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母から娘へ 5/15

 岩井秀人構成・演出のさいたまゴールド・シアター番外公演「ワレワレのモロモロ」が10日に開幕しました。12日はHさん共々観に来てくれてありがとう。本編と、蜷川さんの稽古写真の展示や徳永京子さんたちのアフター・トークはどうでした?

 出版デビューと芝居の初日……わからないけれど「一人でも多くの人に見てもらいたい」気持ちは共通するのではないでしょうか。でもね、キャストの時も舞台初日は「さあ始まるぞ!」と身の引き締まる思いがしますが、今回の演出助手としての初日は、その比ではないほどドキドキでしたよ。キャストを舞台へ送り出す時、傍らにいた制作スタッフに、「スタッフの気持ちが良くわかったでしょう?」と言われ、ホントその通りでした。

 もっとも、今回の私の役回りは、ちゃんとした演出助手(それは私にはとても無理)というより、ゴールド・シアター団員と岩井さんの橋渡しをするというものですが。我が身でも切実に感じる、12年前より確実に衰えている肉体と記憶力を駆使して、何回も繰り返す稽古。若い時ならすぐ覚えられたはずのセリフと動きは、もどかしく情けないほど覚えられない。キャストたちの、文字通り老いとの戦いは傍らで見ていても本当に切実でした。

 しかも今回はメンバーが書いた6本の作品を、いつもの公演より少い総勢14人で演じるため、通常よりセリフの量が多いんです。いつも舞台上で何くれとなくサポートしてくれる若いネクスト・シアターの皆さんもいない、プロンプも一切なし。まあ通常はプロの劇団なら当たり前のことでしょうが。

 本番に入ってもランスルーは毎日行っています(これは従来からですが)。いつもなら一人分のセリフを何人かで割り、2、3行のセリフしか言えなかった仲間たちが、沢山のセリフや動きに挑戦するお手伝いが出来て、私は本当に嬉しいです。「キャストとして出られなくて残念だね」と言う人もいましたが、時代の生き証人として是非やって欲しかった作品があるし、それが実現できるなら私は黒子に回ってもいいと当初から思っていました。

 それぞれの作者はもちろんですが、共演メンバーも、よりイキイキ演じています。同時代を生きてきた共感があり、昔流行った本や歌の話など、稽古でも盛り上がってましたからね。我々高齢者は、直近のことはすぐ忘れるけれど、昔のことはよく覚えているのです。あと、戦中戦後の話は、身近な家族になかなか話せていないケースも多いです。

 岩井さんは、その日その日でハプニングが起きるかもしれないけれど、セリフが出ない時は、他の人のセリフが出やすいよう言葉をかけるなど、助け合う様をも含めて見てもらいたいとのお考えです。舞台上にいる役者同士が助け合って進行する、つまり高齢者(俳優)たちのありのままを見てもらおうということだと思います。

 6本の話は身近な冷蔵庫の買い替えの話から戦争体験まで、時代も現在から70年以上前まで、場面転換も多くどうなることかと思いましたが、そこが岩井演出の面白さ、「こうなるんだ!」と、でき上がっていく魔法のような過程をつぶさに体験できました。

 20の日曜の千秋楽までひた走りです。あ、母の日のお祝いもありがとうね。ケーキご馳走さまでした。ではおやすみなさい。

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