【書評】悲願を受け継ぐ高校球児のお話~『夏の祈りは』(須賀しのぶ)
これは、私が去年読んだ中で一番面白かった本です。(去年出版されたわけではありません)
高校野球を描いた傑作、『夏の祈りは』。作者は最近注目の須賀しのぶさん。
ハラハラドキドキ、ウルウルの作品でした!
1、あらすじ・ストーリー
埼玉県の公立高校、北園高校野球部。県大会準優勝が今までの最高成績。
つまり、甲子園出場まであと一歩のところで涙を飲んできた。文武両道が校訓で、いつも強豪私立高校にやられている。
そんな北園高校を舞台に、5つのストーリーが語られます。このストーリーは年代記になっています。
第1話目の昭和63年から、最終第5話の平成29年まで、各年代の北園高校野球部員たちが、それぞれの時代で「県大会優勝、甲子園出場」という悲願を果たすべく奮闘する……という構成です。
最終話の主人公たちは「ハズレ」とバカにされ続けてきた世代。
果たして、北園高校の悲願は叶うのか……。
2、私の感想
私はこの本を喫茶店で読み始めたのですが、面白すぎて、読み終わるまで喫茶店を出られませんでした。
特に最終話の、「逆転の北園」と呼ばれるようになってからの快進撃と言ったらもう……。しびれました。
手に汗を握りながら読みました。本当に試合を見ているようでした。
この小説のポイントは、「人」に焦点が当たっている点だと思います。私は高校の現場にいて、野球部の部員も監督も間近で見ているので、「あるわあるわ、こういう話」とうなずきまくりでした。
何かと口を出してくるうるさいOB会長にウンザリするキャプテン。
鳴り物入りで入部したのに故障してしまい、人知れず苦しむ新入生。
相方が退部してたった一人になり、悩みながら仕事をこなすマネージャー。
期待を背負い、母校に監督として帰ってきたかつての中心選手。
そして、ハズレと言われて、素質ある下級生に軽く見られる上級生。
高校野球に関わっている「人」の、様々なドラマが語られます。そして、決していいことばかりではなかった北園高校野球部が、最終話で報われます。
3、こんな人におススメ
・今、高校野球に関わっている人
いうまでもありません。自分たちと重ね合わせて読めることでしょう。
・かつて、高校野球に関わっていた人
懐かしさで悶えると思います。読まない手はありません。
・野球にかかわっていない人
高校野球面白いなあ、と思えます。違う世界が開けます。
同僚やもと同僚に野球部の監督がたくさんいるので、ぜひオススメしたいです。
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