読書記録「シンプル・プラン」
川口市出身の自称読書家 川口竜也です!
今回読んだのは、スコット・スミス 近藤純夫 訳「シンプル・プラン」扶桑社 (2019) です!
・あらすじ
ハンク・ミッチェルの両親は、ハンクが結婚した翌年に自動車事故で亡くなった。定かではないが、借金を理由に心中したのではないかとも思われる。
1987年12月31日 大晦日 父の遺言通りに墓参りに行くハンクと兄のジェイコブ。共同墓地へ向かう途中、彼らは墜落した小型飛行機を発見してしまう。
辺り一面雪に埋もれた機体。生存者の有無を確認しようと機内に入ると、パイロットは片目を抉られ、既に亡くなっていた。
立ち去ろうとしたその時、彼らは機内から大量の札束の入った袋を見つけてしまう。その額なんと440万ドル(現在の為替レートで約6億3千万円)。
最初こそ警察に届けるべきだと主張するハンク。しかし、他に目撃者がいないことや、警察に飛行機が墜落した情報などが回っていないことから、そのまま盗んだとしても、今後バレることはないのでは、と思いはじめる。
お金を盗むことの罪悪感は、この大金を手に入れた後の生活や自由を思えば小さなこと。要は逮捕されないためにはどうすればいいかだけを考えるようになる。
そうなれば、夏になって飛行機が発見されたあと、何事もなければお金を分配する、少しでも危険が生じたら、お金を燃やすだけだと。
計画は非常にシンプル、なはずだった。そのために一人を殺害するまでは。
大分前に池袋は東京読書交換会にて、面白そうだからと頂いたが、あまりの文量に放置していたのを、年末ようやく紐解いた次第。
綺麗事を書こうと思ったけれども、もし自分が同じ状況に遭遇したら、警察に金を届けるという行動を取れるか、理性を保てるかわからない。
御存知の通り、何をするにも世の中金がいる。飯を食うだけでもお金は必要だし、旅行や余暇を楽しみたいならば、それ相応の金が必要である。
6億、いや1億もあれば、どれだけ贅沢してもお釣りが出るだろう(冒頭しか見てないけれども、バカリズム脚本の『侵入者たちの晩餐』にそんな一幕があった気がする)。
だからこそ、大抵の人はお金を欲しがるし、不労所得を得るために資産を形成する"うまい"話だとか、億を稼げるようになるといった自己啓発本に惑わされる。
その根源は、自分の願望にある。将来やりたいこと、欲しい物を全て手に入れるためには、どうしてもお金が必要になる。それに、子どもの養育費や親の介護費などものしかかる(これだって願望の一つだ)。
それらのことは、深く考えていないだけで、目をそらしている。
だが、大金を目の前にたら、ほとんどの人が、このお金を手に入れたあとの自由を思い浮かべるだろう。
自分の状況や行動を正当化して、徐々に金を手放すことができなくなってしまう。
何が恐ろしいって、大金を手に入れるために、人はどんな恐ろしいもできてしまうこと。
そして、私達はその根源を持ち合わせている可能性があるのだ。
だとしたら、彼らはいつから間違った道を進んでしまったのだろうか。
まぁでも、私が仮にお金を拾ったとしても、絶対に精神的に保たない気がする。実は誰かに見られたのではないか、いつの日か警官が自宅のドアを叩くのではないかと想像すると、それだけで夜も眠れなくなりそうだ。
善人というか、小心者、むしろ臆病(?)なもので。それではまた次回!
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