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【初出版『最強の法則』100plus】 vol.108:重版は著者として一人前の証し⁈

前回は「初版部数」についてお話しました。
今回は「重版」についてお話します。

重版とは、初版部数に加えて、刷り増しすることです。「増刷」ともいいます。
初版部数5000部に加えて、2000部刷り増した場合は、この2000部分を重版といいます。

多くの編集者・出版社の第一目標は、初版の売り切りではなく、重版です。
制作原価が高くなりすぎて、重版にならなければ赤字――という話をよく聞きます。
逆に言えば、重版になって、初めて利益が出るという本はけっこうあるのです。

重版にかかるコストは、極端な話、印刷代と著者の印税だけです。
それ以外の制作費は初版で減価償却されていますから、重版は利益率が高いのです。
出版全盛時は「重版はお金を刷っているようなもの」という言葉があったほどです。

重版が決まるまでには、どのような過程があるのでしょうか。

まず、当然のことながら、初版の売上げの推移が見られます。
最初の1週間か10日で初版部数の30%以上いったら、当然重版を検討し始めます。
1カ月で30%でも重版を考え始める場合もあります。
書店さんから注文が大量に来ている場合も、重版の検討対象になります。

この場合当然、返品リスクも考えます。
いくら売れていても初版の配本から必ず返品がくるものなので、返品の動きも慎重にみます。

返品を考慮に入れれば重版必要なし――こんな結論に至ることもよくあります。

重版決定の基準は、各社違いますので、こっそり編集者に聞いてみてもいいでしょう。

重版が決まったら、修正がないか編集者にチェックを依頼されることがあるでしょう。
誤字脱字、あるいは事実誤認をしていた部分を修正する唯一のチャンスです。
意外とあるものなので、自分の著作を改めて読み直してみましょう。

ただし、ただ単に表現が気に入らないからと、真っ赤になるほど修正を入れたり、
ページ数が変わるほどの修正はNGです。
重版が遅れてしまい、せっかくの売るチャンスを逃してしまいます。

出版社によっては、重版時に帯を巻き替えることもあります。
Amazonや書店さんのランキング実績を入れる。
読者や書店さんからの反応を入れる。
メディアで取り上げられたら、実績として入れる。
読者層を変えるために、違うキャッチコピーを入れる。
様々な方法があります。

重版部数を決めるのは、とても難しい作業です。
まず原価計算をします。
2000部刷ってさらに2000部刷るより、一度に4000部刷ったほうが1冊あたりの単価が下がります。


多く刷りすぎても返品が怖いし、かといって売り逃しはしたくない。
実売部数、注文部数、売上げの流れ、書店さんからの評判、SNSや書評サイトでの評価、今後のメディア露出の予定、宣伝広告を打つかどうか…さまざまな要素を加味して決定します。

「発売前重版」「発売即重版」という言葉を聞いたり、SNS上で見かけることがたまにありますよね?
編集者からすれば「初版部数を慎重に判断しすぎたかな」と悔やむ瞬間でもありますが、やはり嬉しいものです。
3刷、4刷、5刷…と順調に重版を重ねていけば、ロングセラーへの道も見えてきます。

厳しい言い方をすれば、重版して初めて著者として一人前ということができるかもしれません。
著者の皆さんも、ぜひ重版を目指してほしいものです。

次回は、出版社がもっとも恐れる「返品」について考えていきます。
ではでは!

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