59.9歳)の男女140人が研究の対象となり、140人全ての人が2つのグループに分けられました。ちなみにその140人の方は2ヶ月以上膝の痛みを抱えている方で、MRIにて半月板部分断裂を診断された方たちです。***140人中の96%の人はレントゲンでの診断でも変形性膝関節症(Osteoathritis)と診断されなかった人たちです。***

グループ1:12週間セラピストの指示を受けながらエクササイズセラピーを行なったグループ(エクササイズセラピーのみで、手術なし)ー70名
グループ2:2つのグループに分けられた後、すぐに関節鏡視下手術が行われたグループ (手術のみで、エクササイズセラピーなし)ー70名

ちなみにエクササイズグループは下記のエキササイズを行い、両方のグループに3ヶ月、12ヶ月、2年後のFollow-up調査が行われたました。

両方のグループを比べる指数として使われたのがThe Knee injury and Osteoarthritis Outcome Score (KOOS)というもので先ほども言ったように3ヶ月、12ヶ月、2年後に調べられた数値が比較されたようです。

結果としては、2年後に行われた調査の数値を比べると両方のグループにそれほど効果の違いはなく、3ヶ月後の調査ではエクササイズセラピーのみを行なったグループ(グループ1)の人たちの膝周りの筋力強化が著しく見られたこと。また2年後に行われた調査結果を比べても不利な効果は両者のグループから見られなかったという結果が出ました。またエクササイズセラピーグループにいた19%の人が2年の間に関節鏡視下手術を行なったがあえて手術を受けて良くなったという結果はなかったようです。

この研究グループの結論としては、この条件下ではエクササイズセラピーと手術の対応結果にあまり違いがなかったこと、また中年代の方が半月板部分断裂の診断を受けた際にはOsteoathritisの傾向がみられなければエクササイズセラピーを勧めるべきではないかという結論が述べられていました。

膝の怪我でも色々ありますので一概に手術よりもエクササイズをした方がイイとは言えませんが、このような研究結果を知ることで再度エクササイズの効果を見直し、怪我の条件によっては適切な運動を行うことで手術をしなくても同じような効果を出すことがトレーナー・セラピストでも出来ます。正しく"Exercise as medicine"ですね!

最初に質問した『手術した方が良いのでしょうか?手術した方が早く治るのでしょうか?』についてのアドバイスとしては、まずはその患者さんの怪我の状況、過去の経験、エクスペクテーションなどを聞きしっかりクライアント・患者さんを理解すること、そして手術をしなくても適切なエクササイズをすることで同じような効果が出たという研究結果を伝えることでクライアントさんはInformed decisionが出せるのではないかと思います。

これから益々エクササイズ効果が証明されていくはずです。エクササイズ専門家の私たちトレーナー・セラピストの方は世界中で行われている研究・理論を常に学んでいくことで自分の使える道具を多く身に付けていくことが必要だと思っています。

引き続き何か興味深い研究・情報があれば随時紹介していきますので、もし何かリクエス等があればお気軽にコメント下さい。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

かず

参考資料

Exercise therapy versus arthroscopic partial meniscectomy for degenerative meniscal tear in middle aged patients: Randomised controlled trial with two year follow-up. (2017). Bmj. doi:10.1136/bmj.j266

Stensrud, S., Roos, E. M., & Risberg, M. A. (2012). A 12-Week Exercise Therapy Program in Middle-Aged Patients With Degenerative Meniscus Tears: A Case Series With 1-Year Follow-up. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 42(11), 919-931. doi:10.2519/jospt.2012.4165



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