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シリアスな展開の中にギャグシーンが挟まれる意味を考える

 例えばライバル同士のバトル、黒幕との舌戦、犯人との取引き、事故に巻き込まれた子供の救出。漫画やアニメなどでそういう展開がある時、ふいに差し挟まれるギャグがある。主人公がとぼけてみせたり、ありえないことを言ってみたり、いつまでもやるべきことをやらなかったり、ツッコまれるまでおかしなことをやめなかったり。
 その機能を考えたい。それはただ、なんとなくあるわけではないはずだ。なぜわざわざ、シリアスなシーンにギャグを入れるのか? そしてそれが成立するのか?

 ①飽きの防止
 同じ展開が続くのは飽きるものだ。特にシリアスシーンはずっと張り詰めていて静謐で、それこそふざける余地がなくいわば説明的である。ストーリーとはもちろん、それの観客がいて、そんな動かない展開を続けることで飽きてもらっては困る。だからそんなピンと張った糸をギャグシーンで揺らして、注目を集めるのである。そのためにある。

 ②展開の起伏
 似たようなことで、張り詰めた糸にたわみを作る。シリアスシーンにおいてはギャグは望まれていないから、それは大抵の場合は凹みとなる。物語は凸凹と起伏があることが望まれており、それが面白さに繋がる。それを前提とすれば、シリアスという展開の上昇を、ギャグで下降させることは道理である。

 ③印象の回復
 重要なのは、シリアスとは普通、真面目なシーンであるということである。そして真面目であるのなら、それはストーリーというエンタメにおいては印象が悪い。必要ではある。でも静かだし、なんか遊びがないし、説明的で面白くないと観客は思いがちなのだ。でもそこに、反対の印象を持つギャグを入れることで、幾分かマシになる。中和させられる。そういう、印象の操作のためにギャグを使うのだ。

 以上、シリアスに挟まれるギャグの機能を分析した。これについては、あくまでもシリアスシーンはシリアスな雰囲気が求められていることと、それでもエンタメとしてシリアスはマイナス要素であることを前提としている。
 漫画やアニメなどでこういう展開がある時、その作品自体がどのようなジャンルのものかということに左右されるはずだ。その上で、シリアスにわざわざギャグを入れなくてもいいということもあるだろうし、むしろギャグシーンにシリアスを挟むことで魅力が増すということもあるだろう。

 ともあれ1つの結論としては、シリアスなシーンにギャグを入れる意味合いとしては、飽きと起伏と印象をコントロールすることが挙げられる。

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