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よの3 マスク越しの

コロナ渦でマスクをつけ始めて1年が過ぎた。

仕事でもプライベートでも、一日の大半はマスクをつけている。
おかげでマスクの品質や種類にこだわりながら、いろんなマスクを試してみた。まさかマスクにこんなに詳しくなるとは思ってもみなかったが、今の一番のお気に入りは「エリエールのハイパーブロックマスク」だ。

ウレタン製マスクや布マスク、様々な不織布マスクを試してみたが、エリエールのハイパーブロックマスクが掛けごこちのよさで今のところマイベストである。

私は人と出会う機会の多い仕事柄、マスクをつけはじめて、初対面の人がなかなか覚えられない自分に気づいた。
なにしろ顔で見えているところは目だけである。
マスク越しで声も聞き取りにくい。
再会すると、一瞬動きが止まり、しばらくは、だれだっけと相手にさぐりをいれる羽目になる。

ところが、人間の適応力はほんとうに凄いなと思う。
ずっとマスク越しに対面を続けていくと、だんだんと見分ける能力がついてくるのだ。最近ではマクスでの対面が楽になってきた。
マスクをつけはじめてから出会った人は、ずっとマスク越しのおつきあいが続いているし、中には未だにマスクの外した顔を見たことがない人もいる。

そんなある時、偶然はじめてマスクを外した顔をみて衝撃を受けたことがある。

全く違う人にみえたのだ。
別人である。

マスク越しから見たその人とマスクを外して見たその人のあまりの違いに驚いた。いったいどちらが本当のその人なのだろうか、頭が混乱しかけるほどだった。

よく電話だけでずっとおつきあいして人と初めて会ったときに受ける顔と声のギャップに近いものがあるのかもしれない。(電話でなんとなくこの人こんな感じのひとだなぁとイメージしていたのが、会うと全然違うみたいな)
いやむしろ、マスク越しの場合は常に会っているのにもかかわらず、なのだ。

まさかのギャップはそれをうわまわる衝撃である。

ところが、やっぱり人間の適応力はほんとうに凄いなと思う。
しばらく会っているうちにその混乱した印象も、何となくいいところに落ち着くのだ。

そのうちまさかのギャップにも慣れてきて、逆に積極的に相手がマスクを外した隙に顔を確認してギャップを調整していくようになっていった。
思いの外マスク越しの顔と外した顔は違うのだと改めて認識した。

しかしながら。
未だに確認できていない人もいる。

ある人はもうかれこれ一年以上マスク越しのみのおつきあいだ。
一年もおつきあいしていると、しっかりとした相手の印象が定着していて、その印象の信頼感もついてきている。
この定着した印象が覆ってしまうのも嫌だったが、早くイメージ修正したい気持ちもあり、何とかマスクを外した姿を見れないものかと機会を伺っていた。

そして、ついにその機会が来た。
その人がふと、マスクを外すその口元を見て、あれ?と思った。

イメージ通りだったのだ。

なんとマスク越しに一年間培った印象通りの人だったのだ。
そんなこともあるのだと、逆に新鮮な驚きとともに、一致した喜びが、当たりを引いたかのような喜びが、こみ上げてきた。



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小さな喜びの積み重ねが大きな喜びを創っていくと信じています。ほんの小さな「クスッ」がどなたかの喜びのほんの一粒になったら、とても嬉しいなぁと思いながら創っています。