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【書評】アルコール依存者のリアルな手記〜『上を向いてアルコール』小田嶋隆

アルコール依存症を脱出したコラムニスト・小田嶋隆さんの手記です。

一度聞いたら忘れらない書名ですが、中身も、ものすごいインパクトと説得力があります。

※書評の目次一覧はこちらです

1、内容

20代の終わりから30代にかけて「アル中」だった筆者。

医者から「40で酒乱、50で人格崩壊、60で死にますよ」という宣告を受けた著者は、その後20年間断酒を続けます。

「アルコール依存は治らない。断酒中のアル中者として、断酒を一日延ばしに続けることはできるかもしれないが、多くの患者は再び転げ落ちる」

と言われる中で、なぜ筆者は踏みとどまることができているのか、そもそもなぜアルコール依存症になったのか、酒をやめるとはどういうことか……。

赤裸々に、淡々と語られます。

2、私の感想

私は本を読みながら線を引いてページの角を折るのですが、この本に関しては線だらけになりました。

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まず、「アルコール依存は治らない」ということが衝撃的でした。治るのかと思っていました……。

ほとんど全部印象に残っているのですが、特に以下の3つが印象に残っています。

①依存体質の人間は、チョコレートにだって依存するし、納豆にだって依存する。

依存物質があるのではなくて、依存体質があるんだそうです。たまたまアルコールだったというだけで、依存する人は何にでも依存してしまうという……。なるほど。

②アルコール依存者が酒をやめるということは、生活のプランニングを組み替えるということで、それは知性のない人間にはできない。

これは、ダイエットなんかの習慣化をする時も同じことだな、と思いました。たしかに、生活スケジュールを組み直すのものすごくしんどい作業です。

③LINEやSNSなどのコミュニケーション依存は、アルコール依存に代わる新たな脅威だ。
後半、このSNS依存についての考察が書かれています。この部分が説得力満点。現代人はみんなコミュニケーション依存症なのかもしれません。

PCだったりスマホだったりをウチに忘れて一日過ごすときのあの心細さっていうのは、酒浸りだった時代に、アルコールを摂取できずにいた時のあのなんとも言えない焦燥感と、実感としてはほとんど同じだったりします。

他にも、筆者が参加していた断酒会での、ヨシュアくんという青年のエピソードがとても怖いです。

「酒をやめるということは、4LDKの中の2部屋だけで暮らしているようなもの」
の比喩も秀逸です。

さすがコラムニスト。

3、こんな人にオススメ

・未成年の人
絶対に読んだ方がいいです。お酒との付き合い方を考えるきっかけになるでしょう。そして、できれば飲まないに越したことはない、ということもわかると思います。

・お酒を飲む人
これはもう、言うまでもありません。アルコール依存の予備軍は約300万人いるんだそうです。

・お酒を飲まない人
実は私は全く飲めないので依存しようもないのですが、お酒以外のものに依存する可能性はあるよな、なんて思ってしまいました。

もうすぐ送別会シーズンでお酒を飲む機会が増えることでしょう。ぜひ読んでみたらいいと思います。

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