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田島列島さんは、主人公と一緒に成長をしているのかもしれないなあ

 数年前だっけかな。
 田島列島さんの「子どもはわかってあげない」を読んだのは。
 告白シーンに、40半ばにしてキュンキュンしたのは。
 夫と「きゃー胸が苦しい~!」「きゃー門司くんもサクタさんも可愛い!」って騒いだのは。

 早い段階で書いておきたいのは、「決して恋愛漫画ではない」。
 親とか大人の在り方について、考えさせられる。

 それがすごーーく軽いタッチなので、全然深刻な雰囲気にならない。

 軽いタッチは絵の描き方にまで表れている。
 笑える部分もたくさんあるし、恋愛の要素に関しては全然感傷的でもなければ、生々しくもない。なんなら切なさすらない。かといって、サバサバした感じを売りにしているわけでもない。
 どこまでも日常のトーンなんだけど、本当はドロドロ描こうと思えば、いくらでもドロドロになる内容。

 それは、今回読んだ「水は海に向かって流れる」も同じだった。
 この前3巻が出て、やっと読んだ。3巻で終わり。
 やっぱり内容はドロドロしても良いものなのに、すごくアッサリ描かれている。登場人物たちの心の中は、こちらの共感も呼ぶ。激しいものはないんだよなあ。そういうものなんじゃないだろうか。意外とリアリティーを追求しているのかもしれない。

 今回の「水は海に向かって流れる」は、怒りをテーマにしていたような印象を持った。
 憎しみとか恨みみたいなものは本当はあるけど、怒りを表出できないでいるのは大人のせいなんだろうなあと思わされる。ただ、煮えたぎっているものが常に腹の中にあるわけでもなくて。日々、どうしたもんかなあと持て余す感情が実は「怒り」で、それが表れる瞬間は唐突だ。唐突だし、読者が勝手に切なく思う。勝手に苦しくなる。
 田島列島さんはとにかく、描きすぎないし、書きすぎない。私はそれがとても好み!!

 男女間の生々しさとか、感傷とか、繊細に描かれるのはちょっと苦手なのだ。遠回しにそっと描いてくれるのが心地良い。

 私は自分自身に関しても、どこかで茶化して、どこかで笑いに変える。ドロドロできない。ドロドロのシチュエーションでも、心は冷めていて白けていたりする。そういうのが好きな人だっているんだ。って、仲間を見つけた気分で嬉しい。

 そして田島列島さんの漫画でいつも、可愛くて良いなーと思うのが、告白シーン。他のマンガにはない、唯一無二の告白の仕方や台詞がいちいち可愛い。

 今回の「水は海に向かって流れる」で、「子どもはわかってあげない」の門司くんとサクタさんの告白シーンのように良かったとしたら、泉谷さんの告白シーン。すっごく可愛い。
 榊さんは大人ぶっている子供なので、その悟ったフリをしている彼女が、私には終始ちょっとだけしんどい。泉谷さんの方が上手くいってほしかったなあと思うけど、多分それだと、きっと田島列島さんが、「子どもはわかってあげない」のままなのだ。
 なんかわからないけど、田島列島さんも登場人物も、作品を追うごとに成長しているように思えてしまう。
 大人ってなんだ。自分より若い人や幼い人たち=子どもたちに対してどのように振舞えば良いのか。主人公である子どもたちを取り巻く環境や言動にヒントがたくさん隠されている。
 だから次の作品も、またとっても楽しみだ。

 あとね、私は藤浪さんが好きだった。ははは。
 それだけ書いてもわからないですよね。ははは!

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