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大河「光る君へ」(37)波紋

 秋のガテン仕事絶賛開催中の折、月曜更新が厳しくなっております。また、十月最終週あたりは源氏物語アカデミー参加のためこれまた遅れる予定。ダラですみません火曜か水曜には何とか。
※「源氏物語を読みたい80代母」のための企画です。最終回までこの形式で続ける所存。思いっきりネタバレ全開なのでご注意くださいまし。
お喋り役の平安女房ズは以下:
右近(右)、侍従(侍)、王命婦(王)、少納言(少)

侍「ねえねえ右近ちゃん」
右「なあに侍従ちゃん」
侍「まひろちゃんって案外イケる口だったんだね。女子会呼んでみちゃう?」
右「ちょ、侍従ちゃん。ご実家でのあの体たらく観てその感想?ある意味すごいわ」
侍「エーだってさあ、よくある感じじゃんああいうの。メイクもファッションも朝からバッチリガッツリ、全方位的に粗相のないようにどころか常にアンテナビンビン張りーの、知性教養バリバリ期待されっぱなしーの、緊張感を強いられる職場からひっさびさに解放されたんだもん、そりゃあ実家ラクー!ではっちゃけちゃうよ、うん」
王「女子会……確かに呼べるものなら呼びたいわね。ああいう職場の面白話って、家族にはイマイチわかってもらえないものなのよ。スベるの確実。話題としては難しい、というかほぼNGに近い。飲み会に慣れてる弟の惟規くんはあーあって顔で注意するし、為時パッパすらやんわり止めてたものね」
少「まして十歳の賢子ちゃんには厳しい状況でしたわね……酔った大人の繰り言なんて一番嫌うお年頃ですもの。まひろさんのお気持ちはわからなくもないですし、娘にだいっきらいとまで言われてお気の毒ではありますが、少々羽目を外しすぎたかも。お酒抜きで、賢子ちゃんともっとお話ししてあげてほしかったです」
右「そうよ、きっとお母さんの帰りを楽しみに待ってたのよね賢子ちゃん。思わず投げつけてしまった自分の言葉に対しても二重に傷ついてる。不憫だわ」
侍「うーんそこは同意なんだけどー、アタシはここんとこずっとお澄まし☆顔してたまひろちゃんがハジケたのすごく面白かったんだー。職場じゃ沈着冷静で物事に動じないデキる女房!を装ってるけどやっぱ色々溜め込んでたんじゃーんって。ああいうのも必要なんだってー。まー聞かされる方は確かに大変だけどネ!」
王「そうね、一理ある。今のまひろちゃんの職場、余計な事は何一つ口にできないし感情を表に出すのも憚られるものね。その上道長くんはあんなだし、赤染衛門姐さんにはガッツリ釘刺されるしで」
少「赤染衛門さん、十中八九何かあると察していらっしゃるのに、まひろさんを問い詰めるのではなく
『倫子さまを悲しませることがないように』
って仰ったのシビれましたわ……なんでも真実を解き明かせばいいというものではありません。言葉にしてしまえば取り返しのつかないことはいくらもございますもの」
右「赤染衛門さんは流石ベテラン女房よね。道長くんの、藤式部は何でいないのー?って質問への返しも過不足なく完璧だった。だいたい無断で宿下がりするわきゃないんだし、中宮様はご存じナノカ?!って要は『俺は聞いてないプンスコ』って意味だもんね。バレバレだっつうの。このノーテンキ道長めが」
侍「右近ちゃん酔ってもないのに言いたい放題イ!でも同意ー!」
王「それにしても、遂にポロっと本音を漏らしたわね道長くん。敦康親王さまを切り捨て、直系の孫・敦成あつひら親王さまを東宮にするという目論見を」
少「あれは……まひろさんだから気を抜いて、というのではなく、意図的にあのタイミングを狙って呟かれたのだと思います私。まひろさんはもう完全に『道長陣営』であり、今後もそれを踏まえて動くようにということですわ」
右「いつの間にかガッツリ政争に巻き込まれてんのねまひろちゃん。まあそもそも、中宮にお仕えするというのはそういうことよね。源氏物語も勿論その道具の一つ。高価な和紙をあれほど大量に調達したのもまひろちゃんラブだけじゃなく、主目的は一条帝との繋がりの強化。そのためのマーケティングであり投資よ」
王「道長くん、紛れもなく兼家さまの息子ね。後継者として最有力視してた兼家さま及び安倍晴明さんの目に狂いはなかったってことか。さすが我が推しだわ」
少「私、まひろさんのご実家での視線の動きにドキっとしました。家がみすぼらしく見える、はともかくとしてあの琵琶、お母さまの形見の。道長さまはお母さまを殺した男の弟であるという事実は消えてはいない。まだそこにあるんです。その一族の娘に今自分は仕えていて、この家を支えている……当時は思いもよらなかった状況。普段は押し込めていた記憶が、否応なく引きずり出される……」
侍「ヒエッ……で、まひろちゃん今あの『若菜』巻書いてんだよね?!因果は巡る的なあの話……怖」
右「直秀くん再来みたいな若者も出てくるし(楽しみ♡)次回のタイトル『まぶしき闇』……思わせぶりすぎてヤバいわ」
王「あの鬼やらいシーン素敵だったわね。ききょうさんの源氏物語批評も聞きたいし、伊周さまがどうなっちゃうのかも知りたいし、倫子さまの圧倒的深謀遠慮も観たいし……ヤダ、来週が待ちきれないかも♡」
侍「(王命婦さんのその笑顔がコエエ!!!)ま、また来週うーーー!!!」

 今回のまひろちゃん酔っ払いシーン、高校卒業後から東京に出た地方出身者のワタクシといたしましては非常に身につまされまして、共感性羞恥といいますか何といいますかウワアアアアア!!!と叫びたい気分になり……いや、私の場合まひろみたいに大出世したわけでもないし実家のほうが自宅よりよっぽど広くてキレイなんで状況は違うんですが、あの、話題が盛大にスベる感じ……自分的にすごく面白かったことを伝えようとしたのにアレ?周りの反応が思ってたんと違う?という気まずさ……それを何とか誤魔化そう、上書きしようと頑張って、更にスベるという悪循環には覚えがございます。あれほどドツボな状況ではないにしろ、生まれた家を離れ別天地に拠点を持ったことのある人ならば、多かれ少なかれ経験するようなことではないかと思いました。同じ家に住み、同じ生活圏で暮らしているうちは阿吽の呼吸で通じていたことがそうはいかなくなる。ああー今の私の居場所はここではないんだな、と改めて実感する瞬間といいますか。自立のために必要なプロセスなのでしょうが、寂しいものではありますし、何よりちょーー恥ずかしい!外で肩肘張ってた自分はまだ全然完成されておらず、かといって子供に戻れるわけもなく、うっわー私って中途半端……いっぱしの大人になったつもりが全然そうじゃないじゃん……と現実を突きつけられて顔真っ赤って感じ。ひーきっついわー。
 要するにまひろは、この里下がりで賢子に宮仕えを勧めたかったんでしょうね。為時に言いかけたのはその件。賢子に少しでも知ってもらいたくて、善かれと思って食事の席で職場の話を延々し続けた。で、見事に逆効果と……不器用だなあ。内裏じゃあんなに有能なのに。まんま「家ではからきし子供と話せない単身赴任のハイキャリアお父さん」って図式ですね。ハア。
 というわけで気を取り直して。
 ききょう(清少納言)がまたもや登場しましたが、その衣裳(うちぎ?)が、かつて中宮定子がお召しになっていたものとTwitter(x)で見かけて、ヒエっとなりました。しかもあの突然の出家シーンの時の……ここにも形見の品。ききょうは未だ「過去」を身につけており、まひろは実家に置いたままにしている。この対比にもきっと意味がありそうです。
 さて、ききょうが源氏物語をどう評するか、来週まで待ちきれないのでまたもや二人の【妄想おちゃらけ会話】を書いてみます。

まひろ「お読みになられたの?……どうでした?」
ききょう「すごく面白かったわ(ニッコリ)」
ま「そうですか、ありがt」
き「(食い気味に)まひろさん貴女、以前私に『定子さまの闇の部分を知りたい』って仰ったわね。それに対して私は、光の部分だけを書くつもりだと答えた。覚えてらっしゃるかしら」
ま「勿論ですわ。あの……私、」
き「ああ、わかっておりますわ。帝の寵愛を独占した桐壺更衣は定子さまを思わせるものの、出自も人となりもまったく違います。藤壺宮のほうがむしろ近く感じました。お美しく聡明で、輝く日の宮とうたわれたお方。ただし、帝の息子と密通なんてことはなかったですけれどフフッ」
ま「すみません……」
き「何を謝りますの?ただの物語でしょう?あらごめんなさい、ただの、という言い方は違うわね。これまでの物語にはない、多彩な人物造形と緻密な組み立て、張り巡らされた伏線と見事な回収、意外性のある展開、シーンに応じた古歌や漢詩文の引用も気が利いていて、すごく良く出来ていると思うわ。帝がお気に召されるのもわかる」
ま「ありがとうございまs」
き「(食い気味に)伊周さまは『紙が破れるほど読み込んでらした枕草子をさし置いて夢中になっておられる』なんて嘆いていらしたけど、私はその方がいいと思うのよ?好きなものはいくつあったっていい。そもそも枕草子は枕草子、源氏物語は源氏物語、ジャンルが違いますもの。比較できるものではないわ。殿方が政治の道具にするも結構だけれど、私はただ書きたくて書いただけ。まひろさんは左大臣の命令だそうだけど、本当のところ私と同じではないのかしら?全部読んでみてそう感じたんだけれど。違う?」
ま「さすがはききょうさん……!そうですそうです、ただただ心の奥底から湧き上がる熱情に動かされて、ここまで書いてきt」
き「(食い気味に)それでねまひろさん?あまりに面白かったものだから、私も書いてみたの。読んでいただける?」
ま「これは……」
き「光源氏と頭中将、すごくいい一対だと思って!『末摘花』巻での恋のさや当てはワクワクしたけど、何せあの常陸宮のお姫様が奥ゆかしすぎの動かなさすぎだったじゃない?あーもうちょっと盛り上がりがほしいかなーなーんて思って」
ま「……(熟読している)」
き「どうせならすっごいアクティブで、教養もあって機転も利く賢い、うんと年上の女をこの二人にぶつけてみたの」
ま「……」
き「まひろさん?どう……かしら?」
ま「(俯いている)」
き「お気に召さないかしr」
ま「(食い気味に)いい……!ききょうさん、いいわコレ……!天才!!!」
き「(頬を赤らめて)そ、そう?!嬉しい、原作者にそう言っていただけるなんて!」
ま「これさ、この女性、何か楽器弾けるってことにしない?そうすると場面にぐっと奥行きが出て、華やかになる気がするの」
き「ああ!すごい、グッドアイディアだわ!じゃあこことあそこもああしてこうして」
ま「小道具も利かせたいわね。帯とかさ。取り違えちゃうとかどう?」
き「イイ!良すぎ!それ行こ!」
 ……こうして生まれたのが「源典侍日記」である……(噓です)

 てな感じで、二人でスピンオフとか二次創作とか作ってキャッキャしてたらいいんだけど、きっとそんなんじゃないんだろうなあうおーーーん。
 そうそう今週もネタ多すぎで女房ズ会話に盛り込めませんでしたが、彰子中宮が一条帝に贈った冊子!作る過程も含め美しかったですねえ。現存してたら間違いなく国宝級でしょうね。全部越前和紙なのかなあ?まひろが書いてる紙も何気にずっと良い紙で、眼福にございます。
 紙つながりでもう一つ、JR「大人の休日倶楽部」CMに紙の神様の神社が登場しておりますので貼り付けときます。10/1からスタートした「北陸ディスティネーションキャンペーン」の一環だそうです。皆福井は越前和紙の里においでませ♪♪♪

 今回もまた全くまとまらないまま、ではではまた来週ー!
<つづく>

「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。