見出し画像

【KAWAII探訪】vol.1 兵庫県*有馬温泉編(第二話)

まだ見ぬ「カワイイ!」との出会いを求めて旅する『KAWAII探訪
その第一弾として訪れた兵庫県の有馬温泉では、この地ならではのお店を3軒巡りました。前回の記事に書いた、炭酸せんべいの老舗《平野屋本舗》に続きご紹介するのは……。

【第二話】

唯一、有馬人形筆を作る「灰吹屋・西田筆店」

こんにちは。「KAWAII COMPANY」取材部記者のザックです。
さっそくですが、今回はなんと室町時代(!)から450年以上にわたり受け継がれてきた技術で作られ、兵庫県の伝統工芸品に指定されている「有馬人形筆(ありまにんぎょうふで)」についてご紹介します。

画像1

訪ねたのは、これぞ温泉街といった趣のある小道に佇む、長屋風の日本家屋に店舗を構える「灰吹屋・西田筆店(はいふきや・にしだふでてん)」。大正時代にはまだ4,5軒あった有馬人形筆づくりのお店も、時代とともにその数が減り、現在ではただ1軒のみとなってしまったそうです。
そんな希少なお店を取材させていただくことに、ちょっとどきどきしながら店内に入ると、思わず「カワイイ!」と声を上げてしまう光景が目に飛び込んできました。

「こんなにもカワイイ筆があったなんて!」

画像2

はじめて実物を見た有馬人形筆。軸の部分がカラフルに彩られていて、キラキラととっても華やかな印象。まるで万華鏡を覗いたときのような感動をおぼえます。これほどカワイイものが450年以上も歴史のある伝統工芸品だとは、日本にはまだまだ知らない「カワイイ」があると、あらためて胸を躍らせずにはいられません。

小さな人形がひょこっと飛び出す「カワイイ!」

画像3

カラフルでキラキラ――有馬人形筆のカワイイところは、それだけではありませんでした。書くときのように筆を立てると、筆軸の後ろから小さな人形がひょっこり登場!そして筆を寝かせると、また筆軸の中にすっと入り姿を隠す……。そう、有馬人形筆にはなんともひょうきんで、カワイイ仕掛けがあったのです。そして「人形筆」のゆえんにも納得。

いったいどのように作られているのか、西田筆店7代目の店主にお話をうかがってみました。

有馬人形筆は一本ずつ手作業でおめかしされる

画像4

有馬人形筆づくりは簡単に分けると大きく3つの工程があります。

①軸を装飾する
②からくり人形を仕掛ける
③穂を軸に組み込む

まず①の装飾は、竹製の軸に染色された絹糸を手で巻いていきます。この光沢感のある絹糸が有馬人形筆をキラキラと輝かせているんですね。

画像5

細い絹糸を一本ずつフリーハンドで、下絵などない軸に手際よく巻いていく様子はまさに熟練の技。糸の色を変え、隙間なく重ねて巻くことで少しずつ柄が浮かび上がってきます。西田筆店で使っている絹糸の色数は20色ほど。色と巻き方によって、さまざまな模様におめかしした筆ができあがるのです。

作り手の自由なセンスで無数のデザインが生まれる

画像6

おどろいたことに、こんなにも緻密な柄なのにデザイン画などは特にないそう。有馬人形筆の基本となる柄はあるものの、作り手が自由にアレンジしているものもお店に並んでいます。

画像7

基本柄と呼ばれる模様(画像中央)は「市松」「矢がすり」「うろこ」「青海波(せいがいは)」の4種類。どれも日本の伝統文様で、縁起を担いだり魔除けだったりとそれぞれ意味が込められています。

熟練のおねえさまたちが楽しみながら作っている

現在、西田筆店では数人の職人さんに筆づくりをお願いしているそうです。どんな方々かたずねると「近所の女性たち」とのこと。手仕事が好きな女性たちが、おうちで一つひとつ丁寧に作っている――想像すると、その姿は‟職人”でありながら‟ハンドメイドを心から愛する女性たち”という感じで、ほっこりカワイイ。

実際に「仕事だからというよりは、楽しいから筆づくりをしてくれている」と店主も語ります。だから模様も作り手のセンスにお任せしているのだそう。有馬人形筆づくりの裏側には、もう愛しかないでしょ。ステキ!

似ているようで、全部違う表情にキュン

画像8

続いての工程では、人形のからくりを筆軸に仕掛けます。仕掛けられる前の全身あらわになった貴重なお姿がこちら。大豆ひと粒ほどの小さな石膏に、手作業で顔や着物を描いています。ちなみに、この作業は店主のご家族が担当されているそう。一体ずつ手描きなので、まったく同じ顔はありません。表情の微妙な違いを見比べるのも選ぶ楽しみのひとつ。

人形筆の誕生エピソードもカワイイ!

画像9

そもそも、なぜ筆から人形が出てくるからくりになっているのか。
それは昔むかし、今から約1400年前の飛鳥時代にさかのぼるようです。

「お妃に子どもができず嘆いていた孝徳天皇が、有馬に滞在して間もなく皇子が誕生。有馬にちなんで有間皇子と名づけられた、と伝わる故事にヒントを得て、室町時代に人形師が考案したのが有馬人形筆のはじまり」といわれているそうです。

そんなエピソードがあるため、子宝祈願の‟縁起物”としてお土産に買われる方も多いのだとか。

画像10

とにかく、どれもカワイイので選ぶのがちょっと大変かも……。

現代では筆を日常的に使うことはあまりないかもしれません。しかし、有馬人形筆を手にすると水墨画や書道などをはじめてみたい気持ちが生まれます。450年以上作られてきた、ちょっとひょうきんでカワイイ筆は、伝統文化への関心を高め伝承していく役割も担った‟しっかり者”の一面もありました。

画像11

「灰吹屋 西田筆店」の店主・西田健一郎さん

《SHOP DATA》
灰吹屋 西田筆店
住所:〒651-1401 兵庫県神戸市北区有馬町1160
電話番号:050-7125-1393
営業時間:10:00~16:00
休業日:水・木※GW・年末年始・お盆は営業
WEBサイト:http://www.arimahude.com/
※営業日・時間は変更になる可能性があります。事前にご確認いただくことをおすすめします。

次回は有馬温泉でのKAWAII探訪最終話!

画像12

有馬温泉でのKAWAII探訪もいよいよ大詰め。最終話では、意外なカワイイ!が見つかった、山椒専門店を訪れます。

最終話はこちら


この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?