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世界が沈む

匂いたつ

光の粒子

微笑んで

世界が沈む

わたしの中へ

実家からの帰り道。

新幹線への乗り継ぎ駅の豊橋に向かう電車の中で、そんな光景が浮かびました。

全身麻酔の手術後、人工呼吸をはずしたら自力呼吸が回復せずに、一時は寝たきりになってしまうという父の人生最大のアクシデント(2019年4月)をきっかけに、父と母、そしてわたしとの間に起きたいろいろな出来事。

もう、すべてがわたしの中に沈んでいく。

その光景の愛おしさと美しさが、ただただ眩しくて・・・。

実家では、母の変化が、そのままの父と母二人の空氣感に反映されていました。

父は穏やかで、「殺せー!」などと叫ぶことはありませんでした。

日中にリビングのソファで突然叫びだすこともなかったし、すぐ下の父の寝室から、深夜にそんな叫び声が聞こえることもありませんでした。

ただ一度。

「生きとるのはしんどいのぉ。」

傍らにいた父の口から、そんな言葉が静かに虚空に消えていくのを見ました。

大好きだったコーヒーの淹れ方を忘れてしまうこともある父でしたが、ハンドドリップのコーヒーを母とわたしに入れてくれました。

もちろん、完全に一人では無理なので、色々とわたしたちも手伝いながら、笑。

「お母さんが穏やかだから、お父さんも穏やかなんだよ。」

自分の状態がそこまで父に反映されていることを、母はまだ実感できていないようでしたが、こんな言葉が返ってきました。

「たしかに、前みたいにはイライラしなくなったね。」

もともと心には嘘のない人です。

穏やかになった母からこぼれ出るその純粋性の美しさに、今頃になって母の本質を見た想いがしました。





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