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今回のおすすめ本 標野凪『ネコシェフと海辺のお店』

みなさんこんばんは📚
今回おすすめするのは、標野凪『ネコシェフと海辺のお店』という本です!

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 本作の主人公はサバトラネコのネコシェフ。夢か現か、悩みを抱えた人の前に現れて料理を振る舞っていきます。その際に俳句を一句詠んでいることもネコシェフの特徴です。


第一章 ネコにも居場所

 専業主婦の西脇千晶は、高校時代からの親友雛菊が仕事一筋で生きている現状と自分の生きてきた現状を比べ、「これでよかったのか」と思い悩みます。そんな千晶が「どうしたらいいのかわからない……」とつぶやいた直後、ネコシェフが目の前に現れるのでした。どんな料理が振る舞われるのか気になるところです。
 千晶はどのように悩みを解決していくのでしょうか…。

第二章 ネコにもご馳走

 佐々木単衣(『伝言猫が雪の山荘にいます』の登場した人と同一人物でしょうか)は、フィンランド語を長年学習していますが、いまいち成果が出せずにいます。そして単衣は不倫関係の愛人側に立っている人生を歩んできたことから、相手から一番に愛されない自分に嫌気がさしています(ここに関しては共感できないところですが、自業自得と切り捨ててしまうのも複雑な気分になります)。そんな単衣が「こんな自分からもう抜け出したい……」とつぶやいた直後、ネコシェフが目の前に現れるのでした。どんな料理が振る舞われるのか気になるところです。
 単衣は自分を変えていくことができるのでしょうか…。

第三章 ネコにも繋がり

 西脇梨央(第一話に出てきた千晶の娘)は高校生で、周囲の空気を読む生活に疲れてきています。家族との関係や同級生との関係など、この時期の人間関係は渦中にいる人にとってはとても大きな悩みだと思います。そんな梨央が他人の目を気にしないで生きていきたいと思い、「そうやって開き直れたらいいのに」とつぶやいた直後、ネコシェフが目の前に現れるのでした。どんな料理が振る舞われるのか気になるところです。
 梨央はどのように行動していくのでしょうか…。

第四章 ネコにも休息

 西脇比呂乃(第一話に出てきた千晶の母)はこれまでの自分の人生と娘のことで思い悩んでいます。娘の千晶がまだ小学五年生だった頃にネコシェフと出会ったことを思い出します。それは子育てや家族との関係に行き詰まっていた時に夢の世界に逃げ込みたいと思い、「このまま寝込んじゃいたい」とつぶやいた直後、ネコシェフが目の前に現れたのでした。どんな料理が振る舞われるのか気になるところです。
 比呂乃は悩みとどう向き合っていくのでしょうか…。

第五章 ネコはこの道を歩く

 一ノ宮雛菊(第一話に出てきた千晶の親友)はデザイン事務所で働いていますが、周囲が独立や辞職していく中で今後の自分の進みたい道を見出せずにいます。とある依頼された仕事の入稿が終わった後、デザインの変更を申し込まれた雛菊は苛立ちながらも取り組むことを決意し、「〆切に間に合うだろうか……」とつぶやいた直後、ネコシェフが目の前に現れたのでした。どんな料理が振る舞われるのか気になるところです。
 雛菊は自分の進路を見出せるのでしょうか…。

エピローグ

 本書を通して伝えたい大事な一節が記されています。

読後感想

 本作は、悩みを抱えて立ち止まった五人の登場人物たちの前にネコシェフが現れ、そこでのやり取りが登場人物たちの言動を変えていきます。ここで感じることは、「自分の歩みたい道は自分が知っている」ということです。しかし、その道は自分でわからなくなっていることが多いのではないでしょうか。これまで頑張ってきたのに、ある日ふと何のために頑張ってきたのかわからなくなって立ち止まってしまうことは僕自身経験があります。そんな時は自分が歩んできた道、やってきたことが無意味だったように思えてしまい、この先の不安や悩みを頭の中でジャグリングして動けなくなってしまいます。そんなときは本作で登場人物たちがネコシェフと話したように、他者と会話をすることが打開する一手となるのかもしれません。もし話す人がいなければ紙に書いたり、架空の相談相手を作り出したり(ぬいぐるみや動植物でもいいと思います)することで一旦外部に不安や悩みを放出してみると少し気が楽になると思います。この「少し気が楽になる」ということが、行き詰まって動けなくなった時には大きな手助けになります。そして他者が不安や悩みを抱えて動けなくなっていた時、その人のそばにいるというだけで何より強いメッセージになります。つい解決することだけに注意が行きそうになりますが、現実的に解決できるものは多くはないと思います(解決できるなら悩みはしないでしょう)。悩みを解決できずに立ち止まってしまう自分を責めたり、不安になって動けない自分を情けなく思ったりします。そんな時は無理に行動を起こすのではなく、なすがままにして休むことも大事だと思います。結局は「なんとかなる」と信じて。

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