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読書記録「私の盲端」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、朝比奈秋さんの「私の盲端もうたん」朝日新聞出版 (2022) です!

朝比奈秋「私の盲端」朝日新聞出版

・あらすじ
大学4回生の涼子はバイト終わり、救急車で救急搬送され、病院のベッドで目が覚めた。

記憶にあるのは、年末の食べ納めでバ先が繁盛していたこと、有名なバスケ選手が来店していたこと、そしてバイト終わりに突然下半身から血が出たこと。

肛門近くに悪性腫瘍があったらしく、そこが崩れて出血がひどかったらしいが、運よく生きている(あと1センチ肛門に近かったら、肛門ごとくり抜く必要があったとも)。腹部に違和感はなく、手術痕も小さい。

だが看護師にガーゼを剥がされて戸惑う。そこには野いちごのような真っ赤な塊、人工肛門(ストーマ)がついていた。

パウチなしでは排泄もまともにできない日々、一時期はノイローゼになるなか、バリアフリートイレにて同じくオストメイトの男性から声を掛けられる…。

東京読書倶楽部の読書会にて、リピーター様から同じ本を2冊買ってしまったからと、(病気以外は何でも貰うと決めいているため)厚かましくもいただきこの度紐解いた次第。

盲端もうたん」とは医学用語で、内臓器官で一方の端が行き止まりになっている管において、その閉じた端のこと。ここでは、人工肛門であるストーマのことを指す。

ちなみに、国土交通省の「多機能トイレへの利用集中の実態把握と今後の方向性について」によると、2009年度末時点でオストメイトの方は約18万人いると報告している。

その数字は決して少ないとは言い難いが、問題はそこではない。もし自分がこういう状況になった時に、どう考えるようになるだろうか。

幸いこれまで、流行病に感染することはあっても、大きな事故や怪我をしたことはなく、心身ともに比較的健康体ではある。

涼子も大学4回生、まだまだ青春を謳歌できるお年頃。そんな矢先、パウチなしではまともにトイレもできない状態になったらなんて、なかなか想像するのも難しい。

そもそも、こういう機会がなければオストメイトなんて知るよしもなかった。名前は知っているけれども、それがどんなものなのか、考えたこともなかった。

でも、病気になったときになって、ようやく健康の有り難さがわかるように、この状態が永遠に続くのかと思うと、想像するだけで気も滅入る。

重みのない体は虚しかった。内蔵がなくなれば、生きている実感も失われるのだ。やはり、便は、たとえ腹の穴からでもいい、これからも出続けてほしい。

同著 122頁より抜粋

先日読み終えた市川沙央さんの「ハンチバック」しかり、普通であることが、いかに尊いかを考えさせられる(そう思うと、人間の構造って凄いわな)。

会社のバリアフリートイレのオストメイトのマークを見る度に、きっと職場にもこのトイレを必要としている人がいるのだなって。

だとしたら、自分が使うべきではないなと、改めて思った次第。それではまた次回!

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