見出し画像

7月7日 漏らした

癌がわかってオストメイト(人工肛門保有者)になって早2ヶ月、ついにこの日がやって来ました。

わたしはそのとき……というか本当についさっきだけれど、家のソファでくつろいでいて、ふとお腹を見たら、ストーマ(人工肛門)の装具から滲み出ていた。さすがに「おわっ」と声が出た。

まずは驚き。次に、家でよかったという安堵感。そして、いきなりわーっと漏れるのではなく少しずつ滲み出るんだな、お腹以外は汚れていないなという、状態や状況の確認。それからは意を決して、お腹が天井を向いたままになるよう手足でバランスをとりながらソファから降り、ブリッジをする釜爺のようなキモい動きで浴室まで移動し、その最中にティッシュをむしり取ってストーマを押さえ、替えのストーマ装具やガーゼ、汚物破棄用の密閉袋などを手に取り、なんとかたどり着いた浴室で装具を外し、身体と服をシャワーで洗い、新しい装具を着け、濡れた服を洗濯機へ突っ込んだ。我ながら動きに無駄がなさすぎる。この判断力を仕事でも活かせていると信じたい。

それにしても、これまで問題なくやってこれていたのに、2ヶ月も経って今さらなぜ?

洗濯機を回しながら考える。思い浮かぶ理由は、昨日今日と汗をかいたことくらいだ。昨日は友人と会うため、そして今日は選挙に行くため、それなりに歩き回って汗をかいた。それで面板(ストーマ装具のお腹に貼り付いているパーツ)の粘着力が弱まってしまったのだろう。

となると、今後わたしがとれる対策は3つ。

  • 暑い日はできるだけ外に出ない

  • 汗をかいた後は、面板を押さえて再粘着させる

  • それでも不安なときは、サクッと交換してしまう

幸いフルリモートでの勤務が認められているため、わたしはこの対策を十分に実行できる。その上で、万が一を考えて、外出時も交換キット一式とウェットティッシュを持ち歩けばいい。そしてそれは、すでに習慣化されている。恐れることは何もない。

友人たちは、たとえわたしがどんなに糞まみれになったとしても、愛を以て爆笑するか、心から寄り添ってくれるだろう。まったく思い当たらないけれど、もし過度に憐れんだり馬鹿にしたりする人がいたとすれば、その人との関係はわたしにとって不要だったというだけだ。

漠然とした不安を解消したいのであれば、その不安を細分化してできる限り明確にし、一つひとつに対策の仮説を立てて、効果検証を重ねるよりほかない。「またこんなことが起こったらどうしよう」では、いつまで経ってもその場から動けずに、自分の首を絞めてしまう。

とはいえ、理屈っぽいことは抜きにして、ショックを受け、不安を抱いた自分の弱さも無視せずに認めたい。そもそもわたしはずっと偉い。今日はファミマのショコラケーキを食べていいし、一番高いフェイスマスクを使っていい日とする。

今日のわたしの行動だけが、この先のわたしを救ってくれるだろう。最近はこのフレーズを、おまじないのように頭の中でよく唱える。不測の事態にも適切に対応できたこと、そして今後とるべき対策の仮説を立てられたことよ、どうかこの先のわたしの支えとなれ。

さて、ちょうど洗濯が終わった。これから干す。明日のわたしは洗濯物が干されているのを見て、きっと気持ちよく週の始まりを迎えるだろう。


スキでもフォローでもサポートでも、読んでくれたらなんでも嬉しいよ