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宇蛍人②

私が探している宇蛍人は「ネコーム」という名前であることが分かった。2121年では、金さえ出せば、わずかな記憶から人の姿や名前を探し当てることができる。たとえそれが100年前の記憶であっても、宇宙の彼方であっても。もちろんもっと多くの金を出せばさらに詳しい情報にアクセスできるが、私にはそこまでの金はない。ネコームが今この瞬間、どこで何をしているかまで突き止めようと思うと、私の収入だと100年働くぐらいの金が要るらしい。なお、金といってもこの時代には、現物の紙幣や貨幣はほとんど存在しない。存在はするが誰もそれを欲しがらないので価値がない。衛生観念が発達しすぎたのだろうか。何千人、何万人の手に触れ、洗われることも消毒されることもない10円玉なんか触るのも嫌だ、というのが多くの人に共通する感覚で、それは例えるならば、飲食店のスプーンや皿を洗わずに使い回しているようなものらしい。

身近にいる宇蛍人に「ネコーム」を知っているか尋ねたところ、200人に聞いて1人だけ間接的に知っているという者がいた。我々が見ると皆、コオロギ風の虫なのだが、宇蛍人同士の視線で見ると「ネコっぽい」ということで、ネコームと呼ばれているらしい。

(つづく)

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