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【小説】モンストロマン【完結】

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1960年代の北加伊道(ホッカイドウ)。そこに生きる、推定1000歳、不死身の男は何を想うのか。ハードボイルド&ファンタジー開幕。
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2020年4月の記事一覧

「モンストロマン」2-4

 ジャックは男の首を放って捨てた。血の噴水を浴びたせいで、服はまただめになってしまった。キティに何を言われるのか考えるのが憂鬱だ。
「ジーザス」牧師が神の名を呟く。
「牧師、あなたはどうしてこんなところに?」ジャックは疑問を口にする。
 そもそもどうして彼は殴られていたのか。まだ、理由を知らない。ソーヤの頼みを聞いて介入したが、今は詳しい事情を聞いてみたかった。ジャックは牧師とソーヤの居る方に歩み

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「モンストロマン」2-3

 中華料理店「満福」から歩いて十分ほどで薄野に到着した。昨日は通り過ぎるだけだったこの場所も、今日は目的地である。少し観察するといつもとは違う雰囲気を感じ取ることができる。それはクリスマスに向けて準備された、大きいモミの木やサンタクロースを模して造られた装飾だけが原因ではない。人々の活気。祭りの前の浮かれた空気が、日常、どこか殺伐とした雰囲気を持つこの街をやわらかく包んでいた。
 本当に人さらいな

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「モンストロマン」2-2

 狸小路を出た後、二人は薄野の中心に向かって歩きだした。通りの人間はさきほどより、はけていた。飲食店に人が集まる時間だ。こんな時間に腹をすかせたまま歩くのは、誰にとっても耐え難いことかもしれない。道は相変わらず雪が残っていたが、朝よりは踏み固められていて歩きやすい。人の足跡はやはり、どれも飲食街の方へと向かっているのが見て取れた。
「ちょうどいいや、調べるついでに昼飯も食っていこうぜ」キティが言う

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「モンストロマン」2-1

 薄野の北。まっすぐ伸びるアーケードは、かまぼこ型の屋根で雪から守られていた。ホッカイドウ随一の闇市であるここは、狸小路と呼ばれていた。アーケードの入り口には、大袈裟な装飾を施された、ジパング風の巨大な鳥居が君臨している。何を求めて、ここを訪れた人間にせよ。皆、金を抱えてそれを潜り、反対側の出口に流されていく。
 逆らうことの難しい人の川。周りの平均的な身長から、頭二つ分は抜けているために目立つ男

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「モンストロマン」1-6

 長机の向こう側で、老人の手に納まっている液時計。その中身は、自分を化け物に変えた薬であるかもしれない。そう言われたジャックは動きを止める。
 やっと見つけた歓喜。何を今さら、という戸惑い。千年、積もり続けた。それまでは、無視し続けてきた悲しみのようなものが、どろどろに溶け合って。感情の堰を壊そうとしているのが分かる。今は一言だけ、言葉を絞り出すのが限度だった。
「キティ。先に薄野へ行ってくれない

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「モンストロマン」1-5

 帰りはドレッドの案内で、日が沈む前に涅槃場を出ることができた。当然彼は嫌がったが、キティの交渉に感銘を受けて。最後には渋々ながら協力してくれた。
「案内はここまで。俺は、またしばらく涅槃場に潜る。手下を皆殺しにされたからな。とてもじゃないが、恐くて外は歩けねえ」
「一人まだ生きている」
「逃げたやつは手下に数えない」
「確かに、そうだね」ジャックは頷く。「さようならドレッド」
 去り際、ドレッド

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