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今回のおすすめ本 標野凪『終電前のちょいご飯 薬院文月のみかづきレシピ』

みなさんこんばんは📚
今回おすすめするのは、標野凪『終電前のちょいご飯 薬院文月のみちくさレシピ』という本です!

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 本作の主人公は前作同様、福岡県の薬院通りにある『文月』を営む店主「文」。このお店のコンセプトは「三日月から満月の間の夜だけオープンする」というもので、彼女のもとには日常生活で悩みを抱えたお客が訪れていくのでした。作中では各話の登場人物たちや前作の登場人物たちが再登場しています。


方向音痴のシロツメクサ

 様々な商品開発を行う研究所で働く悠那は、実験に追われる日々を送る中でなかなか思い通りの成果が出せないでいます。「自分以外の優秀な人だったらもっとうまくできているかもしれない」と、自己嫌悪を抱いて帰路につこうとしたとき、シロツメクサが目に止まり誘われるかのようについていきます。悠那が気づいた時には見覚えのない場所まで歩いてしまい、困ったところで目に入ったのは《迷い道のちょいごはん どうぞ》という小さな看板。そして横には《本が読めて手紙が書ける店》という小さな文字が添えられてあり、『文月』に立ち寄ることにしたのでした。
 悠那はどのように悩みを解決していくのでしょうか…。

三つ違いのオフサイド

 IT企業に勤める筒井奈津子は、3歳年下の彼氏中山隼人と付き合って三ヶ月、半同棲生活を送っています。当初は「年上の彼女」として振る舞うことを演じていた奈津子でしたが、三ヶ月経っている現在この関係に疑問を抱いて生活を送っています。これは与えられた役割を果たすことが当たり前になっている現状と、自分が思い描いている理想の生活にズレが生じているからでしょう。そんな鬱屈した日々を送る中、ふと《ひとり時間のちょいごはん どうぞ》という看板が目に止まり、『文月』に立ち寄ることにしたのでした。
 奈津子は隼人との関係をどのように進展させていくのでしょうか…。

二年目のてんとう虫

 人事部で働く水科は先輩である鈴音に好意を寄せていますが、いまいち関係が縮まらずにいます。働き方改革の煽りを受け、社内では託児ルームが創設されるなど少しずつ変革が訪れています。しかし、上司はこうした変革に抵抗感を持っているようでなかなか理解が得られない状況となっています。また、水科は一年前に『文月』で書いた手紙のことを思い出し、今後について思いを馳せています。
 水科は鈴音や上司にどのようにアプローチしていくのでしょうか…。

ルバーブソーダの夏休み

 三崎茅耶は高校に通っていますが、クラスにはいけずに保健室で日々を過ごす状態が長いこと続いています。母親は環境が変わることで茅耶がクラスに通えることを期待して過ごしてきましたが、一向に改善されないことに焦燥感を募らせているように見えます。そんな折、「しろくまサロン」でカウンセリングを受けた二人ですが、これまで通りのアドバイスをされるだけでした。診察された帰り道に《がんばりすぎないちょいごはん どうぞ》という看板がある『文月』で二人はご飯を食べていくことにしたのでした。
 茅耶は自分なりの答えを見つけて踏み出せるのでしょうか…。

フレッシュサラダの町案内

 不動産会社に勤める高槻は、忙しく営業を行なっています。妻の梢は三宅進という料理研究家に傾倒し、それは日々の食生活に影響を及ぼしています。そんなある日、三宅進のトークショーに参加した二人は大事なものに気づくこととなります。
 高槻夫婦はこのイベントから何を感じるのでしょうか…。

芍薬と目玉焼き

 古希を迎えた前嶋は、料理教室に通い始めたもの苦戦しています。料理には「適当」がついてまわりますが、この感覚は料理をしていく中で自分なりの塩梅を見つけていく必要があります。長年料理をしてこなかった人にとって、料理は未知の魔物のように感じるのでしょうか。
 これまでのお話とは少し違った切り口で展開されていく一節となります。

食べる菜の花、見る菜の花

 仕事一筋で生きてきた梓は、高校時代の親友である遥香のいるロンドンに行くために英語学習を行っています。そんな梓ですが、カフェで学習していた際に親子と妊婦三人組の会話を聞いたり、子育てしている方の話を聞いて自分の生きてきた道が正しかったのか不安になっています。
 梓は自分なりの生き方を見出せるのでしょうか…。

黒猫と三日月

 『文月』店主である文の視点から綴られた一節となります。前作では文がお店を開いた顛末が明らかにされていましたが、今回は本作で訪れた人たちとの日常をまとめています。ほのぼのとしている文が、悩みながらも日々生きていく様子や、北海道にいる奏(『本のない、絵本屋クッタラ おいしいスープ、置いてます。』の主人公)との交流も描かれています。

みかづきレシピ

 文さんの一言メモが付いているレシピになります。
レシピは
   ①ラベンダーのお酒
   ②ラベンダーのお茶
 ③とうもろこしだけの天ぷら
 ④ルバーブソーダ
 ⑤河内晩柑とカッテージチーズのフレッシュサラダ
 ⑥梅と大葉の揚げワンタン
 ⑦菜の花の白和え
 ⑧ふみこさんの鉄のフライパンで作る目玉焼き
 ⑨ディルとたまごのポテトサラダ
の9品が収録されています。個人的なおすすめは⑥梅と大葉の揚げワンタンです🥣

読後感想

 本作は、前作同様に「三日月から満月の間の夜だけオープンする」というコンセプトのお店『文月』を起点に物語が進行していきます。店主の文は眠たそうな雰囲気を持っているため、訪れたお客さんはどこかゆったりとした心地に変化しています。日々目まぐるしく活動していると、どうしても余裕がなくなってしまいます。そんな時、『文月』のように自然とスローペースになれる居場所があるといいなと思います。人との関係でストレスを感じることは確かです。しかし、癒されるのもまた人との関係だと思います。日々忙しなく生きている人に、心にゆとりとあたたかさを与えてくれる作品だと思います。ぜひお手に取って読んでみてください!

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