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イラスト指示書:イメージを伝えるための3ポイント

「イラスト指示書」というものがある。
これは、あるコンテンツにおいてイラストを直接仕上げられない人間が作るもので、その人間の頭の中にある「イメージ」を、専門の人間に伝えて具現化してもらうための資料である。

それが、実際難しい。

よくある形としては、どういった絵なのかということを、参考にしてもらいたい画像や設定などとともに資料としてまとめるものだ。

だが、頑張っていろいろ指定したのにイメージとぜんぜん違うものが上がってきたり、指示通りなのにどこか魅力のないイラストになってしまったり、失敗が多い。

イラストの構想と、その創作を別々の人間がやるのだから、上手くいかなくて当たり前なのである。
しかし、この役割分担が当たり前の業界では、それを上手くいかせなければいけない。
そのようなとき、私が個人的に気にしている3つのポイントがある。それは、

①「動き」が出るようなイラストを構想する
②「ビジュアル」を優先して伝える
③  参考資料の画像は、「1つの項目につき複数枚」使用する

これらだ。
①は、最終的なイラストのクオリティを気にしたポイントであり、責任は基本的に構想側にある。
動きのあるイラストは、それだけで魅力的である。
なぜなら、動きのあるものに人間は注目するからだ。あるいは、イラストは2次元であるため、動きによって3次元的な広がりを示すことで想像の余地が増すというのもある。
そのため、イラストの構想の段階で、人物や事物がどのような動きをしつつ、画面内に収まっているのかということをはっきりさせておく。

②は、当たり前のようだが、ついつい意識から外れてしまいそうになるポイントである。
前提として、イラスト指示書は、イラストを仕上げられない人間が作成する。すなわち、「自分が描かないものを、描いてもらうために作る」ものだ。だからつい、描くことにそれほど必要でないことを、情報として載せがちになってしまう。
例えば、キャラクターの仔細な設定であったり、世界観であったり、ストーリーであったり。
そしてまた、自分の中では当然となったイメージを伝えそこねるということも良くある。どういった構図か、時間帯はどうか、キャラクターはどこを見ているか、位置関係はどうなっているか……などなど。
頭の中のイメージは、きちんとアウトプットしなければ伝わらない。
だから総じて、「ビジュアル」化することを意識して、不必要なものや、不十分なものがないか確認するのである。

③は、イラストを依頼する相手によってはそこまで気にしなくともいいポイントである。
イラスト指示書と言うからには、当然、「例えばこんなふうです」という画像資料を添付することになる。
だが、それが1種類しかないと、指示された側としてはそれのみを頼りにするしかなくなってしまうのだ。
結果として、「こんなふうです」の「ふうです」に込められた、指示側のイメージ的な幅を読み取ることができず、画像資料と全く同じものを描かざるを得なくなったり、他の画像資料の影響を受けて、指示通りのイラストを描けなかったりする。
だから、ある項目、たとえば帽子であれば、「冬なので、こういった毛糸っぽい素材のものや、耳あて付きのファーが目立つものがいいかなと思います。また、こちらの、頂点にちょこんと毛玉がのっているようなデザインでも可愛らしいと思っています」など、イメージを伝えつつ、イラストを描く人間が発想しやすいように、いろいろな画像を添えるのだ。
これを、指示したいそれぞれの項目でやっていくことになる。

※ベテランのイラストレーターなら、その勘所を心得ているから、画像資料がそれほど多くなくとも(場合によっては文字だけでも!)、クオリティの高いものを上げてくれる。


以上が、イラスト指示書を作成する際の、個人的なポイントだ。

①「動き」が出るようなイラストを構想する
②「ビジュアル」を優先して伝える
③  参考資料の画像は、「1つの項目につき複数枚」使用する

自分でイラストを描くのならば、これほどの注意は必要ないのかも知れない。しかし、構想と創作を役割分担している以上、そのイメージの伝達には意識を割いても、しすぎるということはないだろう。

少なくとも私は、意識するようにしている。
何らかの理由でイラストを仕上げられず、別の人間に頼むとき。
反対に、誰かからイラストを頼まれたとき。

ぜひとも、上記3ポイントについて考え、確認し、より良いクリエイティブを発揮できるようになれば幸いである。


※このテーマに関する、ご意見・ご感想はなんなりとどうぞ。

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