【初出版『最強の法則』100plus】 vol.109:返品は出版社の一番の悩みの種
出版社も書店さんも取次も、悩みの種は返品です。
簡単に言えば、書店さんは一度仕入れたが売れない出版物を、
出版社に返品することができます。
つまり、10冊仕入れて5冊しか売れず、残りの5冊が売れそうにない――そう判断したら、書店さんは取次を通して、5冊を出版社に返品するのです。
出版社は取次経由で10冊分の売上げをいったん受け取っていますが、
返品されたら5冊分の売上げを返さないといけません。
実際は、その出版社の発売している書籍全体の月締めの売上げから返品分を差し引いて精算するわけですが、
その月の返品が売上げよりも多ければ、赤字になってしまうこともあります。
取次との契約によっては、さらに返品の“ペナルティ”として、数%の金額を引かれることさえあるのです。
返品された本を管理する倉庫代や人件費もバカになりません。
出版社が返品を恐れる理由が、わかるのではないでしょうか。
書籍の返品率はここ数年、約40%と言われてきました。
10冊を書店さんに送って4冊は戻ってくるという計算です。
昨年2021年の返品率は32%でおちついたそうですが、
それでも10冊のうち、3冊以上は返品されている計算になります。
「書籍は雑誌と違って長期間売るもの」という考えは、実態とはかけ離れてしまいました。
この連載でも再三「最初の1週間、1カ月の売上げが大事」と強調しているのは、そのためです。
早ければ、発売月に返品されてしまうのは常態化しています。
なかには書籍が詰められた段ボール箱が一度も開けられずに、そのまま返品されてしまうケースさえあります(これをジェット返品といいます)。
書店さんも「売れない本は返品すればいい」と呑気に構えてはいられません。
返品率を取次さんや出版社に厳しくチェックされます。
返品率によって、配本される本の種類や冊数まで左右されるのです。
「あの書店はこの分野の本が売れないから、配本しない」
発売前から前評判の高い書籍で仕入れたくとも、取次や出版社の判断で配本すらされないという事態にまでなるのです。
それを避けるために、仕入れた10冊売り切ったら注文をしないで、「完売=返品率0%」を維持するという施策をとることがあります。
それだけ、返品率の問題が深刻ということでしょう。
当然、出版社も取次も書店さんも、返品を減らそうと日々努力をしています。
書店さんに販売部が直接行って目立つように置いてもらったり、ポップやポスターなどの販促物を置いてきたり…。
前述しましたが、その本が売れそうな書店さんに厚めに配本して、売れそうにない書店さんには配本しないという施策を、取次と連携しながらとることもあります。
目玉商品に関しては、書店さんがこの本を売ってくれたら1冊につきいくらか払うという「報奨金制度」を出版社が提案する場合もあります。
書店さんも手書きのポップを書いたり、関連書籍を一同に集めてフェアを開催したり、イベントを開催したりと、日々努力をしています。
それでも、返品はなくなりません。
返品を少なくするために、著者の皆さんにできることはなんでしょうか。
自ら販促することはもちろんですが、売れる可能性のある書籍をつくることが第一ではないでしょうか。
次回は、著者としての書店さんとの付き合い方に焦点を当てます。
ではでは!
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