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リコリス・ピザ (2021)

眺めて、委ねて、想い馳せる作品。

ストーリーに大きな流れがあるわけではないものの、若さが全てを先行するエネルギッシュでだいぶ捻れたキャラクターたちが大変魅力的で、73年のサンフェルナンド・バレーの街並みに没入させてくれる。
「アメリカン・グラフィティ」が一つリファレンスにあるようだが、まさにその系譜にあると言えるだろう。

映画を一言で表現すると「ボーイ・ミーツ・ガール」ものではあるものの、男15歳、女25歳と年齢が大きく離れた青春恋愛映画(しかもかなり対等な関係性を築く)はあまり他に例を見ないし、
主演のアラン・ハイムの家族がそのまんま家族役で当たり前のように出演していたり、バーブラの恋人だったジョン・ピーターズを演じるのがブラッドリー・クーパーで、新旧「スター誕生」を実現させていたりと、
わざわざ説明するのも野暮だなと思わせる粋なユーモアが各所に散りばめられている。

バンドの「ハイム」としてはすでに世界的に知名度があるが、役者としての存在感も非常に素晴らしかった。
そもそも彼女たちが表現している音楽のリファレンスがこの時代そのものだったりするので(聴いたことない人はぜひ「Want You Back」など聴いてみてください)、佇まいだけで完璧にマッチしていて、これ以上ないキャスティングだったと思う。

素朴だけど奇跡のような美しさと儚さがある(それってつまり「青春」のことじゃないか)、観ていて心地よくなる映画。

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