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映画・八つ墓村の豊川悦司リメイク版をYouTubeプレミアムお試し期間のオレが石坂浩二版と比較しながらロンドンティールーム堂島本店から紅茶をすすりつつプレゼンさせて頂きます。

八つ墓村いえば、金田一耕助シリーズのなかでも一二を争う異色作。
金田一耕助シリーズといえば、石坂浩二がハマり役だと世間相場が決まっておろうが。
だがこと“”八つ墓村“”に限っては、豊川悦司一択だ。

今朝は、この豊川悦司版の八つ墓村を軸にすえて一席ぶってみたい。


リメイクという姥捨て山

まさに、ワタシの記憶が確かならばの1996年。
八つ墓村のリメイク版が、豊川悦司を主演にむかえ公開された。

リメイク版というものは、往々にして以上押し並べて未満でコケる。
アニメ、映画、テレビ、マンガ、歌謡って言い方古いなあ、あらためミュージック……
あらゆるジャンルでリメイクの屍しかばねがわんさか積み重なっている。

ヤマト、銀河英雄伝説、エンジェル・ハート、徳永英明によるカバー曲ルネッサンス………
実例は枚挙にいとまがなかろう。
最後のはすこぶる売れた気もするが、まあ目をつぶって欲しい。

やはり、リメイク版は押し並べてコケることにしよう。
原典には遥かに及ばない、とダメ出しされがちなんじゃないか。
こればかりは普遍の法則アルアルだろうと想ふワケよ。


走る八つ墓村

しかし、1996年に公開されたリメイク版、“”八つ墓村“”は、この不安をみごとなまでに払拭した。

このリメイク版の特徴は、
主演の豊川悦司が、とにかく走る、走る、走る走る、走って走って走りまくる、銀幕せましと走って走って走りまわる、言の葉が突っ走って御免よ。

若さにまかせて、とにかくトヨエツが走る、走る。
これがリメイク版・八つ墓村の特徴だ。


静の石坂浩二

石坂浩二主演の金田一耕助シリーズは、静かな石坂浩二の演技に色気情緒がある。
白い巨塔において、石坂がみせた東教授の鬼心仏面なイメージとは対極をなす。

劇中たけなわ、事件が行き詰まり、血統図を黒筆で描きつつ、どうしてもわからない、と頭をかきむしり、ふと肘がすべり、筆からしたった黒汁が、ことの核心を斜に結んでいた。

石坂浩二には、
この無言の3分間を演ずる静かだが、確実な力があった。
だから、石坂は金田一耕助シリーズのハマり役足りえたのだ。


動の豊川悦司

一方で、豊川悦司の金田一はとにかく画面せましと動き回る。
事件現場に駆けつけたかと思えば、早口でまくしたて、またどこかに駆けていく。
恐らくは、静の石坂浩二を意識し、差異をつけようとした工夫だ。
これがものの見事に当たった。


名作の隠れ年

だが、残念なことにトヨエツ版・八つ墓村の興行成績はあまり芳しくなかった。
「リメイクだから駄目だった」とすら云われず、ひっそりとシアターを後にする。

1つの要因として、上映された1996年というのは、映画の当たり年だったことが挙げられる。
ブラッド・ピットとモーガン・フリーマンの強烈タッグが実現した、“”セブン“”、を始めとして百花繚乱だった。

これを裏返せば、1996年は隠れた名作が数多く輩出された年だったということ。

だが、それにしても勿体ない。
トヨエツ版・八つ墓村の躍動感を観ていないなんて、人生の半分を損している、かもしれないね。

映画鑑賞コンプリートの副産物

このトヨエツ版・八つ墓村を観たのは大学生のとき。
これねえ、1人でみたんよ。
書いてて思い出した。
当時、映画という映画を片っ端から観ていたから、どうしても1人で観る機会も増える。

市川崑監督やスタッフの方々には申し訳ないが、
八つ墓村なんて、当時のハリウッド映画のカネにものを云わせた大宣伝の前では霞んでしまっていた。

だけど、映画鑑賞コンプリートのためには、観なければ仕方ない。
その程度の動機での鑑賞だったねえ、まことにもって申し訳ない。
だが、そういう時に限って素晴らしい邂逅かいこうがあるものだ。


塚口サンサン劇場という穴場の王道

これねえ、映画館まで思い出したよ。
塚口サンサン劇場だねえ、トヨエツ版・八つ墓村を観たのは。

やってなかったんだよ、他ではあまり。
ハリウッド作品ばっかやりやがって、邦画は場末の映画館に追いやられていた時代だねえ。

塚口サンサン劇場は凄いよ。
普通シアターというものは、長方形ないしそれに類する形状だ。
だが塚口サンサン劇場はそのステレオタイプを覆した。

くの字に折れ曲がってやんの。

音響が、音響がなんか変っていうか、そもそもクマナク変な音なんよ。
塚口サンサン劇場で、あのインデペンスデイも観たけど、ある意味でド迫力だった。
普通そんな音発生しないでしょ、という快音と怪音がハーモニーを轟かせる中での鑑賞よ。
あのインデペンスデイすらもホラーだったワケよ。

まあ、おどおどろしい八つ墓村を観るには、くの字に折れ曲がった塚口サンサン劇場はうってつけだったのかもしれないねえ。

いまはさすがにそういうスキームは解消されたと想うが、アレは斬新奇抜で良かったよ。



ロンドンティールームから大団円

市川崑監督、
トヨエツ版・八つ墓村、
塚口サンサン劇場、

そして、
みんな、
ありがとう。

それにつけても、ロンドンティールーム堂島本店の紅茶は、
今朝も絶品だ、ありがとう。


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