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読書記録「夜明けのすべて」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、瀬尾まいこさんの「夜明けのすべて」水鈴社 (2020) です!

瀬尾まいこ「夜明けのすべて」水鈴社

・あらすじ
私(藤沢美紗)は山添君のことを、やる気のない人間だと思っていた。

仕事中はガムや飴を食べているし、会話するのも気怠そう。出社時間に遅刻するのもしょっちゅうだった。

だけど、掃除中に拾った「ソラナックス」が山添君のものだと知ったとき、自分は大変な勘違いをしていたことに気づく。

山添君は、パニック障害を患っているのだと。


藤沢さんは俺(山添考倰)のパニック障害を、PMS(月経前症候群)と同じようなものだねと言った。

そんなわけない。パニック障害を生理なんかと同じにされてたまるか。

かれこれパニック障害を患って2年が経つ。仕事も恋愛も順調だった矢先、突然パニック障害だと診断されたのだ。

だけど、本当にそうだろうか。藤沢さんが突然苛立ちをぶつけたのを見てふと思う。

藤沢さんが抱えているPMSは、俺が考えている以上に辛いものなのかもしれない。


池袋はサンシャイン通りのブックオフにて、150円クーポンをエンドレスで受け取っていた周期に買った1冊。

瀬尾まいこさんの作品は結構好きである。個々人が抱えている問題を、真剣だけど深刻にはならず描いている感じが好き。

「夜明けのすべて」に登場する藤沢さんは、症状が出ている間はとても大変だけど、それ以外は山添君にお節介を焼いてばかりいる。

それがまたちょっと天然と言いますか。人の髪を切ったことは一度もないのに、「美容院に行けない」だろうと、急に髪を切ると自宅にやってきたり。

もちろん、どうしたら山添君が仕事をしやすくなるか、考えることもある。

PMSを抱えてい藤沢さんが出した1つの答えは、山添くんがパニック障害であることを、会社の人にも知ってもらうこと。

パニック障害は、発作が起きたら迷惑がかかるという不安が助長させることもあると書いてあった。もし、周りの人が発作のことを理解していたら、山添君はずいぶん気持ちが軽くなるのではないだろうか。

同著 86頁より抜粋

だけど社長は、必ずしもそれが良いわけではないと言う。

自分の状況を理解してくれる人が多ければ、不安になることも少なくなるなり、物事も頼みやすくなるなるといった考え方もある。

でも、全員がそれを求めているとは限らない。現に、山添君は症状を隠しているわけで、それこそ余計なお節介になりかねない。


話は飛躍して、私の身の上話になる。

先日、実家に帰って母さんと昔話をしていたら、急に「でも竜也にはつらい思いをさせちゃったよね」と語った。

つらい時期で思い当たるのは、小学校の頃、保健室登校が続いたこと。

当時は何が嫌なのかもよく分からなかったけれども、おそらく学校特有の「みんな仲良く」という雰囲気が嫌だったんだと思う。

2つ上の兄貴がいるのだが、兄さんは全然人間関係で困ることはなかった。

実際に兄貴の結婚式には、小学校から中学、高校、大学、社会人の友人など、大勢の友達が駆けつけてくれた。

そんな兄の弟だから、きっと「同じように」って思っていたそうで。

正直、私は母さんも父さんも、自分が保健室登校だったことなんて、すっかり忘れていると思っていた。

だって、学校から帰ったら、いつも通り接してくれたから。

PTAの役員だった母さんは、私が保健室登校だってことを校長先生や担任の先生から、何度も報告を受けていたらしい。

父さんとも夜な夜な何度も話し合ったそうで。それで出した結論が、「竜也のペースで、待ってあげる」だったらしい。

誰かの不安を和らげるのは、強引に髪を切ったり、勝手に告白することなんかじゃない。靴に灰をしのばせる。そういうことが、苦しさを軽減させてくれるのかもしれない。

同著 92頁より抜粋

もっとも、私は生理の辛さも、パニック障害の大変さも知らない。

どれだけ本を読んでも、頭で理解しようとしても、その辛さは、本人にしか分からない。

そもそも当事者であっても、分からないことだらけであろう。

だけど、私の経験(と言っても、半年以上の保健室登校程度)からしても、どんな状況であろうと、寄り添ってくれる人はいるはず。

山添くんが藤沢さんと出会ったようにね。それではまた次回!

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川口 竜也 / 川口市出身の自称読書家
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