「部活もの」②︰くすぐる!⇒本能と共感性

物語には王道というものがあり、「部活もの」というジャンルはその強力なもののひとつだ。
そしてその大事なポイントの第一は、
・基本は「コミュニティ」×「青春」
ということである。

※王道とは︰
https://note.com/kawausowright/n/n79d8cae5c97e

※部活もの①「コミュニティ」×「青春」=面白い︰
https://note.com/kawausowright/n/n40624835c035

そして、部活ものにはまだ2つのポイントが残っている。それは……

・刺激するのは「基本欲求」と「共感性」
・効果は「問題を協力して解決する」ことによる達成感


今回はふたつめの、「基本欲求」と「共感性」について話してみよう。


まず、これらはそれぞれ、ポイント①である「コミュニティ」と「青春」が描かれることによって、刺激がはじまる。

そして「基本欲求」を刺激するとは、つまるところ、読者に快いと思ってもらうことだ。
そして「共感性」を刺激するとは、要するに、読者に納得してもらうことだ。
これらが行われることによって、読者は物語を読み進めたくなり、しかも、いちいち理解するために立ち止まったりしない。

あなたも、面白い物語を夢中になって一晩で読んでしまったことはないだろうか?

それは、その物語が、あなたの基本欲求と共感性を巧みにつっつき続けてくれたからに他ならない。

ともあれ、部活ものにおいて、「コミュニティへの参加とコミュニティの拡大」が描写される。
すると、読者の中にある本能ーー人間の基本的な欲望が、満足するのである。
何故なら、人間は古来から、他人と協力して問題を解決してきた社会的な動物だからだ。その染み付いた本能からは逃れられない。
そのため読者は、感情移入している主人公がコミュニティにうまく溶け込めたり、そのコミュニティの仲間が増えて、より難易度の高い課題を一緒に解決したりしたときに、我がことのように快いと感じるのである。

更には「共感性」だ。
いくら、キャラクターが読者の欲求を満足させるようなことをしていても、そこに説得力がなかったり、いきなりすぎたりすると、「???」となる。
あなたも、物語を読んでいて、主人公の言動に首を傾げたり、キャラクターの復讐の理由に納得できなかったり、突然のお涙頂戴に冷めてしまったり……そんなことがあるだろう。

これらは、そこに「共感性」が足りないから起こる。

それは、作者と読者が共通して経験している出来事だったり、人間として当然の感情だったり、経緯を踏まえれば疑うことなく了解・想像できるような理由だったりする。

「青春」というのは、そのような共感性の呼び水としてはかなり強力なものだ。
なにせ、読者として想定できるほとんど誰もが、何らかの形で青春時代を送っていたか、あるいは送っている最中だからだ。
加えて、物語の歴史の中で、「青春時代」を舞台にしたものは数多くあるから、読者はこの期間について、ほぼ何らかの知識を持っていることが約束されるのである。
……共感を覚えないわけがない。
そういうことで、青春時代を舞台とし、また「青春する」ことは、読者を物語にのめり込ませ、納得してもらうのに最適なのである。

「コミュニティ」の描写によって、基本的な本能を、「青春」の描写によって共感性を刺激する。
本来であればコミュニティへの参加からその成長期という物語は時間がかかり、飽きられてしまう。
だが、同時に青春による共感性があるから、読者は離れにくくなる。
結果として、ていねいに欲求を刺激し続けられるため、読者にとって満足感の高い作品に仕上がる、というわけである。

もし、あなたが「部活もの」についてもっと使いこなしたいと思うなら、「コミュニティ」で「本能」を、「青春」で「共感性」を刺激することを意識しよう。そして全体を通して、それがきちんとできているか、最終確認もしてみるといい。


・効果は「問題を協力して解決する」ことによる達成感

に続く……

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