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【書評】学校教員必読〜『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治)

この本も今年ずいぶん話題になり、気になっていました。読んでみて、「あーこれは我々は読まなきゃだめなやつだ」と思いました。『ケーキの切れない非行少年たち』です。著者は宮口幸治さん。

※書評一覧の目次はこちら

1、内容・あらすじ

児童精神科医である宮口さんは、ある非行少年に対して、治療のために認知行動療法に基づいたワークブックを使いました。しかしその少年は知的ハンディを持っていたために認知機能(見る力、聞く力、想像する力)が弱く、ワークブック自体が理解できていませんでした。

このような子たちの支援をどうしたらいいか、ヒントを得るために宮口さんは三重県にある医療少年院に赴任します。

そこで出会った少年たちもまた認知機能が弱く、ケーキを3等分することもできませんでした。

多くの非行少年たちは、世の中のことすべてが歪んで見えている可能性がある。そのことに気づいた宮口さんは、困っている少年たちを学校・社会生活で困らないように導くメソッドを提唱します。

2、私の感想

タイトルから、ごく一部の特殊な非行少年たちの話かと思いましたが、そうではありませんでした。「あるある!」と思いながら読みました。

私が普段、現場でぼんやり考えていたことを理論立ててズバッと文章化してくれたような感じです。

キーワードは「認知機能の弱さ」「軽度の知的障害=境界知能」です。こういう子たちのしんどさが見逃されてしまっていて、それが非行にもつながってしまう、というのが筆者の主張です。

読んでいる最中、今まで関わってきた何人もの生徒の顔が浮かんできました。今現在関わっている子の顔も何人か。

いるのです、高校生でもなかなか漢字を覚えられないという生徒が。その理由がわかった気がします。

私たちが「やる気のないやつだな」と断じてしまっている生徒の中にも、こういう子がかなりの割合でいるのではないかと思いました。

こういう子たちに対して「子どものいいところを見つけて褒める」「話を聞いてあげる」「自尊感情を上げる」は根本的な解決にはならない、というのはとても痛い指摘です。

この本を読んで、子どもたちを見る目が変わりました。さっそく、筆者が提唱している「コグトレ」を試してみようと思います。

3、こんな人におススメ

・学校教員
絶対に読むべきです。目の前の子どもたちが、この本に書かれていることに該当している可能性があります。

・勉強がしんどいと感じている人
こういう人はそもそも本を読まないのかもしれませんが……

・小学生以上の子どもを持つ方
この本に書かれている知識を持っておいて損はないかと思います。



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