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大河「光る君へ」(21)旅立ち

 いや今回もガッツーーーンと来ましたね。「旅立ち」は本当に様々な意味での、それぞれの旅立ちだった。ガテン仕事で疲労した心身に沁みわたる千年の言の葉。効きますわ。
※「源氏物語を読みたい80代母」のための企画です。最終回までこの形式で続ける所存。思いっきりネタバレ全開なのでご注意くださいまし。
お喋り役の平安女房ズは以下:
右近(右)、侍従(侍)、王命婦(王)、少納言(少)

侍「右近ちゃあーーーーん!」
右「なあに侍従ちゃん。どうせそう来るだろうと待ってたわよ」
侍「もう、もうどこから何を話せばいいのかわっかんなーいいいい!(惑乱)」
右「とりあえず侍従ちゃん、道長くんとまひろちゃんのあの逢瀬はリアルなの心象風景なの?」
侍「アタシとしてはリアルであってほしいー!でも夢でも幻でも何でもいいよ美しかったから!!!」
王「道長くん、もう左大臣様ですものね。普通は単独外出無理よ。とはいえああいう形の『二人だけの領域』があるって世界観、嫌いじゃない」
少「ドキドキしましたわ……お二人とも大人になられましたね。道長さまはご自分の未熟さ無力さをハッキリ自覚され、まひろさんは越前国旅立ちを目前に、頑なだったお心をほどいて素直な気持ちを露わにされた。前に進まれたのですわ」
侍「ねー!このタイミングで遠距離恋愛かーしょぼん。だーけーど、アタシは見逃さなかった最後のあのイケメン!期待大☆じゃなーい?」
右「あの大騒ぎっぷりの中、一人斜に構えたあの感じ、直秀くんを彷彿とさせるわね(しんみり)。実際、新しい恋に邁進すべきよまひろちゃんは。倫子さまにバレても開き直れるようにさ」
王「倫子さまといえば、もう完全に土御門つちみかど邸の女主として揺るぎないわね。
『女院さま、すっかりお元気になられてウフフ』
からの
『女院さまと殿のお父上(兼家)は仮病がお得意でいらしたとかウフフフ』
には痺れたわ」
侍「うわーーーアレね、ヒエってなった!ヤヴァすぎ!やっぱり初めっからぜーんぶ丸っとお見通しだー!だったのねん」
少「あの呪詛の件を、道長さまから帝に直接伝える形をとると、かつての事件……道兼さまが花山帝を密かにそそのかして出家・譲位せしめた陰謀……と同一視されかねませんもの。内裏の奥で内内に処理するのではなく、呪符発見の現場にいた倫子さまが検非違使に通報・帝に奏上という正当な手続きルートをとれば、要らぬ疑いもかけられにくいですし、後々どんな噂が出ようと弁明する余地もありますね」
右「なーるほど。してみると倫子さま、あえてあの爆弾発言で
『これ以上の策謀的な動きは当分お控えくださいね♡もうバレバレですからね!』
ってあの姉弟に伝えたわけか。賢い」
王「そうね。あそこまで大胆に身もふたもなく口に出すことで、一連の企みが露見せず済んだのは土御門邸の主たる倫子さまの力、というアピールにもなる。政治力も胆力も立ち回りも、完全に詮子さまを超えたわね。つくづくたいしたお方だわ」
侍「倫子さまおそろしい子!やっぱりヤバヤバのヤバ―!」
右「最強の妻ね。この間も言ったけど、道長くんって本当に運がいいわよね。話少し戻すけど、ひとつ車に乗った伊周くんと貴子お母様が引き離される姿って、まんま
『道長くんとまひろちゃんが駆け落ちした場合の未来』
 じゃない?道長くん、無反応で能面顔だったけどかなりキツかったろうね。選択によってはあり得た未来の光景を突きつけられちゃったわけで。気持ちだけでは誰も守れず救えないってことも」
少「あの場面はお気の毒でしたわね、どなたにとっても。帝のお怒りもごもっともですし、道長さまも実資さまもお立場上遂行せざるを得ませんもの。一方、貴子さまの母心も人として痛いほどわかります……胸が痛みますわ」
王「道長くんだけに本音を吐き、声をあげて泣かれた帝のお姿もまた、道長くんの過去に重なるわね。身分や立場を超えてなおこみ上げる、湧き上がる魂の叫びよ」
侍「うわーーーん帝と定子さまのラブラブっぷりも好きだったからアタシも悲しい……でも、こうなってからの定子さま、なんか超お美しくない?笑顔が消えて、ずっと涙を堪えてるような、張りつめたお顔なのに途轍もなくキレイなの。不謹慎かもだけど」
王「ええ侍従ちゃん、わかる。藤壺宮さまの側近女房だった私にはわかるわ。ああいう高貴なお方は、運命に翻弄され打ちひしがれた時こそ、芯にあるつよさと美しさが際立つのよ。この方のためなら何でもして差し上げたい……!どこまでもついていきたい……!って思うの。この王命婦、ききょうさんのお気持ちも手に取るように理解できる」
少「定子中宮さまのお声で読まれる『春はあけぼの』は泣けましたね……」
右「まさに闇に灯った言の葉の光よね。尊いわ」
侍「だよねだよね!!!ゴメン、ぶっちゃけ『枕草子』って平安ゆるふわ☆半端ない教養も垣間見えちゃう(ドヤ)☆キラキラエッセイ!としか思ってなかったアタシ!マジですまんかった!!!土下座する!!!」
王「まあまあ侍従ちゃん。大体それで合ってるのよ内容的には(←えっ?)」
少「中宮さまのために書かれたというのがポイントですわ。それが少なくない人の心を打ち、令和の今まで読み継がれてきたということも」
右「本物は時空を超えるのよね。昔々の物語もしかり、数々の和歌も、もちろん源氏物語もしかり」
侍「そっかー!(速攻立ち直る)だからアタシたちもここにいるんだもんね!スゴイなー平安天才作家たち。てなわけで、来週から越前国編が本格的にスタート!存分に楽しみましょー♡♡♡ではではまた来週ー!」

 今日はいつもより女房ズトーク多めでいってみました。いやもう毎回なんなの内容濃すぎ。
「対外戦争はおろか内戦も殆どないし大きな事件も少ないし、大丈夫かな平安時代」
などと心配していた去年の私を後ろからスリッパでひっぱたきたい。侍従ちゃんじゃないけど土下座しますゴメンなさい。
 Twitter(x)にも、あの「春はあけぼの」で涙腺崩壊した人が多数、学生時代の古典の先生に対する感謝の言葉が溢れており。
 再度
「古典教育が無駄、不要なんて誰が言った?」
と謎のドヤ顔をかましたくなりました(土下座どうした)。
 この感激を生んだのはやはり、ドラマ内でのまひろとききょうの仲良しっぷりが大きいと思うんですよね。まひろさん聞いて~とききょうがやってきて語り合う。才女同士だからわかり合える知的な会話を楽しむ。「枕草子」の発想がまひろの助言によるものだった、というのはさすがに無いでしょうが、中宮定子へのききょうの思いはリアル清少納言のそれに近いのでは、と思わされる見事な脚本と演出でした。
 当時の人々と全く同じようにとはいかなくても、令和の私たちはドラマという形で長徳の変以降の変転を目の当たりにしました。我が世の春から一転、世を捨てるほどの絶望の中にいる中宮定子。その彼女一人だけのために書かれた「春はあけぼの」から始まる輝かしい日々の記録。中関白家の悲劇が生々しい事実として記憶にあった平安人たちが受けた衝撃と同じものを、私たちも少しばかり疑似体験させてもらった、とは言い過ぎでしょうか。
 そうなると、やはり紫式部のあの悪口は文字通りの意味には取れなくなるんですよねえ……紫式部は当時を生きた人ですし、中宮定子に起こったこと・その女房である清少納言との関係はもちろん、「枕草子」が話題になった理由もよく知っていたでしょう。
 録画しておいたNHK番組「歴史探偵・清少納言と枕草子」では、
「定子サロンの素晴らしさがあまり語り草になると、後から入内した彰子(道長の娘)に不利だから」
という政治的な意図もあったのではないか、という説も出てました。出演者は「嫉妬じゃないか」とも言ってましたが、うーん。嫉妬は少なからずあったかもしれないけど、ああいう書き方するか?とまた前回と同じような感想に。
 ということで、ふと思いついたことを試してみます。
【紫式部日記より:原文】
 清少納言こそ、したり顔にいみじうはべりける人。さばかりさかしだち、真名書き散らしてはべるほども、よく見れば、まだいと足らぬこと多かり。かく、人に異ならむと思ひ好める人は、かならず見劣りし、行末うたてのみはべれば、艶になりぬる人は、いとすごうすずろなる折も、もののあはれにすすみ、をかしきことも見過ぐさぬほどに、おのづからさるまじくあだなるさまにもなるにはべるべし。そのあだになりぬる人の果て、いかでかはよくはべらむ。 
【かわこテキトー訳】
 清少納言とかいう、ドヤ顔のヤバい人について。賢ぶって漢字を書き散らしていらっしゃるけど、よく見るとまだまだ足りないところが多いわね。人よりデキるアピールしがちな人って、必ずどこかで見劣りして先細るばかりなのよね。やたら風流ぶる人は、本気で寂れ切った何の面白みもないような時でも、ムリヤリ趣あるものを探して、面白いことを見過ごさないようにしがちなものだから、自然と的外れで浮ついた様子にもなっちゃう。そんな軽薄な人の行く末、どうして良いなんてことありましょうか。

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【褒め言葉に変えてみる】
 清少納言という、自己肯定感高い素晴らしい人について。才に任せて一気呵成に漢字を書き連ねる、よく見れば間違いも多いけれどその勢いは真似できない。ワタシが誰より一番!っていう意識高い系はいつか誰かに負かされて先細りしちゃいがちだけど違うのよね。彼女の手にかかればどんな寂れ切ったつまんない状況でも、力業で趣あるものが探り出される。決して面白みを見過ごさない。ごく自然に本質を捉える、なのにライトな感じでイイ!そんな優れた感性を持つ人の将来、悪くなるはずありません。

 ……え、やっぱコッチじゃないの?!
 政治的な理由やらなんやらでしぶしぶ書き直したんと違う?!
 
 などと妄想をはかどらせつつ、また来週♪
(というか福井旅のラストを書かねば)
<つづく>



  










「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。