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読書日記

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2021年1月の記事一覧

ハンナ・アレント『カント政治哲学講義録』読書ノート(後編)

ハンナ・アレント『カント政治哲学講義録』読書ノート(後編)

ハンナ・アレント『カント政治哲学講義録』読書ノートの後編です。今回は第十一講義から第十三講義をまとめます。全体を貫く謎は「なぜ判断が趣味に基づくのか?」で、判断と構想力や共通感覚の関係性が語られています。

分断が話題になる昨今ですが、アレント=カントから「その判断、自分の身内以外にも説明できるの?」と問われ、背筋の伸びる内容になっています。エリートが自己利益のための判断を繰り返しているのが分断の

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①決断の前に何度か考えよ、②指摘を素直に受け取れないのは危険信号、③”いま”ご褒美がもらえる仕組みをつくれ -- 「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」の読書ノート

①決断の前に何度か考えよ、②指摘を素直に受け取れないのは危険信号、③”いま”ご褒美がもらえる仕組みをつくれ -- 「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」の読書ノート

この記事は、ターリ・シャーロット『事実はなぜ人の意見を変えられないのか -- 説得力と影響力の科学 -- 』の読書ノートである。私が受け取ったことは必ずしもSharotが言おうとしていたことと一致していないので、気になった方はぜひ原著をお読みください。

①決断の前に何度か考えよ私は、大事な決断をするとき、那須高原に行って、何日間かこもって考えることにしている。第一に、心理学徒として、大切な決断を

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ヴィゴツキー「発達の最近接領域」再訪 ― 誰かに助けてもらいながら背伸びする経験をどう創るか ―

ヴィゴツキー「発達の最近接領域」再訪 ― 誰かに助けてもらいながら背伸びする経験をどう創るか ―

ソ連の天才的心理学者ヴィゴツキーが提唱した「発達の最近接領域(Zone of proximal development)」理論は、現在の教育改革を支える大切な概念の一つです。学習科学の基礎概念の一つである「足場かけ」の元ネタでもありますし、個人的には「主体的・対話的で深い学び」が「這い回る経験主義」に堕落しないための鍵概念でもあると思っています。教育学の講義では必ず触れられ、様々な教育の議論で引用

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