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【書評】アラサー未婚女子の葛藤と行く末〜『自転しながら公転する』(山本文緒)

恋愛小説の名手として名高い山本文緒さんの『自転しながら公転する』を読みました。本屋大賞ノミネート作品です。ちょっと具合が悪くなるくらいに小説の世界に引き込まれてしまいました。

※書評一覧の目次はこちら

1、内容・あらすじ

東京で働いていた32歳の与野都。

更年期障害になった母親の看病のために実家に戻り、近所のアウトレットモール内のアパレルショップで契約社員として働いています。

母の看病、ショップ内部のゴタゴタ、正社員登用への不安などで心身ともに不安定な毎日。

そんな時、同じモール内にある寿司屋の店員、貫一と知り合います。タイプではない気がしながらも、都は貫一と付き合うことに。

貫一は自然体で優しく、都はのめり込んでいきますが、今ひとつ信じ切れず、そして経済的に不安定。

貫一と結婚していいのかどうか迷いながらも付き合いを続けていくうちに、思いがけない出来事から彼の過去が明らかになり──。

2、私の感想

ものすごくリアルな小説でした。地方のショッピングモールの裏側も、恋愛や結婚がうまくいかない30代女性の葛藤も、老いた親の介護がのしかかるしんどさも、全てがリアルでした。

アラサー未婚女子が直面しそうなことが全部書いてある感じです。「どこかの誰かが同じ状況にいる」と思えて仕方がありませんでした。

私はアラサーでも未婚女子でもありませんが、読んでいると都の苦しみに同調してメンタルがやられるほど、物語に力があります。

特に私はアパレル内部のゴタゴタに気分が悪くなりました。こんなお店ばかりではないんでしょうが……。

なお、印象的なこのタイトルは貫一が都に言ったセリフに由来します。「上手いことを言う!」と膝をたたきました。作品をよく表しています。

私も毎日自転しながら公転しています……。

描き方は全く違いますが、婚活を描いた辻村深月さんの『傲慢と善良』をちょっと連想しました。

3、こんな人にオススメ

・30代以上の方
男女問わず「自転&公転」の度合いが強い人ほど、作品に入り込めると思います。

・未婚の女性
きっと都や友人たちの葛藤が手に取るようにわかるのではないでしょうか。

・アパレル関係にお勤めの方
「そうそう、まさにこんな感じ!」と思うのでしょうか。ぜひ感想が聞きたいです。

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