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読書記録「ムーミン谷の夏まつり」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、トーベ・ヤンソン 下村隆一 訳の「ムーミン谷の夏まつり」講談社 (1979) です!

トーベ・ヤンソン「ムーミン谷の夏まつり」講談社

・あらすじ
ジャスミンの香りが谷や森を包み込む6月。ムーミントロールやスノークのおじょうさんは、間もなく迎える夏至祭を楽しみにしていました。

しかし、突如として遠くの火山が噴火し、ムーミン谷はこれまでにない大洪水に見舞われたのです。

1階は水浸しになり、素潜りで食糧を取っていかねばならない始末(ムーミンママがしっかり食べ物を瓶に詰めていました)。

困っているのはムーミン一家だけではありません。森の小さな生き物たちは、住処を失ってしまったものもいました。

特に森の小さな生き物であるミーサは、この状況をとても嘆いていました。今まで不幸続きだった私に向けて、誰かが嫌がらせをしているのだと。

「そんなわけない」と冷静に対処するのは、同じく森の小さな生き物のホムサ。2人はムーミンママに誘われて、一緒に過ごすことを決めました。

しかし、ますます水位は高くなるばかり。困ったムーミンたちの前に流れてきたのは「劇場」と呼ばれる建物でした……。

夏っぽい作品を読もうシリーズ。先日読んだ「ムーミンパパ海へいく」が9月の物語だったため、今回こそはと紐解いた次第。

これまで読んだムーミンシリーズは3作。順番通りに読んでいないのもあるが、スナフキンやミムラねえさん、スノークのおじょうさんがちゃんとストーリーに登場して、ようやく主要メンバーが勢揃いで嬉しい。

展開的には、最近 Nintendo Switchで発売された「スナフキン:ムーミン谷のメロディ」に近いものを感じる。

スナフキンが公園番のヘムルと対立して、立て看板を根こそぎ抜き取る場面とか、24人の小さな子どもたちをフィリヨンカの家へ連れて行くシーンとか。

実況動画で見たやつだ!と大はしゃぎ。

それはさておき。解説で述べられることだが、この作品の軸となるのは「劇場」であり「芝居」である。

芝居と現実と区別できなくなって、劇的効果ということばそのままになっているのこそ、ヤンソンさんのねらいだったでしょう。

同著 205頁 解説(下村隆一)より抜粋

特筆すべきは、「悲劇のヒロイン」のように登場するミーサである。

太っちょであることや、足が大きいことを、周りから笑いものにされる彼女。

髪の毛についてスノークのおじょうさんから指摘された時は、喧嘩もしてしまいました。

だけど、劇場や芝居とは何かを知ったミーサは、こう語りました。

じっさいとは、まるでべつの人間になれるなんて、なんてすばらしいんでしょ。そしたら、「あそこをミーサがいくよ」なんて、もうだれもいわないで、みんな、いうわよ。……たいしたプリマドンナね……

同著 134頁より部分抜粋

物語の後半、ムーミンママやミムラねえさんたちで芝居をしようと決めたとき、誰よりも真剣に芝居に取り組んだのもミーサでした。

舞台に立てば、そこにいるのはミーサではなく、登場人物でありミーサとは別の人物。

もちろん、現実はそんな単純に割り切れるものではないにしても、芝居を通じてミーサは「悲劇のヒロイン」から「プリマドンナ」に変わっていく。

芝居的でもあるけれども、そうやって彼女は「自分の好きなこと」を見つけたのだ。

じぶんの友だちが、それぞれその人にぴったりのことができるようになるのは、うれしいものでしょ?

同著 194頁より抜粋

いつだって、ムーミンママは良いことを言って締めくくるのです。そういう心持ちでありたいものである。

なお、夏まつりと言っても、トーベ・ヤンソンの生まれ故郷 フィンランドにおける夏のお祭りと言えば、6月の「夏至祭」を指す。

それゆえに「夏っぽい作品」ではあるけれども、想定していた夏まつりとはちょっとズレていました。

まぁそれは文化圏の違いですよね。それではまた次回!

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