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物語

それとは分からずに
泣いたり
怒ったり
笑ってごまかしたりして

生きながらえてきた
心の片隅には

あの日の悲しみが
人知れず
膝を抱えて
小さく小さくなっている

時には
その悲しみが
本当の涙を流して 
泣けるように

時には
その悲しみが
大きく伸びをして
源へと
戻っていけるよう

物語はある

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古い映画を観ました。

当時のプロモ―ションはよく覚えていて、名前だけは記憶の片隅にずっとしまわれていました。

その映画の名は「さびしんぼう」。

富田靖子さんが、「さびしんぼう」と呼ばれる女の子と高校生のお嬢さんとの二役を演じることが当時話題になっていましたね。

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蓋を開けてみれば、それは、ある人の若き日の思い出が鍵となるファンタジー映画でした。

公開は1985年。当時の高校生のあどけない感じとか、学校の雰囲氣とか。のびのびしていたもんだな、と懐かしい氣持ちになりました。フィルムの古びた感じもやたらと郷愁を誘いましたね。

物語は「さびしんぼう」の正体を何となく示唆しながら進むのですが、最後の最後で「それだったか!」と唸ってしまいました。

物語に引き込まれているうちに、張られていた伏線をすっかり忘れていたのです。

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痛みを知って優しくなる人の姿。痛みを知るからこそ、そこには直接触れないやさしい距離感。そうした場面の描写にはめっぽう弱いわたしです。

主人公二人の顔がクローズアップされるクライマックスでは、当人たちが泣き出す前にわたしの涙が溢れました。彼らの悲しみがわたしへと共振した瞬間でした。

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涙した後の爽快感が好きです。泣くことは、世界を浄化しますね。今こそ、世界には物語が必要なんじゃないかなと思いました。

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そしてもうひとつ。

劇中、何度も登場するショパンの「別れの曲」。語り手の心の色がそのまま溢れてくるようで、映画に映る尾道の風景を優しく染め上げていました。

それは、わたしの心にも深々と染み渡り、切なくも柔らかな記憶を呼び覚ます特別な一曲になりました。

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ちなみに、この映画のことを思い出したのはこんなきっかけでした。


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