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今回のおすすめ本 青山美智子『お探し物は図書室まで』


みなさんこんばんは📚
今回おすすめするのは、青山美智子『お探し物は図書室まで』という本です!
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 本作は各章ごとに「羽鳥コミュニティハウス」内にある図書室に悩みを抱えた方が訪れ、そこにいる司書小町さゆりによって本が紹介される流れになっています。そして羊毛フェルトでさゆりが作ったグッズ(本作表紙にある飛行機やカニなど)が付録として渡されます。また、この図書室には司書を目指す森永のぞみという子も在籍しており、ちゃんと物語にも関わっています。

一章 朋香 二十一歳 婦人服販売員

 朋香は総合スーパー内にある「エデン」というお店で婦人服を販売している店員さんです。しかし、自分の仕事に意義を感じられず、鬱屈した日々を過ごしています。そんなある日、お昼休憩に入る際に年配の女性客に呼び止められ、接客をすることになります。朋香は限られた休憩時間を失われていることもあり、おざなりな対応をしてしまい、これが後日トラブルのもととなってしまいます。
 その後ご飯を食べているところへ桐山という眼鏡売り場に勤務している青年が一緒にご飯を食べにきます。桐山は転職して現在の職場に来ていることから、朋香は転職に関する話を問いかけ、桐山からエクセルなどパソコン関係の知識・技能は持っていた方がいいとアドバイスをもらいます。そして地域住民向けのパソコン教室があると教えてもらい、その夜「羽鳥コミュニティハウス」で開催されているパソコン教室に申し込みます。
 図書室でさゆりに紹介された本は、エクセル関係の本と『ぐりとぐら』。そしてフライパンの形をした羊毛フェルトを付録としてもらいます。
 朋香は図書室で借りた本から何を学んでいくのでしょうか。

二章 諒 三十五歳 家具メーカー経理部

 諒は家具メーカーで経理を担当しており、十歳年下の恋人比奈と良好な関係を築いています。諒は高校生の頃にアンティークのティースプーンに出会った時から、アンティーク商品を営むお店を持ちたいと思っています。しかし、「いつか」と思いながらも何か行動しているわけではありません。
 そんなとき比奈がパソコン教室に行きたいといい、諒も一緒に「羽鳥コミュニティハウス」に向かいます。諒は比奈がパソコン教室後に講師と話をしている間、図書室に寄って企業・経営関係の本をのぞみに聞き、レファレンスコーナーに案内されています。
 図書室でさゆりに紹介された本は、企業・経営関係の本と『英国王立園芸協会とたのしむ 植物のふしぎ』。そして茶色い体に黒い縞で横たわって眠るキジトラ猫の羊毛フェルトを付録としてもらいます。
 諒は図書室で借りた本から何を学んでいくのでしょうか。

三章 夏美 四十歳 元雑誌編集者

 夏美は万有社という出版社資料部に勤務する元雑誌編集者です。夏美は『Mila(ミラ)』という雑誌編集を行なっていましたが、出産してから資料部に異動することになります。2年後、夏美は育児を理由に好きだった編集の仕事を奪われたと感じ、夫の脩ニは育児を積極的にしているものの、週末に家事・育児が夏美のワンオペになることに不満を抱えています。
 夏美は双葉が通うことになる小学校に併設されているコミュニティハウスがあることを園長先生から聞いたことを思い出し、双葉とお散歩がてら向かうことになります。
 図書室でさゆりに紹介された本は、絵本三冊と『月のとびら』。そして地球の羊毛フェルトを付録としてもらいます。
 夏美は図書室で借りた本から何を学んでいくのでしょうか。

四章 浩弥 三十歳 ニート

 浩弥はイラストを仕事にしようと思い高校卒業後にデザイン学校に通うものの、就職で躓きバイトをしても続かずにニートの生活を送っています。
 そんなとき、母親に頼まれて「羽鳥コミュニティハウス」に向かうことになります。
 図書室でさゆりに紹介された本は、『ビジュアル 進化の記録 ダーウィンたちの見た世界』。そして小さな飛行機の羊毛フェルトを付録としてもらいます。本章はこれまでと違い、本を借りるのではなく浩弥は毎日図書室に来て紹介された本を読むことにしています。
 浩弥は図書室で紹介された本から何を学んでいくのでしょうか。

五章 正雄 六十五歳 定年退職

 正雄は、呉宮堂はというハニードームというお菓子を売る会社に勤めていましたが、昨年定年退職をしています。これといった趣味もなく、定年退職した後は社会から弾かれてしまったような感覚を覚えます。
 そんなとき、妻の依子にコミュニティハウスで囲碁教室が開かれているから参加することをお勧めされ、正雄は「羽鳥コミュニティハウス」に向かうことになります。
 囲碁教室の帰り、図書室を見かけ立ち寄ることにします。図書室でさゆりに紹介された本は、囲碁の本三冊と『げんげと蛙』。そして小さな赤いカニの羊毛フェルトを付録としてもらいます。
 正雄は図書室で紹介された本から何を学んでいくのでしょうか。

読後感想

 以前紹介した青山美智子さんの作品と同様、本作も「人とのご縁」が感じられるものとなっています。作中では各章で意外な人物たちが錯綜しており、現実世界でも自分が気がつかなかっただけでさまざまな人と交錯しているかもしれないと思わされます。しかし、人と繋がりご縁を呼び込むためには自分が行動することが不可欠となります。作中では司書であるさゆりが本を紹介していますが、これはあくまできっかけにすぎません。そこから何を感じ、何を学んでいくかは各人に委ねられています。人生には自分にはどうにもできないことが多くあると思います。しかし、それでも自分に変えられる部分は残っているはずです。変えられないものではなく、変えられるものに目を向けてみることで開けてくる道がきっとあるのではないでしょうか。



是非お手に取って読んでみてください☕

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