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2020年に読んでよかった10の読み物(書籍、学術論文など)

「どうやってデザインを勉強していますか?」と学生の方から質問をいただくことがこの1年多く、せっかくの年の瀬なので今年デザイン独学のために読んでよかった本や、大学で読んだ学術論文で新たな知見が得られた読み物をいくつか簡単に紹介します。

1.  オブジェクト指向UIデザイン──使いやすいソフトウェアの原理

今年随一の書籍。大学で学んだクラス図などのエンジニアリング知識をデザインシーンで活かせるとわかり、点と点が結びついた。仮説検証して出てきた要件が、ユーザーが「名詞 → 動詞」の順序で操作できる"オブジェクトベース"となっているかで、その後のモデリングの質が決まると言っても過言ではないので、UIを学ぶ上でこの書籍に出会えてよかったと心から思う。

2. No Silver Bullet - essence and accidents of software engineering

1のOOUIの本に大きな影響を与えた、ソフトウェアエンジニア向けのアカデミック論文。これまでのエンジニアによるAdaや人工知能、プログラミング環境の発展は「偶有的な複雑性」 (Accidental complexity) を解消したに過ぎず、「本質的な複雑性」 (Essential complexity) を解消するにはサイクルの早い迅速なプロトタイプ作成や、優秀なデザイナー人材育成に注力すべきという内容。特に後半はプロダクトサービスに携わるデザイナーがいかに社会レベルで重要か説いており、翻訳機を使っても必読レベルの良論文。

3. インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす

ワイヤーフレームからプロトタイプ作業で注意すべき"マナー"を抑えられる。たとえば、万人が理解できるアイコンを無難に使ったり、心理学的な視点でこのアクションがユーザーに与える影響など、この本と「続編」「実践教室」の3冊すべて読んだことでインターフェースへの理解がより深まった。"The理論"の本だが、自分で手を動かした経験のある人であれば、活字が苦手でも追える内容だと思う。

4. 創造力とデザインの心得

広義のデザインの歴史を1から分かりやすく学ぶことができる。理論書でもビジネス寄りで途中にイラストも多いため、横文字が並ぶことが少なく初心者でもとっつきやすい。CX寄りの作品を作るとき、課題抽出のフレームワーク(SAG法)はこの本からアイデアを得て利用するシーンもあった。

5. デザイン思考が世界を変える

ビジネスシーンでのデザイン実例が多数掲載されている。特にNYのブレーキを意図的に削ぎ落とした自転車のアイデアは、デザインリサーチの一部始終が腑に落ちて「現場ではこうやっているのか...!」が掴めた瞬間だった。アイデア出しで困ったとき、ケーススタディとして発想が広がったのはこの本のおかげで、UXを体系的に理解するのにもってこいの一冊。

6. 13歳からのアート思考

アートとデザインがどう違うかが気になったときに読んだ本。アート作品の見方や背景を知れるだけでなく、美術が思考力を研磨し「ものの見方」を広げることが理解できた。実は美術館が得意じゃなかったが、この本と出会ってからは作品ひとつとっても、紙や画材の素材や色・描いた歴史・画家の関係性や生涯まで興味の幅が広がった。

7. 左ききのエレン

昨年出会って以降、継続して購入している唯一のマンガ。広告業界が舞台なのでUI/UX事業とは異なるが、デザイナーを目指すなかで熱いマインドを維持してくれる、モチベーターのようなシリーズ。時系列が行ったり来たりする面白さがあるので、1から読むのがおすすめ。

8. リーンスタートアップ

ここからは学内の課題や勉強のためにガッツリ読んだ本や論文。トヨタのカンバン方式を世界が評価している理由、それがLean(無駄のない)でサイクルを回し生産効率を高めているため。ビジネス運用においてコストや時間の節約のためのノウハウが書かれている。

9. Global Supply Chains in a Post-Pandemic World

コロナによって変化した最新の流通事情を紹介している論文。中国をはじめとする、人件費が安い地域に生産拠点を置いていたグローバルカンパニーが受けた影響と、今後どのような戦略をとっていくべきかの推論が成されている。

10. Digital Sensory Marketing: Integrating New Technologies Into Multisensory Online Experience

今年読んだ論文で一番衝撃を受けたマーケティングに関する論文。現代はスマホやWebをインターフェースの媒介とするのが当たり前になっているが、ここに触覚や嗅覚といった、視覚以外の五感が加わることでどのように広告が変化するか(どう感情を揺さぶるか)そのために変化すべきインターフェースのあり方を知ることができた。


(おまけ)

Awwwards Hot Right Now: A Contemporary Landscape for Digital Thinkers 2020

市販で手に入るものではないですが、読んで勉強になったのでシェア。ReDesignerのプレゼント企画で当選し、たくさんのデザイン作品とともにが2020年のトレンドを振り返るAwwwardの本をいただきました。海外らしいビビッドで目を引く作品がとても楽しく勉強になります。ありがとうございました。

Kaz






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