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今回のおすすめ本 標野凪『終電前のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ』


みなさんこんばんは📚
今回おすすめするのは、標野凪『終電前のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ』(ポプラ文庫ピュアフル)という本です!

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 本作の主人公は福岡県の薬院通りにある『文月』を営む店主「文」。このお店のコンセプトは「三日月から満月の間の夜だけオープンする」というもので、彼女のもとには日常生活で悩みを抱えたお客が訪れていくのでした。作中では登場人物たちが別視点で再登場しています。また、目次にあるタイトルは、作中に実際登場してくるものとなります。どこで登場するのかワクワクしながら読んでみてください!


月夜のグリューワイン

 インテリアデザイナーとして独立して働く澤井日向子は、仕事に打ち込み依頼をこなしています。打ち合わせ先の会社からの帰る道、ご飯を買いにコンビニに立ち寄ろうとした際に、《おかえりまえのちょいごはん どうぞ》という小さな看板を見かけます。そして横には《本が読めて手紙が書ける店》という小さな文字が添えられています。しかし、その日日向子は立ち寄ることなくコンビニへ足を進めるのでした。
 文は日向子に、どのようなアドバイスを行うのでしょうか…。

森のカクテル

 婚活を進めているを唯は妹の萌とともにランチをしています。きっちりした性格の唯に対して、萌は行き当たりばったりな性格です。婚活がうまくいっていると考える唯はもうすぐ結婚ができることを期待して幸せを噛み締みしめてます。
 週末、未来の夫となる浩行とのデート。浩行は前に出ていくようなタイプではなく、ファッションについても無頓着で、基本的に唯がリードしています。プロポーズを期待している唯に対して、浩行はお店にあるお酒に興味を示しています。二人には結婚に対して温度差があるように感じられます。二人はお店に予約を入れて帰っていきます。
 二人の関係はどうなっていくのでしょうか…。

本とおさかなのスープ

 編集者の大城は『文月』を訪れ、文と気さくに会話を楽しんでいます。
 仕事先では同僚の三代がおすすめの本を紹介し合う(ビブリオバトルのようなものでしょうか)朝活に参加したという話が出ます。しかし、そこで紹介されたのは自己啓発本かビジネス書、実用書などがメインだったといいます。これは編集者である大城にとっては思うところがありますよね。
 大城は文との会話でどのような結論を出していくのでしょうか…。

池田飲みとしろくま

 福岡に住む坂口祐介は小学校の同窓会に参加し、東京に住む元カノである岡田千晴と再開しました。当時の出来事や不安な現況を話して会話は弾み、連絡先を交換します。東京に行く機会があった祐介は千晴と会う予定を作りますが、会社の都合で千晴とは会えませんでした。祐介は福岡に帰り『文月』に立ち寄るのでした。
 祐介はどのように現況の不安を解消していくのでしょうか…。

柚子と適燗

 映像制作やアプリ開発の会社に転職した平井は、転生前の会社で仲良かった友人である坂本の訃報を聞きます。定期的に三人組で会っていて、直近でも『文月』で会っていた坂本を亡くした平井は、もっと何か相談に乗ってあげられたのではないかと後悔します。
 一周忌が過ぎ、『文月』に訪れた平井は毎月二十三にちに開催される《ふみの日》に、十一月二十三日が合致した昨年に坂本が書いた《一年後に届く手紙》を受け取ります。
 後悔をする平井はこの手紙から何を感じるのでしょうか…。

スルメとてんとう虫

 会社の人事部で働く鈴音は、部署の雰囲気が心地いいと感じています。しかし、デザイン室の室長である萩野は勤務表を白紙で提出しており、後輩が確認作業をする羽目となっている場面に出会します。鈴音は後輩を連れて人事部に訪れ啖呵を切ります。
 変化していく社会・会社に対して、鈴音はどのようなアプローチを取っていくのでしょうか…。

バレエシューズとうすぎりショウガハイボール

 オフィス機器メーカーに勤務する莉絵は、職場先で出会った長谷部に好意を寄せています。しかし、長谷部が妙にお洒落であることから、パートナーの存在を疑う莉絵なのでした。これは残念なことに現実のもので、莉絵の心はわだかまりを抱きます。
 莉絵はこの後どのように過ごしていくのでしょうか…。

新茶と煮物

 百貨店で働く葵は母親や友人から結婚について聞かれることにうんざりしています。母親との反りが合わない葵は家を出てしばらく経っています。そんなある日、母親が救急車で運ばれたと聞き病院に駆けつけた葵はほっとして泣きそうになっています。その日の帰り道、葵は『文月』に立ち寄ることにします。
 葵は母親とどのような関係を構築していくのでしょうか…。

七月のみかづき

 主人公の文が『文月』をオープンするまでの経緯が描かれています。文は通信販売請負会社に勤めていましたが、心身ともに病んで行ってしまいます。また、ここでは父親との思い出が色濃く思い起こされています。文月の原点が明らかになります。
 これまで登場した人たちとの交流も描かれ、最後のまとめは心にじーんとくるものがありました。

みかづきレシピ

文さんの一言メモが付いているレシピになります。
レシピは
 ①武道の親子
 ②ちぢみほうれん草のネギ油かけ
 ③そら豆の春巻き
 ④柚子ごはん
 ⑤雛祭りの手毬寿司
 ⑥わが家の梅酒
 ⑦おいしいお茶のいれかた
 ⑧おさかなのスープ
の8品が収録されています。
個人的なおすすめは⑧おさかなのスープです🥣


読後感想

 本作は、「三日月から満月の間の夜だけオープンする」というコンセプトのお店『文月』を起点に物語が進行していきます。店主の文は眠たそうな雰囲気を持っているため、訪れたお客さんはどこかゆったりとした心地に変化しています。日々目まぐるしく活動していると、どうしても余裕がなくなってしまいます。そんな時、『文月』のように自然とスローペースになれる居場所があるといいなと思います。人との関係でストレスを感じることは確かです。しかし、癒されるのもまた人との関係だと思います。日々忙しなく生きている人に、心にゆとりとあたたかさを与えてくれる作品だと思います。

ぜひお手に取って読んでみてください☕️

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