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読書記録「蠅の王」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、ウィリアム・ゴールディング 黒原敏行さん訳「蠅の王」早川書房 (2017) です!

ウィリアム・ゴールディング「蠅の王」早川書房

・あらすじ
戦争から疎開するために少年たちを乗せた飛行機は、敵機の襲撃により南大西洋のとある無人島に不時着した。大人の生存者はおらず、そこは数十人の少年たちだけの島となった。

いつの日か救助されるためにも、少年たちはこの場を仕切るリーダーが必要だと考える。リーダーに選ばれたラルフは、年長者として、英国紳士として、島での生活や救助されるための狼煙の管理などのルールを定めた。

最初こそ島から脱出するためにルールを守った少年たちだったが、徐々に思い思いに行動するようになる。やるべきことを守らず、すぐに遊んでしまうちびっこたちに、ラルフの苛立ちは募るばかりだった。

ある日、狩猟隊の隊長であるジャックは、食料となる豚を狩るために狼煙の火を消してしまう。その間に船は通り過ぎ、無常にも救助されるチャンスを逃してしまう。

聖歌隊長だったジャックは、ラルフがリーダーであることに不満を持っていた。この事件をきっかけに、ラルフとジャックの間にできた軋轢は徐々に大きくなっていく。

その後も島に突如として現れた「獣」の恐怖や、リーダーを巡る派閥争いが転じて、ついにお互いに牙を向くようになる…。少年たちの無邪気さと邪悪さを生々しく描いた作品。

訳者のあとがでも述べられているが、この手の無人島漂流記だと、ジュール・ヴェルヌの「十五少年漂流記」を真っ先に思い浮かべる。

なんであれ困難に直面した時に、勤勉、勇気、思慮、熱心の四つがあれば、少年たちでも、必ずそれに打ち勝つことができるということだ。

新潮社「十五少年漂流記」より抜粋

だがしかし、実際にこのような状況に陥った場合、本当に勤勉にいられるだろうか。夜という真っ暗な闇の中で、不安や悪夢のない夜を過ごせるだろうか。相手のことを考えられるだろうか。

だからこそ、生きるために必死に「考える」必要があるのだが、極限状態では正常な判断をすること自体が難しい。正直大人でも理性を保っていられるかは疑問である。

前に観たアニメ「グリザイアの果実」ではないが、生きるか死ぬかの状況では、気が狂ってしまうのが現実だと思う。山で遭難するシーンが印象的すぎて、今でも覚えている。

そして少年たちはあることに思い知る。恐怖は外からやってくるのではなく、内側にあると、人間そのものが悪なのだと。

「もしかしたら―― ぼくたちは人間を怖がっているのかもしれない」

同著 144頁より抜粋

ある本では、人間と動物の差は理性の有無と述べている。ものを考えられるからこそ、人間は人間たらしめると。考えるのをやめてしまったら、人間ではなく動物になってしまうと。

そして、誰もが野蛮人どうぶつになってしまうという悪を持ち合わせていることを、忘れてはならない。それではまた次回!

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