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オーストラリアの洪水被害と洪水保険

オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の中西部では、2022年11月以降、洪水被害が収まっていない。ユウゴウラ(Eugowra)のように洪水被害を受けた町では、数百人の住民が町の再建に苦心する中、同時に無意味な洪水保険料にも直面している。

<記事のポイント>
・オーストラリア保険評議会によると、2020年以降の洪水・暴風雨の保険金請求額は123億ドルを突破
・洪水被害者は保険料を払えないと言う
・専門家によると、政府が支援する「再保険プール」によって、すべてのオーストラリア人に保険を提供することができるという。

「持ち物のほとんどが壊され、まるで家に爆弾が落ちたようだ」。ユウゴウラの町の中心部では、11.2メートルという前代未聞の高さを記録した鉄砲水によって、11月14日、2人が死亡した。何百人もの人々が救助を必要とし、屋根から空で助け出された。家屋は足元から引き裂かれ、住宅や事業所は壊滅的な被害を受けた。

アリソンが住む人口700人の町では、アリソン同様に、洪水被害のための保険金の給付を待つ人はほとんどいない。「洪水保険に入るには、年間3万3,000豪ドルの追加保険料が必要と言われたの。そんな大金は払えない」と彼女は言う。

「私たちは山火事や盗難などのあらゆる損害をカバーする保険には加入しています。でも、高潮や洪水被害、暴風雨被害についてはその保険の対象外なんです」。

クイーンズランド大学ビジネススクールで災害リスクファイナンスを専門とするポーラ・ジャーザブコウスキー(Paula Jarzabkowski)教授は、ユウゴウラのような洪水の起こりやすい地域で、人々が保険から手を引くのは驚くことではないと言う。

「30万ドルの家に対して、毎年3万ドルの保険料を支払わなければならないとしたら、すぐに無意味になります」と、ジャーザブコウスキー教授はABC Newsのデイリー・ポッドキャストで述べる。
しかし、保険会社では一般的に、「リスク反映型プライシング(価格設定)」を採用するため、洪水リスクの高い地域に対しては、保険料を上げるしかない。「自分の身を守りたいのに、価格が高すぎて守れないのは、人々にとっては恐ろしいことだ。」

ジャーザブコウスキー教授によると、オーストラリアでは気候変動の影響や洪水の発生しやすい地域に家を建ててきた歴史とが相まって、多くの人々にとって保険が成り立たなくなる転換点に差し掛かっている、という。

「自然に洪水が流れ出せるようにするための策が減っています。建築物が増え、それゆえ、洪水が発生したときの勢いが増しているのです。洪水が起こりやすい地域や、最適とは言えない場所にあった家屋は、今はもっとひどい状況になっています」。

ジャーザブコフスキー教授は、オーストラリアも、スペインやフランス、スイスなどの他国にならって、保険そのものをより持続可能なものにするべきだと主張する。

これらの国々では、自然災害をカバーするための特別な基金を設計し、そこにすべての保険契約者が少額を拠出する「再保険プール」を作る方法がとられている(プロテクション・ギャップ・エンティティーとも呼ばれる)。

民間の保険会社は、リスクを国営のプロテクション・ギャップ・エンティティーに転嫁し、プロテクション・ギャップ・エンティティーでは、そこに蓄積される保険料をもとに、特定の自然災害によるすべての人の損失をカバーできるようにするのだ。同様の再保険システムは、ニュージーランドでは地震の補償に、英国では洪水再保険スキームとして、すでに利用されている。

ジャーザブコフスキー教授によると「英国では、レガシーな資産があるために洪水の発生しやすい家が一定数あり、彼らは保険をかけることができないので、すべての家の持ち主が、保険料から10ポンドを支払うことになっている」という。

そうして集まった保険料は洪水再保険としてプールされる。そのため、保険会社は、洪水多発地帯に住んでいる人に対しても、リーズナブルな価格の保険料で洪水保険を販売することができる。

プールされる保険金の一部は、グローバルな再保険会社を含む民間セクターが拠出するものもあるし、政府が支援するものもあるだろう、とジャーザブコフスキー教授は付け加えた。「この仕組みを活用することになれば、少なくともグローバルな資本がオーストラリアの自然災害を補填することになり、その一部は政府のバランスシートにも計上されることになるだろう」。

地域によっては、この種の解決策がすでに動き出している。

2022年7月、オーストラリア政府は、サイクロン再保険プールを通じて、オーストラリア北部の保険適用を改善する新スキームを開始した。これは、保険会社が、サイクロンやサイクロンに関連した洪水被害に対するリスクを移転するもので、100億ドルの政府保証が付されている。

オーストラリア保険評議会(ICA)の新しいデータによると、2020年1月以降、洪水や暴風雨に対する保険請求額は123億ドルを超えた。さらに直近の2022年10月にタスマニア、ビクトリア、ニューサウスウェールズで起きた洪水による保険損害は4億7700万ドルに上る。

ICAのアンドリュー・ホール会長は、保険で賄えるのはここまでだと言う。「ICAのデータが示している内容を無視してはならない。コミュニティレベルでの軽減策や、住宅の改修、最も過酷なケースにおいては住宅の買い戻し、早期警報システムの改善などに投資していく必要がある。そして、住宅を危険な場所に建てることをやめると同時に、新たな住宅についてはより強固なものにしていく必要がある。」

(引用元)https://www.abc.net.au/news/2022-12-12/flood-insurance-eugowra-nsw-damage/101756508?utm_source=sfmc&utm_medium=email&utm_campaign=abc_news_newsmail_am_sfmc&utm_term=&utm_id=1990112&sfmc_id=365048175

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