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今回のおすすめ本 標野凪『本のない、絵本屋クッタラ おいしいスープ、置いてます。』

みなさんこんばんは📚
今回おすすめするのは、標野凪『本のない、絵本屋クッタラ おいしいスープ、置いてます。』という本です!

 本作の主人公は北海道札幌市に『絵本屋クッタラ』を営む店主「広田奏」と友人の「八木」。このお店のコンセプトは「本を置かない本屋」で、お客に合わせて絵本を見繕います。彼らのもとには日常生活で悩みを抱えたお客が訪れていき、奏はお客の要望に合う絵本を選んでいくのでした。

お月様のスープ

 病により親友を亡くした敦子は、生前に親友の「もう一度二人で旅に出たい」という願いを体に障るとして止めてしまったことを後悔しています。敦子は『絵本屋クッタラ』に訪れ、『曇っている心が晴れやかになる本』を要望します。
 奏は「生前親友のために何かできたことはなかったのか」と後悔する敦子に、どのような絵本を選ぶのでしょうか…。

心が丸くなるスープ

 人間関係がうまく築けない、偏食、落ち着きがないなどの個性をもつ娘「紬」の母親ゆう。現在紬は幼稚園児であるからまだいいものの、ゆうは今後人間関係がうまく構築できないことによるいじめなどのトラブルを心配しています。ゆうは『絵本屋クッタラ』に訪れ、『紬が興味を持ち、他の子ともうまくやっていけるようになるような本』を要望します。
 奏は「娘が周囲とうまく馴染めない」と心配するゆうに、どのような絵本を選ぶのでしょうか…。

さかさまのスープ

 吹奏楽部の人間関係に悩む杏奈。新しい顧問の意向によって、部長が男子一名から男女一名ずつという新体制になり、選挙の結果杏奈が選ばれます。しかし、次第にもう一人の部長に指導権が移動していきます。また、フルートも新入生に占領されたと感じていきます。さらには顧問への不信も募っていきます。
 奏は「自身の考えのみで物事を捉えてしまう」杏奈に、どのような絵本を選ぶのでしょうか…。

不格好なスープ

 建築学科の学生佐久間蛍。周囲にいる同期たちが粒揃いの才覚を持っており、自身と比較して落ち込む蛍。『絵本屋クッタラ』に訪れ、課題のスケッチを行っています。
 奏は「周囲と比較してしまう」蛍に、どのような絵本を選ぶのでしょうか…。

誰かのためのスープ

 イラストレーターの仕事をする香菜子は色調や構図の参考にするために絵本を求めて『絵本屋クッタラ』に訪れます。香菜子は店に置いてある絵本の写真をカシャカシャ撮っていきます。著作権を無視して写真を撮り、絵本の中身に全く興味を示さない香菜子に対して奏は呆れています。
 奏は「丁寧に絵を描くことをやめ、効率を重視する」香菜子に、どのような絵本を選ぶのでしょうか…。

ありがとさんのスープ

 本話では、お客ではなく共同経営者である「八木」とのお話もなっています。奏が北海道にお店を構えた経緯や寒さが苦手なのにも関わらず北海道に留まっている理由などが明かされます。


読後感想

 本作は「本のない絵本屋」というコンセプトのお店が舞台となっていますが、現実にもこんなお店があったらいいなと思いました。小説などでも代替できるのかもしれませんが、絵本のようにさっくり読めるものの方がお勧めされた際に読んでみようと思えるのではないでしょうか。日々の悩みが募っている現代人にとって、本を手に取ってじっくり読むということが中々難しくなってきていると感じます。絵本は子ども向けのものというイメージがありますが、内容はかなり示唆に富んでいるものが多いと感じます。また、同じお話を題材にしていても、絵のタッチや構成によって顔を変えているところも魅力となります。社会に適応するためには子どもの頃に持っていた淡い期待をすり減らしていくことが必要なのは確かだと思います。子どもの頃に描いていた大抵の理想は現実にならないことが多いですから。しかし、その中でも無くしてはいけない大切な何かがあると思います。それは個々人によって違うものではありますが、自分が持っていたいものを見直すいい契機になる一冊だと思いました。

ぜひお手に取って読んでみてください☕️

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