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蝶海上要塞まくるす 〜 映画『パピヨン』と、現代的考察

 先週の日曜日。CS「ムービーチャンネル」で、映画『パピヨン』(1973年)が放送されていたので、録画をした。

 当時すでに大御所だったスティーブ・マックイーンと新進気鋭のダスティン・ホフマン主演の、「脱獄もの」映画。
 俺自身は45年以上前から名前は知っていながらも未見だったのだが、かねてより女房が面白いと言っており、かつ我ら夫婦が大好きな脱獄ものだというので、いずれ観たいと思っていたため、渡りに船だったわけだ。

 で、当日つまり先週日曜日夜に録画を後追いで観てたのだけど、あまりに長くてかつマックイーン作品としては展開が地味なので後半部で俺は挫折。そんなわけでこの悪天候の昼、巣ごもりの中で二人してサッポロ一番塩ラーメンをすすりながら、残りを観た。

 いやあ、凄い作品だった。

 ネタバレを避けながら説明すれば、20世紀の前半に無実の罪で当時のフランス領ギアナの離島に投獄された主人公(マックイーン)が何十年もの歳月の中で何度もなんども脱獄を試みるという物語なのだが、つまるところ、
「人間の自由」
 を謳い上げる作品だ。
 同じマックイーン主演の大傑作『大脱走』の痛快で華麗な作風とは違い、地味で陰惨な描写が多いのだが、それでもなんでもともかくも、
「不屈の闘志」
 を描いていて、涙ちょちょぎれた次第だ。

 それでまたダスティン・ホフマン演じるキャラが犯罪者でありながらも現実的で要領がよくて、それこそドン・キホーテとサンチョ・パンサ的で、どちらが良い/悪いではない描き方がまたいいのだな。

 さて、『パピヨン』の製作年は、時あたかもベトナム戦争の終期。

 同じ年の名作といえば『スティング』や『追憶』という超が付く作品たちがあるわけだが、ことにこのパピヨンや追憶などは静かにそうした頃のアメリカへプロテストしているところが見事だと思う。

 ハリウッド映画、そしてもっと大きく言えば芸術そして合衆国の「自由への希求」の素晴らしさ。

「負けない、自由」

 このご時世、我々はいろいろと考え行動していかなけれはならないが、心の自由まで“自粛”してはいけないと、『パピヨン』を観て、あらためて気持ちを新たにした次第だ。 

 春が来ない冬は無い。

 まだまだ苦しい時期は続くが、さあ我々も、陽光にはばたける翼を信じていこう。
 チョウチョ(パピヨン)のように。

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