岸田奈美さんのような、乙女ゲームのような、文章に憧れて。
先日、岸田奈美さんの『傘のさし方がわからない』出版イベントに行ってきました。
会場は、地元の小さな書店。
その書店には、一度、ふらりと入ったことがあります。隆祥館書店という、大阪の谷町六丁目にある小さな本屋さん。
店内に入った瞬間、店員の方が挨拶してくれて、「どんな本をお探しですか?」って聞いてくださいました。
そんな書店は初めてだったので驚きました。
でも同時に、すごくワクワクして、せっかくなので、ここは思い切り相談しようと、お仕事での資料になる本を一緒に探してもらいました。選んだもらった特別な本だから、サボらずに読もうと思えます!
店内には、店長が自ら本を読み込んだあとの書籍の付箋や、感想などが書かれていました。きっと店長が読んで、本当にいいなって思った本が置かれているのだと思います。
いいなぁ。私もこういう本屋さんに、置いてもらえるような書籍を作りたい。
そしてしばらく経ってから、その小さな書店の前に、岸田奈美さんの出版イベントのポスターが貼ってありました。
岸田さんは、私の文章の師匠です。
弟子入りしたわけじゃないです。
というのも、昨年、文章がマジで書けなくてピンチなときがありました。
昨年末に左右社さんから「子育てしながらフリーランス」という本を出版しました。私が妊娠、出産、夫婦関係を乗り越えて「いい感じ」で働くまでの、ド赤裸々エッセイ漫画+フリーランスの経験や知識が一緒になった本です。要点は読み返しやすいように、漫画ではなく、文章と挿絵のコラムでした。
以前からWEBマガジン記事や、noteで文章は書いていたので、書籍でも書けるやろ!と思っていたら、全く書けませんでした。
いや、書くは書くんだけど、書いた後からすぐに、
これでええんか…?
こんな文章で大丈夫か…?
世に出してええものなんか…?
不安になるんですよ。
なんでだろう。
文章は誰でも書けるもの。
だからこそ、スキルや経験のありなしが、容赦無く現れるような気がしたんです。
そこで慌てた私は、文章力が上がるような本を読みあさりました。
でも読むたびに、なぜか違和感を感じたんですね。
私は、テクニック的に上手い文章を書きたいのか?
いいや、違う、違う。
お母さん、お父さんたちが、好きなこと、得意なことで、いい感じで働ける応援ができるような…
そばにいて話しかけるような…
ありのまま自分の体験を伝えられる素直な…
育児で疲れてる人たちが読みやすい優しい…
そういう文章が書きたい!
ん?あれ?
ちょっと待って。
岸田奈美さんの本やnoteのマガジンは、私が乙女ゲーム以外に唯一継続的に読んでいるものでした。
僭越ながら私の中の岸田さんの文章は…
会ったことないのにそばにいて話しかけてくれてるみたいで…
嘘がない、ありのままのことを曝け出してくれて…
誰かが傷つかないように優しが溢れてて…
まるで、本越しに語りかけてくれるような…
あ、なんかデジャブ…そう、この感覚は…
まるで画面越しに語りかけてくれる、乙女ゲームのキャラクターたちのような…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
いや違う、それは違うか。すみません。
でもそれくらい文章の世界に自然と入り込めてしまう。
だから読み終わっても、「はい読んだ〜」で終わらない。
一つ一つの文章が、自分の中に溶け込んで、私なら?どう思う?どう感じる?って、考えます。
そういう文章を書きたかったんです。
読んでくれた一人一人の心に、すすい〜って優しく入っていくような。
それからは、たくさん岸田さんの文章を読みました。
上手に書こうと思わず、素直に書こうと思い直してから、なんとか書けるようになりました。
書籍は、無事に完成しました。
岸田さんの文章力に比べたら、いや比べないでください。比べるの禁止です。
それくらい未熟にもほどがありますが、「子育てしながらフリーランス」においては、プロの編集さんがかなりとだいぶとサポートしてくださったので、読みやすい文章になったと思います。本当にありがとうございます。
そんなことがあったからですね。
イベントで岸田さんにお会いできるのすごく楽しみにしてたんです!
前日、深夜のテンションで、お手紙も書いたんですよ。
朝起きて読んだら、文章がいつも以上に乙女ゲーム風になってて、キャラがヒロインを口説くような、重い手紙になってて…
ちょっと迷ったんですが、お渡ししました。岸田さんは笑顔で受け取ってくださいました。
優しい!!!
岸田奈美さんのお母さまのひろみさんも、ゲストでいらっしゃいました。
お母さまのひろみさんもとても優しそうな方でした。
でも、お話を聞いたら、優しいだけじゃなくて、お子さんたちがしっかり自分の人生を歩けるように考えて、時には厳しく、そして大きな愛情を感じました。
イベントでは、「え、そこまで話ちゃうの?」っていうくらい赤裸々なお話も、明るい口調で話してくださいました。
私は岸田さんのnoteをずっと読んでいるので、その裏話も聞けて、ニヤニヤしちゃいました。焦って周りを見たら他の観客の方もニヤけていましたよ。とても楽しかったです。
そのお話は、ここではしませんが、一つ、とっても心に残るようなお話をされていたので、紹介させていただきます。
当日、司会進行をしてくださった、隆祥館書店の店長の二村さん。話し方も、雰囲気もとても美しい方です。
そんな二村さんが、「岸田家は愛が溢れてますね」とおっしゃってました。私も本当にそう思います。
それに対して、奈美さん。
会場、ニヤニヤ爆笑。
そんな中、少し、苦笑いをしながらひろみさんが
と、おっしゃってたんですね。
しかし、司会の二村さんは、
ですよね!私もそう思います!
一番後ろの席で、こった首がもげるほど頷いていました。
グキ!グキ!グキ!
岸田さんの文章、ここまでこれでもかってほど、好きだってこと伝えてきたけど、一番私が好きなのは…
辛いこと、悲しいこと、大変なことが起こったとき、岸田さんは、その出来事と感情にまっすぐ向き合われて、自分の中にマイナスの気持ちが出てきても、繕わず、無視せず、受け止められる。
そんなごちゃまぜな感情を、ユーモアと希望が一緒になった一つの物語に落とし込まれてる…
ところ!!!
誰だって、どん底に落ちることはあると思います。
だけど、どん底に落ちたまま囚われ続ける人と、凹むけど、そろそろ行くか〜って歩き出す人がいます。
この二つの違いはなんだろう?
ヨイショ〜!って歩き出す人は、何を持ってるんだろう?
そう考えたときに、それって、「愛情」なのかもって思いました。
岸田さん親子を見て。
岸田さんは、ご本人も話されてますが、「なんでそんなことになるの?」っていう出来事が、結構、頻繁に、おかしなくらい起こられています。
私も、橋から落ちたり、川に落ちたり、そういうことに見舞わられる星のもとに生まれたと諦めてますが、岸田さんはそれ以上の星出身の方だと思います。
それでも、何度も何度も落とし穴に落ちても、ドッコイショ〜!って上がって来れるのは…
両親からの愛情がたっぷり贈られてるからかもって思ったんです。
こう、なんていうの…語彙力、私に語彙力がなくて、申し訳ないのですが、RPGで言うところのMPみたいなものなんじゃないかと。
MPが十分にあったら、学校や社会に出たときに、もし落とし穴に落ちて怪我をしても、自分で自分を癒すことができるんじゃないかと思うんです。
逆に、愛情が足りてない状態。MPが少ないと、落し穴に落ちて怪我をしたときに、なかなか癒すことでができない。傷ついたままになってしまう。
それでも、時間をかけてでも、自分で自分を癒すことができる人なら、なんとか回復して進めるときはくると思います。
ですが、親からガッツリMPをもらってたら、自分を癒すスピードが速くなるだろうし、MPが余った分は、他の誰かが傷ついたときに、回復させてあげることもできるんじゃないかなと。
だからひろみさんとお父様が、奈美さんと弟の良太くんに、たくさん愛情を贈ったように、私も息子には、たくさんの愛情を贈ろうと思いました。
息子が社会に出て失敗してしまったときに、「あれ?お母さんたちは僕のこと褒め倒してくれてたのにおかしいな?社会の方がおかしいのかな?」って、思っちゃうくらいに育ったら、人生楽しそうだし。
最後に。
イベント中、ニヤニヤお話を聞いてたら、岸田さんと写真を撮ってもらうの忘れてしまいました…。チャリぶっ飛ばしてる帰り道に気づきました。泣
次、お会いするときは、必ず!
岸田奈美さんのエッセイはこちらだよ。
カワグチマサミ(@kawaguchi_masami)
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