見出し画像

現代アートは水の流れのように

ニュイ・ブランシュという現代アートの祭典をご存知でしょうか。フランスと京都で毎年一夜限りで行われているイベントです。

「ニュイ・ブランシュ」は2002年にパリで始まり、毎年10月の第一土曜日の夕方から深夜まで繰り広げられる、年に一度の現代アートの祭典です。このフェスティバルは、現代アート作品を美術館や専門のギャラリーだけにとどめることなく、様々な場所で、原則無料で一般の方々に楽しんでいただくことを目的としています。 駅や、庭園、世界遺産に登録されている場所など、意外性のある会場から、美術館など、定番でありながらも素晴らしい会場まで、市内各所で実施されます。

毎年テーマがあって、今年のテーマは「フロー(流れ)」でした。多くの会場がある中で日本庭園で有名な無鄰菴で新進気鋭の現代アーティストHicham Berrada氏の映像作品を観ました。こちらでは感染防止に配慮して時間指定の完全予約制でした。有名な庭園に無料でライトアップまで見れるため人気で、観光ついでに立ち寄ってお断りされている人もいました。入り口で整理券を渡し案内されるままに歴史的家屋の中をしばし徘徊して説明を聞きます。普段は解放されていない2階のお部屋や夜の庭を眺めながらお茶をいただけるお部屋があったりします。そして180度ひらけた夜の庭園を行燈をたよりに、ぐるりとまわり展示がある洋館へゆっくりと歩きます。

中秋の名月を見逃してお月さま見れるかなとか空を見上げるとあいにくの曇り空。明る過ぎず上品にライトアップされたお庭を一人でまわっていると不思議と落ち着いた気持ちになって些細なことのように思えてきます。これまた歴史的な洋館に着くと靴をぬいでいよいよ作品とご対面します。

Hicham Berrada作「Présages :予兆」

映像作品ですので時とともに絵は変化します。眺めていると生命に満ちあふれ成長する植物をイメージします。最初タイムラプスかなとも思いましたが違いました。ときおり上から神の手とも呼ぶべきものが何かの粉を振りまき作品に劇的な変化を与えます。まさに神の手と思いました。ナウシカに出てきそうな森。イソギンチャクやさんごがいる海でなく地上の森。液体を使っているのにどうして海や水のイメージが湧かなかったのかは謎です。「自然に見えていても実は何者かに造られたものである」そんなことを思う作品でした。

洋館を出て、係りの人に「今日は月が見れませんけど満月はきれいだったんでしょうね」と話すともう一度お庭をまわられてみてはと勧められたのでぐるっともう一周してみると夜なのに晴れやかな気持ちになっていました。場所と作品のコラボレーションがバチっとあったとても贅沢な展示会でした。

ニュイ・ブランシュは一夜限りの現代アートの祭典です。本当に多くの会場がありとても一夜では観きれません。どれかにあたりをつけて観に行くというのが私の傾向です。時間は有限ですが素晴らしいアーティストはたくさんいます。会場で観ることはまるで川から流れてくるボールをキャッチすることに似ています。それを楽しみワクワクできる人にとっては最高のイベントです。

一方で、グレート・ミュージアムという映画で美術館の館長同士が改装中の館内をめぐり食い気味にキラキラした目で興奮して話すシーンが印象に残っています。新と旧、芸術とビジネスに揺れる関わる人々の葛藤を描いたとてもいい映画でした。美術館で多くの作品をゆっくりと観られるのはもっと贅沢なことなんだとあらためて思いました。

その場所で何を思いどう感じたのか。

それを整理できればいいなと思い書いてみました。こんな機会を与えてくださりありがとうございました。

こちらの企画に参加させていただきました。

この記事が参加している募集

イベントレポ

よろしければサポートお願いします^^